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人生10年分くらいの経験

「FinalFantasyXIV」というオンラインゲームがある。
通称「FF14」。国内ではアクティブユーザー数ナンバー1の大人気MMORPGである。
今ではスクエニの屋台骨を支えていると言っても過言ではない。
私はこのゲームに2017年から2020年までの3年間、ガチガチにハマっていた。

そんなFF14も7月から新シーズンを迎えるとのこと。
もうすでに引退した身であることや絵描き活動を優先したいことからプレイすることは無いと思うが、最近は情報が流れてくるついでに思い出を振り返るようになったので、当時の反省を踏まえて振り返ってみたいと思う。

1.はじまり

エオルゼアに降り立つ美波

「光のお父さん」というブログ本をきっかけにPS4を購入してプレイを開始。
実はオンラインゲームってすごく苦手意識があった。
しかも事前に「責任の擦りつけ合いが酷い」と聞いていたFF14である。
剣士=タンク(※)でスタートしたこともあり、様々な苦労に出会いながらも毎日楽しみながらプレイしていた。
※タンク:パーティの戦闘を走って敵の意識と攻撃をすべて預かる役割(ロール)。ダンジョンの道筋を覚え先導する、敵が他のパーティメンバーに攻撃しないようにする等、結構責任重大。

前述の通り、元来のコミュ障でオンラインゲームに苦手意識があったこともあり、自分から他のプレイヤーに声をかけたり、「フリーカンパニー」と呼ばれるコミュニティに飛び込むことはできなかった。
その代わり、後追いで始めた友達や職場の同僚といったリアルつながりのあるプレイヤーと一緒に遊んでいた。
職場の同僚の紹介でリアル以外のフレンドができて、いつしかコミュニティの一員になっていた。

2.昼ドラの如き愛憎劇

職場の同僚の伝手で4人の仲良しグループができていた。
以下、仮名にて表記する。

テツさん:会社の同僚で既婚者。ゲーム内ではやたらとモテる。
ルカさん:竜騎士で侍さんのゲーム内の師匠さん
リナさん:白魔導士の女性。SNS上でのお金持ちアピがエグい

わたし:ナイト

1パーティが編成できる構成だったので、ダンジョンで知らない人と組むよりだいぶ楽で助かった。
この4人でしばらくつるんでいたのだが、ある日、ルカさんから「リナさんのことが好きで付き合いたい」という相談を受ける。
でも、ゲーム内で好きとか付き合うとか全く理解できなかったので「告ればいいじゃん」ってテキトーに返していた。
告白の結果は「ごめんなさい」だったのだが、その理由が「テツさんと付き合ってるから」だった。
すると、今度はリナさんからチャットが飛んできた。

リナ「ルカさんに告白された。今はテツさんと付き合ってるけど、実は前から竜さんのことが好きだった」

立て続けに、テツからチャットが飛んできた。

テツ「ルカさんがリナさんに告ったって聞いた。ちょっとしばらくはルカさんと遊べないわ」

知らんがな‼︎

この出来事がきっかけでグループの関係が崩壊し、私はまたひとりぼっちのソロプレイヤーに戻ることになった。
ただ、当時のTwitterアカウントではリナさんの垢がフォロー状態で残っていたのだが、ある日、リナさんの生誕祭でたくさんの方々に祝われているのを目にした。
そのポストを見て
「なぜこのコはこんなにも沢山の人に愛されてるのに、わたしのことは誰も見てくれないのだろう?」
と暗黒面に堕ち、ナイトから暗黒騎士へとジョブチェンジすることになる。

