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テキストベースレッスン|外国語の教え方


外国語を教えるのに使えるフレームワークを紹介します。
教える言語が日本語でも英語でも、同じ使い方ができます。

テキストベースレッスン
(text-based presentation lesson)

テキストベースレッスンは、まとまった文章・動画・音声からターゲットとなる言語(文法・語彙・機能など)を教えるフレームワークです。


想定

以下のようなレッスンを想定します

  • マンツーマンのオンラインレッスン

  • 「~ながら」「~がち」を教えたい(ターゲット言語)

  • 学習者は格闘技ファンで格闘技競技者

テキスト

今回は文章を使います。

けいこさんは、キックボクシングが大好きで、毎日トレーニングをしています。いつも音楽を聴きながらシャドーボクシングをしています。しかし、最近は疲れていて、練習を休みがちです。先週の試合では、相手を見ながら攻撃を考えるのに集中していましたが、体力が足りず、最後のラウンドで負けてしまいました。これからは、練習を続けることが大切だと彼女は考えています。

1. 導入 lead-in

今回のレッスンの話題について、興味を持たせたり背景知識を活性化させたりします。

  • 学習者に最近のトレーニングや試合の経験について話してもらいます。

  • 質問例: 「最近のトレーニングでは、どんなことをしながら練習しましたか?」、「試合の前に何かをしすぎたことはありますか?」

2. 紹介 Orientation

学習者がテキストをより早く理解できるよう、テキストの内容について情報を与えます。

「今日のテキストは、けいこさんのキックボクシングのトレーニングや試合についてです」

3. 全体を把握 
General understanding of the text/the Gist

ここで初めて今回のテキストを提示します。学習者はテキスト全体の意味を把握します。1分間などの短い時間で全体に目を通させ、内容について(the general message (the gist) of the text) の簡単な質問をして理解の確認をします。

  • 「このテキストを読んでください。時間は1分間です。」

  • 質問例:「けいこさんはどんなトレーニングをしていますか」「どうして試合に負けましたか」

4. 明確化  Language clarification

今回のレッスンのターゲット言語をテキストから紹介します。ターゲット言語の紹介は以下の3点(MFP)にフォーカスします。

  • 意味 Meaning

  • かたち Form

  • 発音 Pronunciation

  • 「~ながら」「~がち」をテキストの中から見つけさせる

    • 例: 「音楽を聴きながらシャドーボクシングをする」、「最近は疲れていて、練習を休みがちです」

  • それぞれの文法構造と意味(MFP)を説明します。

    • 「~ながら」は同時に2つのことをすることを示し、「~がち」はある行動や状態が頻繁に起こることを表す。

    • 「V1ます+ながらV2」「N+がち」「Vます+がち」

☆ 一方的に説明するより、学習者から引き出しながら説明すると効果的!
引き出し例:「音楽を聴きながらシャドーボクシングをする」
      音楽を聴くだけですか?
      シャドーボクシングをするだけですか?

5. 練習(制御) Controlled practice

練習問題をさせて、ターゲット言語の知識を強化させます。練習問題は空欄補充・選択問題・文の変換といった制御された練習(controlled practice)をします。練習問題は学習者自身で考えさせるため、一人で取り組ませます。

  • 空欄補充:「音楽をきき( )シャドーボクシングをします」

  • 選択問題:「最近は疲れていて、練習を<1.休みません 2.休みがちです>」

  • 文の変換:「友だちと話します+トレーニングをします」

6. 練習(自由) Freer practice

学習者が自由に文を作って、ターゲット言語の知識をさらに強化させます。学習者が話している間、学習者の間違いや上手に話せたところをメモしてください。話の後で学習者にフィードバックします。

  • 「~ながら」「~がち」を使った文を提示し、学習者はそれについて意見を言ったり議論したりします。

    • 「音楽を聴きながらトレーニングすることのいい点と悪い点は何ですか」「試合では相手のどこを見ながら攻撃するといいですか」

    • 「練習を休みがちな仲間がいたら何か声をかけますか」

語彙を教える場合

語彙の場合も上記と同様、<導入(Lead-in)→ 紹介( Orientation )→読んで全体把握(Reading for gist)>という流れです。
上記で使った文章をもとに、語彙のレッスンを想定しましょう。

明確化 clarification

教えたい語彙をテキストの中から見つけさせ、その意味を選ばせる。

ターゲット:「練習」「体力」

けいこさんは、キックボクシングが大好きで、毎日トレーニングをしています。いつも音楽を聴きながらシャドーボクシングをしています。しかし、最近は疲れていて、練習を休みがちです。先週の試合では、相手を見ながら攻撃を考えるのに集中していましたが、体力が足りず、最後のラウンドで負けてしまいました。これからは、練習を続けることが大切だと彼女は考えています。

質問例:
  上手になるためにくりかえしすること=(   )
  仕事や運動をしたり、病気にたえたりするときの体の強さ=(   )

練習(制御) Controlled practice

  • 空間補充:「(  )をつけるために毎日10km走ります」

  • 選択問題:「ハイキックの(1.練習 2.体力)をする」

練習(自由) Freer practice

ロールプレイ:「あなたはけいこさんのキックボクシングのコーチです。練習・体力という言葉を使って、彼女に試合に勝つためのアドバイスをしてください」

最後に

テキストは使い回せるものがあれば準備の手間の観点からいえばそれが理想ですが、学習者の興味や現在の話題になっていることに合わせて作っていくとニーズにあったものができて学習動機付けや満足度アップにつながりそうです。文章を使うなら生成AIでまず作って、自分で修正を加えていくのが楽ですね。


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