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義経千本桜~源平天外絵巻~ 感想

千秋楽の公演を見てきました
義経という、多くの人が華奢で小柄なカリスマ性のある美男子を思い描く人物を180cm越えの大男が演じる今作、演じるご本人も戸惑っているとお話しされていましたが大丈夫です、ファンも混乱しています
弁慶のほうが大きいからとお話しされていましたが、正直誤差の身長差
あまりにも挑戦的すぎでは?
そもそも義経の話よく知らないな!?
などと大量の不安を抱えながらの鑑賞です

感想としては面白かった!!
エンタメ全部乗せの演劇は正直苦手なジャンルなのですが、それでもすごく楽しめました
物語の性質上どうしても登場人物が増えるし話も枝分かれして複雑になるのですが、それでも見やすい作りになっていたと思います

冒頭の義経の登場がとても印象的で
『カリスマ』ではなく愛嬌で人を惹きつける義経であることが登場だけで伝わった
あのヘラヘラした弟キャラの義経は今後現れないのではってくらいとても柔らかい雰囲気で、これがこの舞台の義経像であることを明確に表現している一幕だった。カリスマ性を排除する演出を冒頭に持ってきたことで、日本人に刻まれている義経をリセットさせることに成功していたと思う。
義経像よく知らないけど()
ただ、それ以降そのキャラクターが生かされることはなく、暗い表情ほぼ一辺倒でもったいないなと感じた
展開を早くする必要があるから仕方ないのだとは思うけど、あの一幕の印象をそこだけで捨ててしまうような作りで、義経のキャラクターだけが最後までしっかりつかめなかったなというのが個人的な感想
笑いの場面で表情を全く変えない姿にどういう意図があるのかわからなかったけど、全員がそっちに走ってもブレるしなとか考えながら見ていました
再度演じられる冒頭の一幕で「こういう人なんだよな」という再確認ができたけど、作品を通してもっと柔和な面が見られたらと思った
穏やかな表情を見せるシーンもあったけど、他の役者がコミカルすぎて埋もれていたんだよね…そこは本当に残念だなと思った

ただ、義経の暗い表情の中に
人の上に立つ覚悟のなさとか
人の命が失われる怖さとか
自分も死になくない気持ちとか
そういうものがずっと感じられたのはよかった
自分の意志で誰かが死ぬのはとてつもなく怖いことで、その運命から逃げたい気持ちも逃げられない苛立ちも全部ちゃんと伝わる演技だった
ただ、顔がマジ見えねえ
前髪も後ろ髪もあり得ないくらい顔にかかってる
いいシーンも全部顔が見えない
なんだこれ??とは思ったけど感情は見えたので大丈夫です(?)
表情が分かったらもっと良かっただろうなという場面が多々あったので表情が見えなかったのが悔やまれます

殺陣がとにかく良かった!!
最初の殺陣の段階でかっこよすぎて泣きました
殺陣で泣いたのははじめてです
個人的に名古屋山三郎さんがめっちゃ好きでした
殺陣が尋常じゃなく美しいです
演技も抑えてるのにコミカルなの天才的でした
作品を通して殺陣の数が多いのに全部クオリティ高くて
本当にみなさんすごいなと思いました
殺陣ひとつひとつの時間も長くて見ごたえありすぎ
とくにラストの殺陣は一番息もあっていて、空気も出来上がっていて
息をのむとはまさにこのことだなと
本当に素晴らしかったです
ただ、歌唱している人と同時の殺陣はあまりにもエンタメ全部乗せすぎて、そういうのがそもそも苦手な私にはかなり過酷でした…
でも、好きな人にはこういうの最高なんだろうなと発見した感じです

悲劇の物語だから登場人物みんな悲しい結末なんだけど、そこに至る話がアッサリだけどちゃんと描かれていてすごいなと思いました
笑いをうまく含むことで幸せな日常を数ターンの会話で表現しているのは見事だなと
物語が進むにつれ重たくなる話を笑いで適度に軽くする手法がディズニー作品じゃんって思ってみてました
見る側が疲れないの大切ですよね

義経と弁慶の関係性が前と後ろで戦うものではなく
背中を預ける関係性であることが一貫していて
身長差がないことが全く不自然じゃなかったのですが、喜三太という語り部が常にいることで義経と弁慶の対の関係が希薄な印象にはなっていたかなと感じました
ただ、その二人の対の関係が重要なのかって言ったらそれも違う気がするので新しい義経の物語としてこれもありですね
エゴとエゴのぶつかり合いがみんなかっこ悪くてわがままで
お互いの意思を汲み取れないんだか汲み取らないんだか、美しくないなと思ってたけどなんとなく綺麗にまとめていたのでさすが演劇ですね
上に立つ覚悟がない義経にものすごく説得力を持たせている作りだったからあのやり取りもすんなり見られてストレスなかったです
あんなのカリスマにやられたらイライラしちゃうかも…

とにかく義経にスマートさがなく、終始泥臭く地を這う印象で
それが本当に良かったです
己が生きることに貪欲でありながら、誰も死なせたくない
戦の中で駒として働くことはできても、その立場を離れたら普通の人間である義経は本当に惨めでカッコ悪かった
でも、それがすごく良かった
儚く散った悲劇のカリスマではなく、生きることに執着した泥臭い義経がとても美しかった
冒頭の美しく散る桜と対になるように散る終幕の桜
その桜は儚く美しくもありながら、養分となりまた花を咲かせる力強い桜でもある
綺麗なだけじゃない
生命力あふれるラストは、なんとも言えない高揚感を与えてくれました
本当にいい終わり方でしたね

顔よく見えなかったけど

そんな感じの感想です!
Blu-ray予約したくらいには良かったです!
ただ、小学生には同じ人が違う役で出てたりアドリブが役に沿ってなかったりでかなり難解だったそう
まぁ、仕方ないよね
また舞台観たいなと観劇意欲が湧きました
この後にリムジンやってたら絶対観に行ったのにな
リムジン観に行けばよかった…好きだよ倉持さん
栗山さんの舞台もまだ見たいね
舞台本当に面白いよね、大好き



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