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Fab!のプロモーションに感動した話

 Hey! Say! JUMPのニューアルバム「Fab! -music speaks.-」が発売された。数々の著名なアーティストから楽曲提供を受け、それを「音楽×童話」というテーマでまとめ上げた作品だ。このアルバムのファン層を広げるためのプロモーションが素晴らしい。学術的な用語を使った賢い分析はほかのオタクの方数人が既にやられているので(心からの敬意を表します……。すごい……。まだ読んでない方がいらっしゃれば私のより先にそれらを調べていくつか読んでみてください)私は私なりの経験や思ったことを元に良い点について語ってみようと思う。また、私は伊野尾担なのでその視点からのバイアスが含まれうることには留意されたい。

 まずはメンバーの伊野尾慧さんがラジオで熱を入れて話していた、「全部が表題曲という気持ちで作っている」という点だ。「俺象徴するっていうのあんま好きじゃないんだよね!」と冗談めかして話し始めたものの、決められた枠組みに囚われずに聴いた人のマイベストを決めてほしいというような熱い話だった。そんな話をするのを今まで聞いたことがなかったため当時は驚いたが、実際の楽曲を聴くとその通りだったと感じた。

 より多くの人に手に取ってもらいたいとなったとき、思い至りがちなのは大衆受けする曲を増やすという手法だろう。 正直、今までだったらこのようになっていた気がする。今までというかメンバーが主体的に意見を出さなかったら、だろうか……。 良くも悪くも保守的な事務所なのは間違いないので。しかし、今回のアルバムはひと味違う。あらゆる音楽ジャンルのプロを迎え、それぞれの方向に全振りして「全部を表題曲」にしたのだ。

 しばし隙自語失、私はあまり事務所担ではなくてJUMP以外のグループについては素人だし(申し訳ない……)、逆にラップ界隈のオタクを兼任している。そのため、全く別の友達3人くらいから田中樹さんをおすすめされたことがある。その度にそのような他界隈にアピールできる武器があるって強いな、と感じていた。実際に少し興味持ったし……。Kis-My-Ft2の宮田俊哉さんやSnow Manの佐久間大介さんがアニオタ層にアプローチしていることもそうだが、JUMPはあまりそういうことを表立ってやらないため紹介しづらい部分はあった。
 そこでこのアルバムが出ることと数曲がYouTubeに上がることで、色々な人に合わせて紹介しやすくなった。顔が良くてもダンスが揃ってないとな……と思っているK-POP好きの友人には狼青年、ボカロサウンド好きでリリックビデオに馴染みがある友人にはPuppet、しっとりしたバラードが好みの友人にはナイモノネダリというように確実に狙って落とすことができる。

 もちろん提供元のアーティストのファンの方がCD買ってくれることもあるかもしれない。今回は女王蜂のアヴちゃんさん、wacciの橋口洋平さん、YOASOBIのAyaseさん、岡崎体育さん、清水翔太さん、まふまふさんというような錚々たるメンバーから楽曲提供を受けているからだ。というか、オタクリサーチによると結構買ってくれている人を見つけた。私もあんまりお金を出すほどではないものの気になるコンテンツに好きなアーティストが楽曲提供していたときは一瞬で予約しに行ったのでわかる。もちろんサブスクを解禁するのが一番ではあるが、難しい面もあるだろう。そのため、ゆっくり動画から出してくれたのが嬉しい。YouTubeでの名前と顔を隠すというプロモーションも良かった。ジャニーズだからと言って偏見の目で見る人々は未だに多い。そのような層も開拓の視野に入れることができていた。

 ただ、ここでsmash.が登場する。山田涼介さんの瞳のドアップから始まるあのCMのアプリだ。SHOWROOMの前田裕二社長が手がける縦型シアターアプリであるこれのメインプロジェクトとして、Hey! Say! JUMPが選ばれた。CMの放映数やTwitter広告の量からしてかなりの資金が割かれていると思われるこの事業だが最初はみんなよくわかっておらず、「毎週JUMPの動画が観れるんだ!? 最高じゃん!!」くらいの気持ちでいた。だが、しばらく経ってどうやらそれだけではないことがわかってきた。

 つまり、当たり前ではあるがこのアプリで提供されていたコンテンツは決してJUMPだけではなかったのだ。坂道シリーズやCY8ERなどの女性アイドルからきゃりーぱみゅぱみゅさんや平井大さんなどのアーティストまで様々な音楽コンテンツがあったり、DAY to DAY(作家×声優の朗読プロジェクト)やLIP×LIPなど二次元分野のファン向けのコンテンツが提供されていたりする。全てのジャンルを通ったキモオタクの私は片っ端から見尽くしたが、そのうちに気づいたことがある。
 これ、それぞれのコンテンツ目当てでsmash.をインストールした各ジャンルのオタクたちもHey! Say! JUMPを観てくれる可能性があるのでは? それって実質サブスクなのでは?
 もちろんこの先smash.がどうなるかはわからないが、ゆくゆくは動画バージョンのサブスク的な存在になるような気がしている。このプロジェクトの目玉にJUMPが選ばれたことを誇りに思いながら今後も楽しみに応援していきたい。

 そんな個性豊かな楽曲たちをまとめあげるのが「音楽×童話」というテーマだ。伊野尾さんから提案されたこのテーマだが、上手く全体に一貫性を持たせていると感じる。童話とは元々ひとりの作者が書いたものではなく、時代も場所も異なる人々が書いた作品を指す概念だ。また、これまた様々な時代・場所で再解釈され続けた。

 つまり、半アンソロジー形式のこのアルバムでも、個性を保ったまま違和感なくレギュレーションを行えるのだ。もちろん、誰もが知っている童話の再解釈という意味でのキャッチーさもある。

 また、通常盤の特典としてトーク&ライブの配信イベントが開催された。JUMPのわちゃわちゃ感から歌のパフォーマンスまで沢山の魅力が凝縮されたイベントだった。このようなイベントが特典としてつくことで、実際にアルバムを手に取ってくれた新しい層も「せっかくなら観ておこう」という気持ちになるだろう。足を踏み入れた人たちを沼に沈める算段は周到に立ててあるのだ。

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 ジャニーズ全体を見ると、後輩がどんどん追い上げてきて、むかしJUMP担だった周りの友人はみんな担降りしていった。心苦しいことだが、事務所もあまりJUMPのプロモーションに力を入れなくなった。正直すごく不安だった。しかし、今回のアルバムに込められた並々ならぬ熱量を感じて、私の推しはHey!Say!JUMPだよと自信持って布教できる気がした。もちろん今までも自信は持てていたのだが、それを発信する勇気を出してくれたのがこのアルバムだった。
 アイデアを出したJUMPメンバーと実現してくれた事務所、楽曲提供してくれたアーティスト様方など、多くの人間が私たちの知らない自粛期間に準備を重ねてできたアルバムだと思うと各方面への感謝が止まらない。八乙女光さんの言葉を借りれば「宝石箱みたいな」アルバムだ。この記事を読んでいる方でもしまだ「Fab! -music speaks.-」を手に取っていない方がいたらぜひ聴いてみてほしい。ジャニオタの方にもそうでない方にも胸を張っておすすめできるアルバムだ。

 まだまだ語りたいことはあるが、長くなるのでここまでにしておこう。最後まで読んでいただいてありがとうございました。

 最後にアルバムの特設サイトを載せておく。このサイトもとても凝っており、全曲の試聴ができるほか先に挙げたミュージックビデオも観ることができる。



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