体を買うのは普通のことか

Black Lives Matterや香港の問題には共感を示すのに、日本国内の性差別には無関心なインテリ男子が多くて、何だかなーと思う。

私はどちらかというと「いい大学」に通い、世間的にはインテリとみなされる人たちと学生時代を共にした。恵まれた環境であったはずだが、結局は社会の縮図だった。〈女〉として、当時から、違和感や嫌な思いを抱くことはそれなりにあった。しかしその頃の私はそれを表現し立ち向かう言葉も概念も十分にもっていなかったし、むしろ、彼らの価値観を内面化して適応しなければ、自分には今も未来もないのだと必死だった。今は違う。時代も違うし、私も成長した。だが男友だちの多くは、その部分に関しては、あまり変わっていないような気がする。

どんな事がありどんな思いを抱いたか、つらつらと書いていくつもりはない。こういった問題とあまりにも折り合いがつかず、憤りと悔しさと悲しみで気持ちをコントロールできない時もあったが、少なくとも今はある程度、自分なりの距離感で向き合っている。

今日は一つのことについてだけ書く。表題の通り。


あまりに多くの男性が女性の体を買う。そのことに対し何の違和感も感じていない。


この事実は私を不安や恐怖に追い込む。


始めに断っておくが、私は一切のセックスワークがこの世からなくなればいいと思っているわけではない。この世には様々な人がいる。働く側としても、利用する側としても、それを「必要とする」人はいるかもしれないと想像する。セックスを通して人を癒すことに歓びを感じる人がいるかもしれない。依存症で、それがないと生きていけない人がいるかもしれない。あるいは「俺/私はセックスするために生まれてきてそのために生きている!」みたいな人もいるかも。そういう人は金銭が発生しようとしなかろうとやりまくって生きてくんだろう。それはそれで払う犠牲も多い、大変な生き方だろうし、誰に止められるものでもない(もちろん当事者間の合意がある限り)。

このような人たちを想像するとき、私は彼らの気持ちが多少なりと理解できるように感じる。

私が受け容れ難いのは、そうではない人たち。必要とはしてない。なきゃないで平気。でもあるから行く。行けるから行く。そんな人たち。


人には肉体があり精神がある。その総体としての〈自分という存在〉を与えられて、人は生まれてくる。これはそれぞれの人間が、産まれてから死ぬ時まで保持し続ける唯一の財産だ。他者から犯されるべきではない大切なものだ。

セックスは肉体と、そこから完全には切り離すことのない精神を、他者と共有する体験だ。本来ならば当事者同士のコミュニケーションとか信頼とか、素敵なバイブスとか何かがあって初めてこの個人的な、大事なものを共有しようということになる。

それをお金で買うのは普通のことか?



かつて、自分のパートナーにこういう話をしたことがある。
「言ってることが全く理解できないし、理解するの諦めた」と言われた。

彼にはいいところがたくさんあって、愛していただけにつらかった。

分かり合えず、変われないなら受け容れなければ、人間同士だから、と、なるべく考えないようにしたけれど、ふとした時に頭をよぎって体の芯が冷たくなった。自分の隣にいるこの人は、お金で人間を買うのを何とも思わない人。あるいは、女性を人間とみなしていない人。そう考えたらおぞましかった。しかし嫌いにはなれない。今は離れたところにいるその人が、もし変わろうとしてくれるなら、やっぱり一緒に生きていきたいと今でも思う。



「おれ男だけど、言ってることめっちゃわかるよ!」って人がたくさんいて、そのことを私に表明してくれたらなあ。もうちょっと希望をもって生きられるんだけど。


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