千葉ロッテの先発陣を振り返る①

 タイトルの通り2019シーズンにおける千葉ロッテマリーンズの先発投手を一人ずつ振り返っていく。なお、ブルペンデーで一度だけ先発した(1イニングのみ)唐川侑己は除くものとする。


11 佐々木千隼 7登板 2勝1敗 32回 22振 防2.53 WHIP1.19
  
右肘の手術を乗り越え二年振りに一軍登板を果たした元ドラ1右腕。そのスリークォーターから放たれる150キロのナチュラルシュートするストレートと切れ味鋭いシンカーが持ち味の投手。今シーズン復帰してからは130後半から140キロ程度のスピードに留まっているのは悲しい所だが、新たに真っスラを覚えて帰ってきたのは頼もしい。また大きな膨らみのスライダーも持っているが、ほぼカーブである。
 1年目は大学時代よりも球速が落ち、元々コントロールが良い選手ではないためボール先行してしまい苦し紛れに投げたボールを痛打されるというパターンが多く見られたが、今季復帰してからはコントロールがある程度改善されておりルーキー時代とBB/9を比較すると5.06→3.38と改善されつつあるのが分かる。ただ、球速を上げた時今くらいのBB/9を維持出来るかというのは別の話である。
 怪我明け一年目は7登板(6先発)で終え、先発時の平均投球数は約83球と負担を考慮されたシーズンとなった。来年こそは万全の状態で開幕を迎え先発ローテの一角として、規定投球回数&二桁勝利とそのポテンシャルに見合った成績を期待したい。


12 石川歩 27登板 8勝 5敗 118.2回 81振 防3.64 WHIP1.32
 石川五右衛門の異名を誇る名実共にロッテのエース、になる予定だったが未だに成り切れていない男。近年は投球感覚のおかしさが目立ち成績は低迷気味。初回150キロを超えるストレートを投げ込んだかと思えば、次の回140キロしか球速が出ず相対劣化したボールを打たれるシーンが多く見られた。投球で大事なことは、基本7~8割の力感で投げ続けられる”再現性”であり(お股本P55~56参照)、ギア上げるのは終盤の勝負所くらいで良い。WBCが終わった当たりからこの力感のズレが生じており、石川こそお股本を読むべきだろう。
 しかし、終盤に入ってから先発として復活を果たしCS争いの立役者となった。これは吉井コーチによるリリーフ配置転換が大きかった。石川の話によると、1イニングを目一杯投げてみて「力んでもろくなことはない」ということに気づいたらしい。先発復帰後の成績は、7先発 5勝0敗 防御率1.90 QS率100%(HQS率42.8%)とエースと呼ぶに相応しい姿を見せてくれた。
 来年こそは開幕からそのひょうひょうとした姿で一年間先発陣を引っ張って行って欲しい。


18 涌井秀章 18登板 3勝 7敗 104回 87振 防4.50 WHIP1.42
 FAでロッテに移籍してきた2014年からローテーションを守り続けてきた涌井だが、今年は中盤に二軍落ちしてからというもの後半は殆ど出番なく終わり規定投球回にも届かず、不本意なシーズンとなった。涌井の真骨頂は屈指のイニングイーターである点だろう。全盛期を過ぎてからはその桁外れのエンジンと投球術、フィールディングで毎年必要不可欠な存在となっていた。
 涌井は多彩な変化球を操るが、決め球は大体落ちるボールである(スプリットや今年はチェンジアップが多かったように感じた)。これといった決め球は無く、その日その日で良い球種を使った組み立てが出来るのは強みだが基本はストレートだ。今年はストレートの質に波が激しく、またコントロールが定まっていない印象を受けた。非常に繊細な差なのだろうが、小さな要因から大きな違いを生んでしまうのがプロの世界なのである。
 徐々にボールそのものの質が落ちていってるとはいえ、まだ一軍で通用するだけの強さはあると思うので来年こそ復帰してもらいたいし、やってもらわなくてはいけない選手だ。


29 西野勇士 37登板 2勝 3敗 70回 64振 防2.96 WHIP1.13
  かつてはロッテの絶対的守護神としてマリンに君臨し、日米野球ではノーノー継投で最期を任された程の投手である。ここ数年は謎の右肘痛から球速が落ち一軍登板の機会も減っていたが、今年に入り何故か痛みが無くなり復活を遂げた。まず、復活できた要因として球速が戻ったことが大きい。ストレートの球速が150キロ近くになったことで、相乗効果により変化球も良くなった。西野と言えば落差の大きいフォークという印象が強いが、クローザー全盛期はフォーク以外にも縦スラ、カーブの制度が一級品だった。
 今年の投球内容を振り返ってみると、特に終盤先発に転向してからは圧巻の一言。常時140キロ後半のストレートに縦スラ寄りのスラッター、伝家の宝刀フォーク、アクセントにカーブと正にスラットスプリット型の投球を体現していた。
 今年は前半戦リリーフからのスタートだったが、来年は開幕から先発として投げている姿が楽しみである(まだ分からないが)。今年終盤に見せたクオリティーを引き続き維持出来れば二桁は余裕で勝てる投手だと思うのだが。


34 土肥星也 6登板 1勝 0敗 31.2回 28振 防3.13 WHIP1.48
 今年ロッテで一番成長した左腕と言って良いかもしれない。シーズン開幕からファームでローテーションを守り9勝を挙げた。先発の駒だけは揃っているロッテだけに中々一軍でのチャンスは回ってこなかったが、少ないチャンスで期待以上の結果を残したと思う。土肥は長身から投げ下ろされるストレートとスライダー、チェンジアップ、カーブのコンビネーションで抑えていく投手だ。
 昨年までと比べ良くなった点を2つ挙げると、まず1点目は最低限の球威を手に入れたことだろうか。以前の投球を見ると平然と134キロくらいのストレートを放っていたが、今年は先発でも140キロそこそこ出るようになっておりやっと一軍で勝負出来る球速となったことが大きいだろう。2点目はコントロールの向上だ。ファームのBB/9をルーキー時代から見ていくと、4.20→3.34→1.69と年々上昇していて今年は二軍では文句なしの数値を残している。実際、投球を見ていて去年のような上ずったボールは少なくなったと感じる。
 スピード、コントロール共に進化した土肥だがやはり右打者への対応が課題だろう。今シーズン一軍での対右被打率.324、対左被打率.231となっておりとにかく右打者を抑えるビジョンが見えなかった。右打者の攻めとしてインコースのストレートか外のチェンジアップ、最終的にこの2パターンしか無く球威で抑えられるタイプではない為右打者はどちらかに絞れば攻略するのは然程難しくはないと感じてしまう。右打者へのインだけではなくもっと左右に幅を利かせられる投球術を身に付けたい。カット系のボールももっと使えるようになると上手く目線を外せられると思う。また、球速が上がったとはいえ”最低限”止まりなので3、4巡目になるにつれ相手打者が慣れてしまうのも来期に向けての課題である。


36 有吉優樹 2登板 0勝 2敗 7.1回 2振 防13.50
 開幕先発ローテの座を勝ち取ったものの2試合打ち込まれ二軍降格、そのまま右肘の手術をし今シーズン終了と完全不燃焼のシーズンとなった。先発、リリーフどの役割もこなせる便利屋だが、ラグーンが設置されたZOZOマリンで来年以降どこまでやれるかは不透明なところ。
 コントロールが良く、主にスラットとカーブで投球を組み立てるスラットカーブ型の投手である。来シーズン酒居が抜けた穴をどこまで埋められるか。

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