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国プロ一問一答 02_補助事業に要する経費と補助対象経費の違い、そして補助率の考え方

はじめに:5月は補助金公募の時期

5月に入ると様々な省庁が行う補助事業の公募が始まります。とくに今年はコロナウイルス対策予算の成立もあり、前年度以上に多くの補助金が交付されます。
これらの補助金に応募しようと考えている事業者の方も多くいらっしゃると思いますが、補助金の経理処理(会計処理と言わず、あえて経理処理といいます)は、通常の商取引や商慣習とは大きく異なる部分があるため、通常の業務処理とは異なる経費管理や経理処理が必要となることに十分注意しなければなりません。

そのなかでも、とくに間違いやすいのが、「補助事業に要する経費」、「補助対象経費」そして「補助率」です。これらの用語は、補助金を受けたことのある事業者でも十分に理解できていないケースが多くあるので、本稿であらためて整理してみたいと思います。

1.そもそも「補助金」とはなにか?

まずは、そもそもの補助金とはなにかというところから確認しましょう。
補助金とは①補助金②負担金(国際条約に基づく分担金を除く。)③利子補給金④その他相当の反対給付を受けない給付金であって補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令第2条で定めるものとです。
一番重要な点は、「相当の反対給付を受けない」という点です。すなわち、請負契約・準委任契約、出資及び融資のように、業務の提供を行った対価としてなんらかの報酬を受け取るとか、資金提供を受ける代わりに持分権を渡すとか利子を支払うといった、お金と引き換えに財やサービスを渡す必要がないものということです。事業者が主体的に行うある活動に対して公的機関がその一部の経費を補助、すなわちサポートしてあげる、サポートゆえに対価も必要ないし、返す必要もないそれが「補助金」です。

2.「補助事業に要する経費」、「補助対象経費」そして「補助率」の意味

実は、上述した「補助金」の性格から、「補助事業に要する経費」「補助対象経費」そして「補助率」という言葉の意味や明確に区分する理由が見えてきます。

補助金は事業者が主体的に行うある活動に対するサポート費用だと書きました。それの裏返しとして、公的機関(ここでは政府としましょう)は誰が何の目的で行う活動に対する支援金なのかを明確にしないといけません。これは補助金の原資が税金であることからも明らかです。
まずは、その目的や対象事業をまとめたものとして交付要綱があります。補助金を受けようと思った方は、まずこの交付要綱を確認し、対象となる活動を理解し、補助の終期や補助対象経費等を確認しなければなりません。

交付要綱に記載されている事項の具体例
(ア)目的・趣旨
(イ)補助対象となる事業内容
(ウ)対象となる経費
(エ)補助率、補助金額
(オ)終期

具体例(ウ)に「対象となる経費」というものがありますね。これが一つ目の「補助事業に要する経費」と「補助対象経費」を正確に区別して理解すべきポイントになります。

2-1.補助事業に要する経費と補助対象経費の範囲の違い

「補助事業に要する経費」という言葉を理解するためには、補助対象経費と補助対象外経費から理解するとわかりやすいでしょう。
補助対象経費とは一般に、補助事業者において最も効率的かつ経済的な方法で行う場合の事業費であり、事業の実施に密接に関係があり、かつ真に必要な経費で必要最低限のもの、とされます。
この定義から当然補助対象外経費というものが存在することがわかります。具体的には以下のような経費は対象外ということになります。

補助対象外経費の具体例:
①交際費、慶弔費、飲食費等については、補助対象事業の推進に直接結びつくとは考えられないことから補助対象外経費とされます。
②補助事業の遂行中に発生した事故・災害の処理のための経費については、本来の事業が適切に遂行されなかったことにより追加的に必要となる経費であることから通常、補助対象外経費とされます。
③借入金などの支払利息等についても、事業遂行のために必要不可欠なものとはいえず、かつ公費により負担すべき費用とは言えないことから補助対象外経費とされます。

上記の補助対象外経費はその性質や内容を見ると公費により賄われるべき費用でないことは明らかです。とはいえ、例えば支払利息などのように、自己で負担する限りにおいて、事業遂行にあたり不可避的に発生する必要経費というものが存在することがわかります。
したがって、以下の式が成り立ちます。

「補助事業に要する経費」
=「補助対象経費」+「補助対象外経費」-「事業遂行に不必要もしくは社会通念上不適切な経費」

この関係性を理解しておくと補助金の申請書類の作成時に役に立つでしょう。重要なのは、「補助対象経費」≠「補助事業に要する経費」ということです。事業活動に関連するすべての経費が補助金により賄われるわけではない、むしろ事業活動費よりも補助金の対象となる経費の範囲はより狭いのだと考えておくべきです。

2-2.補助対象経費と補助率の関係

つぎに、補助金において頻出する「補助率」という理解していきましょう。補助金には交付額または率によって以下の通り分類されます。

定額補助: 一定額を交付する補助金
定率補助: 補助すべき事業の所要額に一定の率を乗じて算出する補助金
そ の 他 :会員数での人数割りなど定額、定率のどちらにも当てはまらない補助金

本稿において注目するのは定率補助です。ここでいう一定の率というのがいわゆる「補助率」であり、その意味するところは、補助対象経費に対し補助金が交付される比率(割合)のことです。
この補助率は政府や行政が担うべき役割の度合いにより設定され、事業内容によっては合理的な理由をもってその率が柔軟に設定されることになります。その値は全額補助といわれるものから、3分の2、2分の1、それ以下等様々です。なかでも、資産形成につながる補助金(1回あたり10万円以上の備品購入を認めるものなど)については、補助率は3分の1以下ということもあります。
補助事業への応募にあたっては、補助率がいくらかについても十分把握する必要があります。ここでもまた重要なのは、補助率は補助対象経費に乗じるものであって、「補助事業に要する経費」に乗じるものではない、ということです。想定していた金額よりも実際に交付された金額が少なかったというのは、多くはこの計算を間違ったことによるものだと思います。

3.まとめ

以上をまとめると、補助金に応募する際に注意すべき事項は以下になります。

①交付要綱に示される対象事業の内容・範囲をしっかり把握する。
②当該事業において対象となる経費とはなにかを確認する。
③事業遂行にあたり必要不可欠な経費であるが補助対象とならないものがどれだけあるか、もし事業に要する経費の大半が補助対象経費としてカバーされないのであれば自主財源でどれだけ資金を確保できるか資金繰りを確認する
④補助率はいくらか、特に事業に要する経費と補助対象経費との間に乖離がある場合には、補助金交付前~事業実施中~事業終了後における各種のコストと比較衡量して、応募すべきではないという意思決定もありうる

補助金は本稿の冒頭でも示したとおり、特殊な業務管理・経理処理が求められ、それは事業終了後においても継続します。したがって補助金だからといって安易に申込をするのではなく、その事業から得られるコストとベネフィット及びその後の自主財源による事業継続可能性について十分検討することが肝要です。
具体的にどのような業務管理や経理処理が求められ、それが以下に複雑であるかについては、また別の記事の中でご紹介します。

本日はここまでにしたいと思います。
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