思えばこれが全ての歯車を狂わせる原因だったのかもしれない。


3.暗黒時代

暗黒面に堕ちた美波

妬み嫉みを覚えて自己肯定感がドン底に落ちた私は暗黒騎士となった。
また、ジョブチェンジによる闇落ちに止まらず、「Lodestone(通称ロドスト)」というゲーム内SNSで気に入らないプレイヤーを腐しまくるという、今なら開示情報請求待った無しな行為に走ってしまう。
「みんなが思ってるけど口にできないことを矢面に立って言語化してやる」という大義名分を勝手に立てていたが、やってることが私人逮捕系YouTuberと同じである。
しかし、これがまた意外とウケてしまい、ゲーム内でも「ロドスト見てます」と声を掛けられることも多くなり、自己肯定感が高まりまくっていた。

すっかり人気者気取りになっていた私は、ロドストでフリーカンパニーのメンバーを募集したら結構集まるんじゃないか?そんな勘違いに走り、沢山の読者さんに囲まれて楽しく過ごす未来を疑うことなくメンバーを募集した。
しかし、募集に応じてくれたのはたった2
1名はロドストを読んで加入したネルさんという忍者。
もう1名は色恋沙汰で揉めに揉めて所属していたコミュニティから追放されて独りぼっちになっていた前述のテツさん
このメンバーで2週間程度活動したのだけど、ある日、テツさんが約束を無断で反故。腹を立てた私が侍宅(ゲーム内の家)に向かうと、地下の寝室で女の子キャラと営んでいる最中だったため、ベッドのど真ん中に設置型の攻撃技を置いて退散。それにブチ切れたテツさんがネルさんに私の秘密を暴露。そこからいろいろあった末にフリーカンパニーは解散。
結局また独りぼっちのソロプレイヤーに戻ってしまった。

4.救いの手

フリーカンパニー解散までの経緯を詳らかにロドストに記したところ、あるプレイヤーさんから声をかけられた。
その方─ダガさんはリンクシェル(LS)というコミュニティを運営している幹部の方だった。

FF14のコミュニティには「フリーカンパニー(FC)」と「リンクシェル(LS)」といった2種類の形態がある。前者が「家族」なら後者は「学校のクラス」や「サークル」といった感じ。

「あなたならFCじゃなくLSの距離感が適してるんじゃないか?よかったら私のLSに加入してみませんか」
そんな風に勧誘されたのだが、加入には条件があった。
1.他人の悪口は言わない
2.ロドストで他人を腐す発言はしない
3.LSメンバーと積極的に仲良くする
仮加入期間は3週間とし、その間に上記の約束が守られているかを確認。その後、既存のLSメンバーから意見を聞いて反対が無ければ正式に加入が果たせるというものだった。
当時、私はとにかく依り代になるものが欲しかったんだと思う。
上記の条件を受け入れて仮加入。その間、品行方正を徹底した結果、正式加入にいたることができた。

LSメンバーの結婚式の様子

今もTwitterで絡みのある方々とはそのLSで知り合った。それくらい濃い時間を過ごせていたんだと思う。

しかし、人間というのはそんなに簡単に変われるわけがなかった。

5.大好物が目の前に

私をLSに誘ってくれたダガさんにはマミさんという恋人がいた。
このお二方、頻繁にLS限定のチャットで痴話喧嘩を繰り広げていた。
マミさんはわりとメンヘラ気質があり、相応してTwitterでは拗らせまくったポストを連発していた。こんな拗れた発言ってそうそうお目にかかれないと思ってスクショしてしばらく大切に保管していたほどだ。

メンヘラをイジるのが大好きだった美波

そういう香ばしい人を見てると、LS加入以降封印していたものが沸き上がってくる。そう、誰かを腐したいという気持ちが・・・
そして、結局ロドストでマミさんのことをネタに腐してしまう。本当にこの人終わってんなぁ・・・
ダガさんとマミさんの関係が完全に壊れてるからダガさんも許してくれるやろ?と勝手に決めつけていた。今になって思い返すとそういうことではないのだが…
それでも、マミさんのことはできるだけ理性的に、かなり遠回しに表現していたのだが、ある出来事で私は再び闇落ちして凶暴性に歯止めがかからなくなる。

