#2018年ボカロ10選  obscure.編 #vocanote

始めに

 新年あけましておめでとうございます。obscure.です。(大遅刻)
過ぎし2018年、特に後半は僕は精神的に参ってしまうようなことが立て続けに起こり個人的にとても辛い一年でした。その結果僕のTwitterアカウントは好きな曲のリンクと支離滅裂な妄想を呟き続けるbotみたいになってましたがなんとか生きています。褒めてください。

さて、その年に投稿されたボーカロイド楽曲の中で自分に刺さった曲を選ぶという、ボカロ系コミュニティのある種の伝統である「年間ボカロ10選」。既に多くの方が上げていらっしゃるのですが、皆さんご覧になりましたか?

一月ももう終わりですが、10選を投げることをを見送るにはまだ慌てる時間ではないということで僕も早速やってこうと思います。
しんどい気持ちと人間とボーカロイドについて悩んでた僕の10選です!
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓


1 太陽は少し眩しすぎるから / YURAGANO

僕にとって2018年は大体この曲が脳裏にチラついていたといっても過言ではない、聴いた時には10選入れるって決めたくらいには衝撃的な曲です。長い文章も書いて心象を整理しようと試みましたが結局今もよくわかっていません。

もうどうしたって変えられないんだ
違うのかい? それでも構わない
散々苦渋を飲んで来たのさ 今更って笑うよ
ボクらが守ってきた物に 触れないで歩いてってくれよ
ただ それでいいさ 陽の光なんて浴びるのは御免だ

 歌の中で三回に渡り出てくるこのフレーズ、所謂マジョリティ側の人間達への拒絶と羨望、自分達マイノリティが抱える寂寥と諦観という曲を通じて語りかけるメッセージを綺麗に要約しており、言ってしまえばネガティブな感情を束にしてぶん殴ってきたようなパワーがですが、僕には不思議なことに聴いた後にはある種の清々しさが残りました。
 YURAGANOさんの曲に通じるテーマでもあろう人間という存在への疑念や自分の思い描く「幸せ」への渇望といった重たテーマについて正面から向き合って吐き出したような歌詞はネガティブな方向に前向きにさせるとでも言える魅力があるんだと思います。正直よくわかんないのでこれからも考えていきたい...


2 ハッピーな人生を送りたい/通信衛星

 では幸せって果たしてどんなものなんだろうと考えるところで二曲目、まずサウンドがどちゃ好み。動画もかわいい。好き。

嫌いな食べ物食べれたら?
仲良しあの子とどうするの?
痛い傷全部なおったら?
願い事全部かなったら?
いっぱいいっぱいじゃなくて
嫌いな私を愛せたら
嫌いな私を愛せたら、
それだけでいいと思うんだ。

軽快なリズムと音に乗せ日々の閉塞感と自分でも不明瞭な自己肯定を脳天にぶっ刺してくるような初音ミクの鋭利な声は必聴です。

3 モウマンタイと叫んだら / SEVENTHLINKS

「分からないから 許してよ」と
嘯く言葉に
醜く こぼれる
青 青 青

「気づいてるよ 分かってた」と 
宙に舞うそれは
無情に 横顔を過ぎ去る 思い出と

 青という色はMagic: The Gatheringというカードゲームにおけるカラーパイといわれる色が持つ哲学と役割の中で大まかに言うと完璧さや知的な思考といったモノを司る色とされています。参考→カラーパイ mtgwiki
 この曲は自分の追い求めるモノを本に準えて、盲目的かつ貪欲に追い求めていくにも関わらず、満たされずに彷徨い続けていくような危うさを感じさせるような言葉遊びが大変魅力的です。
 広義の青色タイプの人間は曲にしろアニメにしろ思想思考などでも妥協できずに永遠に「無問題」と叫びながら彷徨い続ける性なのではと怖くもなりますが…
 あとロック編成の中でのピアノが好きすぎる。カッコよすぎる…

4 僕には生きるセンスが無い。/ 青谷

好き勝手言いやがって 
ああ センスがない! ああ センスがない!
無駄なんて言わなくて 
ああ いいじゃないか! もう いいじゃないか!

 「センス」という言葉は人間が評価される際には何かと使われる単語ですが,これって軽々しく用いていい単語でしょうか?
 sense」という単語をググってみると、抽象的な意味合いが沢山出てきますがその中に「常識」といった意味合いが含まれている点に注目して欲しいです。
 世の中には自分と同じような考えや感覚を持ち合わせている人間が一定数は存在してはいるのですが、残念なことに(?)大体の場合それ以外の人間の頭数の方が多いわけです。思想や趣味といったカテゴリでは違う価値感軸の対立は顕在化してますが、これが「生きること」まで視野を広げると案外多くの人間はそこまで疑問を抱いていないように感じます。
 「人間が社会生活をおくる」「他人のために行動する、迷惑を掛けない」等の不文律が刻まれたこの世界で、そんな「センス」を持ち合わせる余裕が無いような人に贈る応援歌として何度でも聴いていたい曲です。
 あとサビの生声とのハモリとチップチューン風の音作りも最高。


5 Abnormal Drive / tekalu

動いていたロボ達も止まって見えてしまうんだ
そうAbnormal Drive、私を連れてって

いつも見える風景は同じ色で
グレーの空には不安だけが残っていく

関係がない事には興味ないってフリして
実は何も知らない方が好きなんだ

 この曲に関しては音の構成、メロディライン、歌詞と本当に自分にぶっ刺さった曲です。前四曲からわかる通り昨年の自分は(今も)大体考え詰めで鬱然とした気分で日々過ごしたりしてるのですが、そんなときこそキラキラとした音や響く低音に包まれて何も考えない時間ほど尊いものはないというわけです。
 

