ビビを見た!をおもいだした

幼い頃におかしな読んだ本
鮮明に強烈に映像だけが脳裏焼きつく

わたしの中で1番強く残っているのが大海赫さんのビビを見た!です。

ビビを見た!は、生まれつき目が見えないホタルが7時間だけ目が見えるようになり1番美しいものを見る物語です。

何度も何度も小さい頃読みました。楽しかったわけでも感動したわけでもないのに、何度も何度も読みました。記憶の中のこの本は、怖くてなんだが残酷でコントラストがすごくはっきりしていて、でもとても美しかった。
その頭の中で思い描いた景色が、大海赫さんの描く子供向けとは思えない挿絵が、今でもこびりついていて。今、読みたい!と衝動的に思いました。

そしてまた幼い頃とはちがう私が、固い表紙をめくりました。
見返しには、1.2.3.4.5.6.7 というゴシック体の数字が連なって書いてあり、それを見た瞬間、記憶がブワッと蘇ってきて曖昧だったあらすじや曖昧だった主人公の名前、全てが自分が体験した出来事かのように蘇った。
そこからは無我夢中だった。内容なんて訳がわからなかった。でも読み始めた一行目から何故だからわたしは泣きそうだった。

そしてこれが1番覚えていたシーン。
〝まないたのうえに、きざみかけのダイコンがある。 それが、血にそまっている。(中略)ぼくは、しぶんのゆびさきを、すこし切ってみた。血のいろが、きれいだ。そうか!これが赤だったのか!”

この情景を。
わたしの作るものの全てにはきっとこの言葉が通じている。わたしは、よく考えるのです。赤という色をどんなに説明しても伝わらないことを。赤という色を見たときに脳にジワリと広がる赤色が美しいことを。それを主人公、ホタルはみたのです。

その後からは、なんの説明も無くよくわからないことが起き続けます。でもこれは小さい頃に感じていた「よくわからなさ」と全く同じで、理解できないようで、本当は本能では理解ができます。だから心動かされるのです。

このあとは言いません。皆さんに読んでほしいからです。赤色と同じで、どんなに説明したところで伝わるわけもないのです。

ただ先ほど、
「ビビを見た!は、生まれつき目が見えないホタルが7時間だけ目が見えるようになり1番美しいものを見る物語です。」
と述べましたが、全く違いました。全然そんなんじゃないです。
ホタルは、美しい、緑色のよくわからない、ビビを見た。それだけ。



最後に。

今大きくなって読んだわたしが初めて読んだページが、あとがきのよしもとばななさんのこの本への愛の言葉でした。
そこにわたしは心底共感しましたし、なぜか涙がポロポロ止まりませんでした。言葉は素敵です。でも、それ以上に素敵なもの、きっと、言葉から生まれた脳に映し出された、誰にも見せられないこの景色は、文章でも、絵画でも、音楽でも表せないでしょう。そのことが、素敵だと感じて涙が出たのです。

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