6.零式固定パーティ事件

FF14には「零式」という通常よりも難易度が何倍も高く設定されたバトルコンテンツが存在する。
おそらくFF14プレイヤーの6~7割はこれを目的としてFF14をプレイしてるんじゃないだろうか?
当然、私もまたそのコンテンツに足を踏み入れた。

ある日、LS所属のマキさんという方から「半固定を組まないか?」と声をかけられた。
活動をあまり密にせず、メンバーの半分は知り合いで固定、残り半分はその時々でメンバーを募ってのんびり攻略しようという方針。それが自分にとってちょうどよかったため加入することにした。
他のメンバーも普段から絡みのあった方々だったので、クリアできなくても楽しかったのを覚えている。
とはいえ、パーティの半分が得体の知れないプレイヤーの募集だと、時にゲームにならないほど場が荒れてしまうため、対策として固定メンバーを増員することになった。
そこで新たに加入してきたトールさんという忍者が最初の挨拶で開口一番にこう言った。

「メインジョブは暗黒騎士ですが枠が埋まってたので忍者をやります」

その言葉に私はひどく腹を立てた。
今なら「余計なこと言ってるなぁ」と思いつつやり過ごすと思うのだが、当時の私は

「本当は暗黒騎士やりたいからその席を退けって言いたいの?」

と食って掛かってしまった。
お互いの心象が悪くなりギスギスする機会も増え、そんなストレスを発散させるためにロドストを捌け口にトールさんを腐しはじめた。トールさんもその記事を読んで気分を害し、私への当たりが辛辣になっていく。
結局、そんなギスギスした関係が修復されることなくパーティを脱退することになった。
トールさんも同時に脱退したと思う。

声をかけてくれたマキさんには「不快な思いをさせて本当に申し訳なかった」と何度も謝られたけど、本当に悪いのは他人に対して狭量すぎた私だったと思う。

7.ネタバレ事件

どんなコンテンツにおいても「ネタバレ」は重罪である。
しかし、ネタをばらした人への糾弾よりも、ネタバレを食らった人の不手際を責められるというのが日本という国の不思議な風習だ。

とはいえ「ネタバレ=悪」という不文律は変わらないわけで、最低限の良識を持った人であれば進んでネタバレ行為に及ぶ事は無い。
私に対して徹底的な品行方正を強いてきたLSだからネタバレするようなメンバーはいないと思い込みノーガードでいたら、LS限定のチャットでガッツリネタバレを喰らってしまった。

ちょうどこの頃、組織に対して疲れみたいなものを感じていた。そのせいか、些細なことも気になり始め、その都度ロドストを通してネガティブな気持ちを表明していた。
そこにきてこのネタバレである。
「こんな非常識な人間がいるLSにはいられない」と発狂した私は発作的にLSを脱退した。

そういえば、絵を描きたいと思って液タブを購入してLSの方々のキャラを描き始めたのもこの時期だ。
特に仲のよかった方々は私の描いたキャラ絵をTwitterのアイコンにしてくれたけど、一方で「私のキャラも描いて」とお願いされて描いてあげたのに何もリアクションしてくれない方々もいたりして、そういう事もあってLSに対する印象がネガティブな方向に向いていたんだと思う。

8.そして途方に暮れる

無所属となったとはいえ、LSのメンバーとは継続して仲良くしていただいた。
しかし、きっとみんな遊ぶ優先順位はLS>私なんだろうなぁと思い込んでやさぐれ始め、次第に自分から声をかけることが減っていった。

新たな宿木を求めて絵描きのプレイヤーが集まるLSに加入してみたけど、思っていたより技術レベルが高かったため畏れ多く感じてしまい1週間程度で脱退した。
それからしばらくはひとりぼっちでプレイしていたが、グループでのわちゃわちゃが恋しくなった私は恥を忍んで前LSのダガさんに再加入を申し出た。

