短歌と、ちょっとプログラミングのはなし。

1年で一番短歌(和歌)が話題になる日が昨日だったと思う。歌会始の儀、日本で最も有名な歌会。

今日はちょっとだけ創作の話。

実はわたしも短歌を詠んでいる。意外とみなさんご存知だったりする?
詠んでいる場所(^1)は内緒だけど。もし歌集出せるくらいになったらお知らせするね。いま知ってる人はそれまで内緒でおねがいします。

短歌といっても古典のように「格調高い」歌を詠むのではない。ほぼほぼ現代口語短歌である。

歌をちょっとずつ、ちょっとずつ評価していただくことがあってとても嬉しいし、表現への手応えが少しずつ出てきた。まだまだひよっこだし、バシバシ指導してもらわないといけないけど。

そういえば昔から、母に「うちの家系は文才があるからね」と言われて育てられてきた。正直疑問だったし、自分に文才がある気はしない。ただ、短歌を褒められたことと組み合わさって「自分、文章がとても上手というわけではないけど、短歌のフィールドならことばで世界に向き合うことができるのでは」くらいの自己肯定感が出てきている。

名義の分離

実は昔からときどき詠んでいた。古いやつなのではずかし。

でも、いまはryo-a/vityaの名義からは完全に分離している。この名前での発言に縛られたくないから。

短歌というものは時に、ある意味過激になる。
その歌が実景を詠んだものか、空想なのか、それはわからない。わからないというか、歌人はあえてそれを伏せる。短歌に「この作品はフィクションです」はない。だからこそ、鑑賞のしかたによっては「この歌人はこんな過激な思想・経験を!?」と思われることがあるかもしれない。

それは芸術表現の枠組みとしてはよくあることだけれど、全ての鑑賞者がその枠組みに乗ってくれるとは限らない。
もしかしたら、「ryo-a、そんなきわどい経験や発想を……!?」のように誤解されるリスクだってある。それが嫌だった。

だから分離した。分離した空間で誤解されるリスクなんかを捨てて表現できるのはとても喜ばしい。創作にとっては制約が一番敵だから。

詠むこと、ちょっとだけ人のためかも。

短歌ってすごい。歌人(^2)にあるまじき語彙力で恐縮だが、ここは敢えて「すごい」と言いたい。

31文字に感情や情景が圧縮されている。抽象化されている。
あくまで個人的な考えだが、抽象化されているからこそより多くの人に響くんじゃないかと思っている。

その文字数的な制約から、短歌には情報を入れ込む余地があまりない。たとえば(万葉集の時代からあるような)恋慕の情を詠んだ歌であったとしても、そこに至る詳細な人間関係などが詠み込まれることは少ない。あくまで一つの感情だけが主題になる。だからこそ鑑賞者が自分の経験、感情に当てはめやすい。

詳細な情報はときに人を共感から遠ざけるのでは、とも思う。
たとえば人間関係に思い悩む人が居たとする。その人が抱いているものと似た感情を描いた創作物があったとして、共感できることもあるかもしれないが、どこかで「まあ、この構図とは(年齢・関係性・性別などが)違うしな」という気持ちが出てくるんじゃないかな。

でも、短歌はほどよく抽象的であるから人に刺さる。痛々しいほどに。
「本当にそう、こういうことなんだよ……」「よかった、私だけじゃないんだ」って。
歌集を読みながら何回頷いたことがあろうか。

これはコンピュータ、プログラミングでいうところのAPIやライブラリの概念に似ているのではないかと個人的には思っている。まだ言葉にうまく出来ないけど。
APIやライブラリは抽象化されており、その処理を叩くためのインターフェイスがある。だから、他者がそれを再利用できる。

短歌は、ことばをインターフェイスとして、他者の経験や感情の(個別具体的な関係性などを取っ払った)コア部分に共感できるような設計になっている。とでも言おうか。まだ言葉にまとまらないな……。まあ、そんな感じ。


創作物に救われたことはないだろうか。

そのときの軸はきっと共感だ(^3)。人はときに孤立したような気分になる。自分だけが思い悩んでいるんじゃないかという気分になる。そんなとき、「自分だけじゃないんだよ」と歩み寄ってくれるのが創作物だったりする。
烏滸がましいかもしれないけれど、もし名前も顔も知らない誰かが苦しんでいたら。どうしようもない状況や気持ちを抱えているとしたら。そのときにわたしの作品が一歩でも、一歩でもその人が良い方向に進むための手助けができるとすれば。
そんな憧れがちょっとだけある。創作物に救われた人間だから。

「ちょっとだけ」人のために作品を作っている、というのはそういうこと。
ことばが人に届くって素敵なことだよね。

さて、これらを達成するためには詠むときのルールが自分なりにある。ことばに対する感覚の見せどころである。
これについてはかなり色々あるけど普通に名義とか活動場所がバレる気がする……ので書くのはちょっと憚られている。DiscordでもDMでも気になる人は直接きいてね(FF内に限るかな、いまは)。

ではまた。

ref

^1: 全く繋がりのない筆名がある。だが、この筆名も旧知の仲の人たちには「これお前でしょ?」となりそうで判りやすい気がしており……。
^2: 歌人って言って良いのかな。歌集とか出ると定義上プロの歌人らしいのではっきり断言できるようになりたいね~。
^3: ryo-aが共感の話をしているのは珍しい可能性がある。冷徹とか論理一辺倒に思われがちだけど本当はこういうところで感情マシマシなんだよ~。それを上手くwrapしてるだけです、はい。

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