6 illusion /  雄之助 × tekalu

 この曲も前曲同様特に音の響きが好きすぎるんですが、こうなったのは偏に音楽ゲームの影響があります。元々ボカロ曲が入ってるという理由で始めた音楽ゲームですがだんだんと音に溺れて感情になって優勝するという悦びを知ってしまったせいでボカロ曲と並行して音ゲー曲漁りもするようになってましまいました。小難しい話は抜きにしてひたすらにカッコよさ、可愛さ、ネタ性に特化した曲は趣深くて非常に楽しいです。 
 ボカロPさんの中には音ゲー曲作者として名を馳せる人も多くいますが、雄之助さんもSOUND VOLTEXという音ゲーの公募で賞を取るなどインストでも見せる人ですが、そのベクトルカッコよさがそのまま形になったようなこの曲が刺さらないわけがありません。大好きです。

(余談ですが先日新バージョンが始まったということでこれを機に硬派な音ゲーとして有名であるbeatmania IIDXにもとうとう手を出してしまいました。ドラムンベース系統の曲を求めて安直に手を出した結果何もかもが最高過ぎて完全に沼に溺れた感がある...)

7 juicie suicide /御魚@人生P 

傷を抉る言葉だけが傷を癒すんだ
優しい言葉じゃないの
それじゃないの
孤独の箱に閉じ込めた影
歪んだ像を結んで

 そんなドラムンベース好き好きの流れでこの曲。
「弱さに可愛い名前を付けて」という#ボカロ動画投稿ポエムの通り、全体的に可愛くポップに纏まった最高のドラムンで魅せる一方で、ともすれば鋭利でセンシティブな歌詞のギャップに不安を駆り立たてれられないわけがない…  自身の欲望を渇望する一方で本心から目を逸らし続けることで擦り減っていく感情の変化こそが「アシッドな自殺」なのかもしれません。
 あとGUMI Englishを用いたラップパートの滑らかさは聴き心地はとても穏やかな気持ちになります。


8 drop / saniyuri

 最近ではボカロでラップ的な曲は珍しくもなくなり、さらにボイスロイドやCeVIO等を用いたポエトリーリーディング的な「語り」を音楽に落とし込む名曲も多く観られるようになってきました。
 この曲は去年の10月ごろにそんな語りが強い曲を探している時にたまたまTwitterのタイムラインで発見したのですが、この曲を押さえていなかった六月の自分を思わずぶん殴りたくなりました。良い曲... 
 途中のラップパートの韻の踏み方が神がかっていて、またdropというタイトルにも拘わらず気分が高揚していく、決して底なしに前向きではなくともハッピーな歌詞をのせるメロディーは無限に聴き続けたくなります。


9 十七才 / 一二三   
   セブンティーナ / はるまきごはん

きっとこんな風に大人だって世の中に
首を傾げたまま大きくなったんだろう
だから 傾いた視界に映る私達のことを
“間違い”だなんて叱るんだ
セブンティーンじゃ無いなら
もしも無くしちゃったようなら 
何度だって言うよ
この世界の愛し方を
セブンティーンはエンドレス
史上最弱で最強の
私のこと思い出せば
もう怖いもんなんて無いな
セブンティーナ

古今東西「17歳」をテーマにした曲は昔から何故か沢山存在します。ひとえにそれは17歳という年齢の持つ未来への明るい希望と絶望、ものすごいスピードで過ぎ去っていく人間関係や感情の変化が持つ刹那性、何もかもが中途半端な状態が故に起こる退廃的な思考と楽観的な思考等々、過ぎ去り人々には唯一無二の魅力があるのだと思います。
 17歳の気持ちを抱いたまま大人になれる人間は少なく、周りの環境も自分自身さえも否応なしに変わっていくものですが、それでも17歳の時の気持ちを覚えておいてあげることができるのなら、きっとそれは幸せなことではないかとおもいます。


10 炉心融解 MSS Remix / MSS Sound System

 最後の曲は炉心融解。この曲は僕がボーカロイドという存在に入れ込むきっかけになった思い出深い曲でもあり、昨年10周年を迎えました。
 僕が実際に聴いたのは再投稿版が出るちょっと前あたりなので僕の中で10周年は今年迎えることになります。あらためてその10年を、また自分という人間を振り返ってみると、同年代の人間以上にボーカロイドという文化に入れ込んでそこから多くの感情を得たり失ったりしてきました。
 今やボーカロイドの文化から生まれた文脈はVtuber、音楽シーン、等数えきれないほどの文化に影響を与えて、もはや「初音ミク」を抱く大きな幻想は過去のモノになり、一つの小さな物語へとなり果てたようにも思えます。

僕のいない朝は 
今よりずっと 素晴らしくて
全ての歯車が噛み合った
きっと そんな世界だ

 自分の知らないボーカロイド的な文脈を抱く文化が存在するこの10年後の未来で僕たちはきっと新しい作品や文化と出会い、別れを繰り返していくでしょう。 そこで不意に出会うであろう10年間を駆け抜けた自分達の亡霊と再会したときに、「やあ!今はこんな感じだよ!」と笑い合うことができるようにありたいと思います。

最後に

そんな感じで悩みながら過ごした2018年ボカロ10選でした。(11曲とか言わない)そんなこんなで考えてた結果、他でもない僕自身がわりと人間らしくない感じで過ごしていたので今年はちょっとは人間っぽく、それでいて緩めにボーカロイドその他と付き合って行きたいなーと思います。

そんなかんじでobscure.でした。では

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?