しかし、回答は「No」だった。

理由は簡単である。
LSにいた頃、ダガさんとの約束を反故にしてしまったからだ。
マミさんのメンヘライジリ、零式固定メンバーにたいする恨み節、ネタバレに対するお気持ち表明etc...
それらをことごとくロドストに書き殴っていく性根を正せない人間はLSに不要という判断が下された訳だ。
もうロドストもTwitterもやらないと言って泣きつきたかったけれど、私が知るダガさんの性格上、何を言っても無駄と分かっていたから加入拒否を素直に拝承した。
けれど、本心では再加入を認めてくれると信じていたから、その夜は声を上げて号泣した。
ゲーム内のグループに入れなかっただけで泣くとか、今になって思い返すとどうかしてると思う。

誰ともチャットせず、キーボードに埃が積り始めた頃には夏になっていた。
お使いクエストでビーチに行くと、前LSのみんなが水着で集まって楽しそうに遊んでいた。
「私もあの中にいたかったなぁ」と思ってまた泣いた。
TwitterのTLにはLSのイベントの様子がレポートされる。

まるでTLが恐怖新聞みたいだった

身も心も保たないと思った私は、Twitter垢を消し、LSのメンバーと会うことが無いようにデータセンターを全く違う場所に移した。
※FF14は複数のデータセンターが存在する。当時はデータセンターが異なると知り合いに2度と会えなくなるため、データセンター移動=国外逃亡みたいな後ろめたい行為だった。

9.そして引退へ

新しいデータセンターで心機一転…といきたいところだったけど、状況としてはゲームを始めてすぐの頃と同じところからのリスタート。
またあの道のりを辿るのか?
そう考えると全てのことが億劫になってしまっていた。

それでもロドストの投稿は続けようと思ったけれど、データセンターを移動して間も無く某掲示板に(悪い意味で)晒されたため、ネガティブなイメージが付き纏うことを嫌って全ての記事を削除した。

ロドストを書く楽しみを奪われて、そこで初めて気付いたことがあった。

私は“何者”かになりたかったんだ

他のプレイヤーから一目置かれる特別な存在になりたかった。

本当ならゲームプレイヤーなのだから高難易度コンテンツに取り組むことで特別感を出したかったのだけど、様々な事情がそれを不可能にしていた。
それでも自分が特別であることを示さないと存在自体が空虚になってしまうような気がした。

ロドストでは自己顕示欲と承認欲求に塗れたプレイヤーを嗤って記事にしていたけれど、一番塗れていたのは私の方であることに気付いた。

そんな自分を恥じることでゲームに対する情熱が薄れていき、また絵描き活動が軌道に乗ってきたこともありFF14からフェードアウトしていった。

10.まとめ

振り返ってみるとまるで10年くらいの月日を過ごしたような気分だが、これがせいぜい3年弱の出来事なのだから驚きである。
とはいえ、この3年間の経験により、絵描きとしての財産となる気付きを得た。

自分は凡庸な存在である

以前の自分であれば、ひたすら数字を求めて足掻き、見苦しいマネを続けていただろう。それでもついてこない数字や他の絵描きさんとの数字の差に心を窶していたと思う。
数字が欲しい故に品の無いネタを描き続けて大好きなキャラを粗末にしていたかもしれない。

凡庸を認めることで自分自身に期待することが無くなった。
その結果、周囲へのウケを考えることなく、自分自身が満足するための作品づくりに傾倒し始めた。
現在、私をフォローしてくれてる方々は、私の自己満足に共鳴してくれた方々だと認識している。
だからこそ、これからもトレンドに左右されることなく自己満足を貫いていこうと思っている。

FF14での経験は、結果として絵描きとして活動する私の土台となっている。
この先、絵描きとしての自分がどう変化していくか分からないけど、定期的にエオルゼアでの日々を思い返しては足下を見つめ直して変化の是非を確認していきたい。

FF14は冒頭で述べた通り7月から新しいシリーズとなり、新たなジョブが追加される。
追加されるジョブは…

ピクトマンサー(絵描き)

実に奇妙な因果だと思う。


美波

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