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縦と横の価値観。Webと映像の境界をこえて。

映像表現が好きだから映像の話をしたい。といっても専業で映像を作っているわけではないので、さほど偉そうなことは言えないし、感想程度でしかないのだが……。

映像は横長、つまり長辺が横になるもの(これを横位置という)が基本だった。映画館のスクリーンを見ても、テレビを見てもそうである。

だが、これがスマートフォンという縦位置を標準とするデバイスの登場・普及によってここ数年で覆されてきたのである。

「ここ数年」といったがスマートフォン・携帯電話デバイスの登場・普及自体はもっと前の2010年代前半からである。技術的にはそこのくらいから変わらない。覆されるとはなんなのか。価値観の話である。

横位置を基本とする放送業界に、縦位置の映像が送り込まれてしまうことはちょっと前からあったと思う。具体的にはニュースの「視聴者提供映像」である。
横位置であるテレビ映像に縦位置の素材を載せると画面の3分の2が黒ベタになる。あまり見た目がよいものではない。その空間に意味はないから。
だから、これは現場に居合わせた視聴者が撮ったものだから仕方がないよね(代替できないからね)という雰囲気で扱われていたように思う。

しかし、価値観が変わった。プロフェッショナルが積極的に縦位置の映像を使う場面が出てきたのだ。この例が初めてというわけではないが、帰省して実家のリビングにあるテレビを偶然見て、それを強く感じたのでこの記事を書いている。

番組は「転生したら戦時中の喜劇王だった件」である。タイトルもネットからやってきた感じがすごいがこれは一旦置いておくとして、Instagramのストーリーなどを模したような縦位置映像で物語が進行する。左側はあくまで時期を示すだけエリア、右側は心理描写を補足するエリアである。個人的にはこの表現が正しいか・美しいかはまだ判断できない。「3分の2をどうするか」はまだ試行錯誤が必要だろう。

ただ、「縦位置の動画は素材として不適」という価値観ではなく、縦位置をどのように盛り込むか……という価値観にシフトしつつあるのは間違いないと思う。

それはそうと、InstagramのようなWebサービスに着想を得た映像表現といえば最近リリースされたこのMVも印象深かった。

途中、登場する枠がWebサイト的な表現なのである。また、タイポグラフィのデザインもbroken grid layout、すなわちグリッド・枠をはみ出したWebデザインのように感じられるシーンが多々ある。とても好きなMVだ。

映像作品とWebの境界はだんだん溶けてきている。インタラクティブな何かを作っているわたしとしてはこの溶けた領域でなにか面白い事ができたら楽しいなと考えている。まだ具体的ななにかがあるわけじゃないけど。

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