Death Stranding

操作性:9点
仕組み:9点
世界観:7点
絵作り:10点

荷物を運んで世界をつなぐゲーム

 依頼された荷物を運んで世界を物流でつなぐゲーム。
Death Strandingの世界ではなんだかんだいろいろあって人類が滅びるレベルの災害が起きて都市が点在状態に。そこで荒野と化した都市と都市の間を荷物を担いで闊歩するというのがこのゲーム。
 これだけ聞くと地味に思えるがまさしく地味で、ゲームの初期の遊び要素は地面をスキャンして悪路を避けたり、バランスを崩しそうになったら倒れそうになるのと反対の方向のL2R2ボタンを押すなどスーパーすこぶる地味ゲーム。ただこの地味作業が結構面白く、爆発的な楽しさはないもののPS4の電源さえつけてしまえばついついやってしまうスルメのような面白さがある(ゼルダの伝説ブレスオブザワイルドをやったことがある人ならこの面白さはなんとなくわかると思う)。
 また地味ゲーの黄金パターンである初期はめんどくさかったことが技術の進歩で簡単になるという要素も取り入れていて、バイクやトラックで運搬が楽になるのはもちろん、自分が多く通った道が踏み固められ歩きやすくなったり、中盤になってくるとコンクリートの道路をせっせと作って国道として使えたりと進化のカタルシスがあるゲームになっている。

”つながる”ことを意識したゲームシステム

 Death Strandingの世界観では、けして主人公一人で物流網を構築しようとしているわけではなく”配達人”という主人公のように物流を支える職業の人たちが存在する。彼らはときにNPCとして、ときに重要キャラとして、ときに"こだま"として主人公の前に現れる。そしてもう一つ彼らの存在を確認できる方法が道に置かれた建設物。Death Strandingでは渡れなそうな川に橋を架けたり、反り立つ岩肌にはしごをかけたり、深い渓谷にロープで降りて行ったりと建設物を使って悪路を制覇していくのだが他の配達人が使った建設物が道に残っていることがありそれを使いまわして目的地までのルートを作ることができる。
 回りくどい言い方になったがつまるところオンラインで他人の設置物がランダムに共有され自分一人ではなくみんなと協力して物流を構築している感が味わえるということですな(ダークソウルシリーズの助言みたいな感じ)。これにより一人じゃないんだ感や他者の建設物を考慮したルート選びなどの遊びが展開できるようになっている。

独特な世界観と謎の解明

 Death Strandingの世界ではなんだかんだあって人類が滅びるレベルの災害が起こったわけだが、その災害がなぜ起こったのか、今起こっている超常現象はどういう理屈で起こったのかなどが進行度に応じて解明されていく。これがなかなかに面白く小島監督がよく使う(と、勝手に俺が思っている)現実世界の歴史を一部引用して創作世界に現実味を持たせるという手法によりお話にどんどんのめりこんでゆく。序盤は意味わからん独自の用語をばらまいておき非現実感を出しながらその一つ一つを解説するうえで史実上の出来事を絡めていき「え、もしかしてこれ俺たちにの未来にも同じこと起こるんじゃね…?」と思わせるようなストーリーになっていると思う。配達という単調な作業で中だるみしかけたユーザーを世界設定で後押しするようなゲームバランスになっていると感じた。

ゆーて欠点もあるわけで

 などと褒めまくっていたが、だめなところが無いわけじゃない(そんなゲーム存在しないと思うし)。徒歩移動という単調な作業にいろいろな遊び、協力の楽しさ、成長の楽しさといろいろなものを足してゲームという形にしてきたわけだが最終的にはやっぱり地味。特にストーリークリア後のやりこみ要素中はストーリーの後押しもなく成長しきって成長のカタルシスもなくただひたすらに整備しきった道を行き来するという作業になってしまい本当に心が折れる(折れた)。またストーリーも説明不足感が否めず結局黒幕の動機は何だったの…?とかそこまでやっといて被害者面されても…みたいな不満が無いことはない。SFアニメとかでよくありがちな序盤は世界観を掴むのに苦労して中盤は謎がどんどん明かされて楽しく終盤は結局ことの顛末を聞いたけど妄想が膨らみ過ぎててえ、それだけ…?ってなるあれに似てると思う。

カテゴリー評価

操作性:
 よかったと思う。理不尽に感じるところがあまりなくBotWのリンクのようにプレイヤーが思っているより主人公ががんばってくれてるときがあり納得感があった。
仕組み:
 
配送という地味さをカバーするための仕組みが多く取り入れられており成長のカタルシスや協力のシステムなどが俺好みでよかったと思う。ただ難点を挙げるとするのであれば中盤がMAXに面白くなるという仕組みの幅が問題だったかな。
世界観:
 独特の世界観をよく練り上げられていると思う。前述したとおりお話の見せ方も上手で近年の小島監督作品っぽいな~と感じた。ただSFあるあるの序盤中盤楽しくて終盤え~な展開も小島監督作品っぽいな~という感じ。
絵作り:
 
ここまで触れてこなかったけどここが一番すごいと思う。めっちゃきれい。旅ゲーだけに背景にはすごい凝ってるというのはもちろん、人物の表情やそれぞれの物の質感、光の空気感などがよく表現されていたと思う。PS4だけどレイトレーシングしてるんじゃね…!?などとぼんやり思っていた(詳細はよくわかってない)。

総評

 お散歩という地味ゲーにいろいろ色を足してよくここまでにしたなというのが正直な感想。一つの仕組みとテーマを決めてそれに肉付けしていくとこういう尖ったゲームができるんんだな~と思ったのと本人はインディーズとは言っているものの日本のゲーム会社からここまで尖った作品が出てきたのが正直嬉しかった。ただ中盤にカタルシスが偏りがちなところもありもっとよくできるところもあるんじゃないかなと思ったのも事実。EP3の序盤でポーラーガンがゲットでき(もしくはプロトタイプとして支給され)、クリア後にジップラインの強化版が支給されてそれで全国をつないでいる間にすべての施設の親密度がMAXになるくらいのバランスにしておけばゲームシステム的にはよかったんじゃないかな。ストーリーは正直よくわからん。因果関係は掴めるものの最後のほう個々の感情の描写が薄くて説得力に欠けていたと思う。
 多くの人が言っている万人に勧められないけど好きな人は好きそうというのがまさしくそうで、それが尖っているゲームの証でありその尖り方が近年の日本発の中では尋常じゃないところがさすが小島監督といったところか。