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'20-21 WC BAL@TEN 感想

※前段でレビューにつながるOF/DFの概論をまとめて、次にO/Dの流れで感想を書いています。

試合概要

NFL 2020年シーズンのAFC Wild Card Game

第4シードのTENと第5シードのBALの一戦。言わずもがなリーディングラッシャーのHenryを中心としたTENと若手モバイルQB筆頭であるLJ率いるBALのRun Orientedチーム同士の一戦。

LJが今までPlayoffでの勝利がないことと、昨年上り調子だったBALがTENにPlayoffで負けたこと、'20のRSでもTitansが勝ったことから因縁の相手でもある。試合のカギは走れるQB(=LJ)と倒れないRB(Henry)をお互いのDFがいかに止めるか、であろう。


※'昨年のDivisionalでもめてる様子

そもそもFootball概論①(コンセプト編)

DFは原則相手に合わせてアライン(位置する)ので、OFが広い隊形を使えば、広がるし、タイトな狭い隊形を使えば狭くセットする。この裏を突いたうえで、「DFを広げてInsideのRunPlay」「狭い隊形からオープンのOptionやスペースを利用したパス…」と展開するのがオーソドックスである。

またRunが止まらないと裏のPlayAction等Passも止まらず、的が絞れなくなるため、DFの第一優先はRunを止めること。OFの第一優先はRunを出すことが教科書的なFootballの原則である。Runが止まらないとDFはFrontやInsideの枚数を増やして、物理的に止めに行く。そのためOFはさらにいろいろなパターンで攻めやすくなる。

Passは失敗するリスクもあるためシンプルにRunが出てるのが一番楽なのである。このオーソドックスな展開が出来なかったためにTEN OFが手詰まり感になったのは後述。

そもそもFootball概論②(Option編)

言わずもがなBALはLJを中心としたOption Play(≒Zone Read)が多いので、(概念的)OptionPlayの止め方をざっくり触れようと思います。TEN DFがどのアプローチでLJを止めに行ったのかは、後ほど触れます。

アメフトは見る専門ですのコピー (1)

まず、大原則としてOptionPlayが来た時の役割をすべてのDFシステムで明確化させます。OptionPlayの種類にもよるが、2way/3wayで誰がGive(FB),QB,Pitch(TB)に行くか、ルール化する。役割が不明確では一生Option止まらない。そのうえでPlaySpeedが出るように思考停止で役割を遂行できるように反復する。

その大前提のもと、以下のような手法をMixしてQBのReedやPFのAssigmentMissを誘う。

①Stunts(DL同士のCross)やCrossBlitz等、通常のDFと役割を変えてQBのミスリードを誘う

→オーソドックスな手法ですが、NFLだとキャリアーやプレースピードが段違いなので、DLのStuntsで積極的にOptionを止めに行くケースは少ない。

②Under(2線)のDFを増やして、Runに関わるメンバーを増やす

→Frontの枚数を増やしてしまうと、LOSに近い位置でQB/RBの1vs1が出来てしまい、タックルミス=ロングゲイン/TDにつながるので、(保守的かつ多少のGainは許容しつつ)Underの枚数を増やすことでRun Playをみんなで止めにいく。

③Sky/BuzzやDisguiseでのミスリードを誘う

→OFがOptionPlayを行う際、Keyを設定してDEやOLBの動きでQBがKeepするかHand offするか選択するが、DFの隊形をスナップ前と実際のプレーで変えることでOFの隊形カウント(4-3,4-4,3-3,3-4...)やAssigmentを崩しにいく。Option対策に限らず、DFの攻め方の常套手段である。SFが誰にも触れられずにキャリアーをタックルしている場合、OFがこのパターンにはまって、SFをAssigmentから漏らしている場合が多い。

④HoleやQB Mirrorを設定する

→明確に役割としてQBだけをWatchする選手や、大きくパスカバーに下がらずHole/Spyとして自由に動く選手を残して、OptionやQBRun/スクランブルに対応させる。ただ結局加速したRBやQBと1 on 1になってしまうため、Optionの止め方としてPriorityは低い。

※Footballの止め方なので、これ以外にも有象無象あると思いますが、メジャーどころとしてこの辺に。

TEN OF

元来、TEN OFはHenryを中心としたRun AttackとQB Tannehillの得意なSlant等の短いPass,HenryをデコイとしつつTannehillがいざとなると走れるようなBoots/PAPで組み立てている。

また、HenryはDFを引き付けたうえでCutbackや、空いているHoleを探してCutbackを切ったり、Edgeに展開してDB等のミスマッチを狙うことによってLongGainが多く発生している。(M.Lynchのようにガンガンタテに突っ込むタイプでなく、むしろ全盛期のT.Gurleyに近い印象)

OFがHenryの特性を最大限生かすために、あまりスプレッド隊形は使用せず、Tightなフォーメーションが多い。OFが密になることで、相手DFを団子状にする、Boots等のPassを展開しやすくする等の意図がある。

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Henry対策から、常時BAL DFのFrontの枚数が多くRunが出ない状況のため、PlayActionやBoots、決め打ちのTannehillのQBRunもPlayCallしづらい状況とでTEN OFは後手となった。(後半WR陣のけがも重なりさらにじり貧に)

頼みの綱のSlantPassも、OFがTigntな隊形のため勝負するスペースが限られていたり、LB/SSがFrontに近くパスウィンドウが狭く投げづらい状況に。

苦し紛れのTE Crossや1 vs 1を狙ったFade(早いタイミングのタテ)が偶発的に通ったが、Runが出ていないこともあり、単発に。

試合を通じて軸のHenryやタイミングパスが封じられてしまい、結果BAL OFがスコアとして上回った状況。

先述のFootballのセオリーとして、DFを広げてのRunやスペースの使ったPassを展開したいところだが、Henry用のTightな隊形とタイミングパスの愛称が悪く、結果自己矛盾的なOFとなっている気がする。

BAL DF 

TEN OFに対して終始以下のようなDFで対応した。

・5-3中心の8men Front(4-4の変形)でHenryのRunning Lane/Cutback Laneを塞ぐ。Frontの枚数が多いため、OFのEdgeへの展開も難しくなる。

・CBがWRに対して0ydsでPressすることでTannehillが得意なSlant等のタイミングパスを消す。

・DBが近い位置にいることでRun参加を容易にした。

また、終始BALのFrontがGapから顔を出してHenryの足を止めていたことも、RunPlayが簡単に出ない要因の1つだった。

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BALの守りかたはシンプルだが、今後TEN(Henry)対策として、同地区中心に広がると思われる。

◆BAL戦でのHenryの全キャリー

※全般CutbackLaneが埋まっていることと、DLのRun参加が目立つ。

BAL OF

BAL OFは走力のあるLJを中心としたZoneReadやQBRunとPlayAction/RPOが中心。特に今年はG/T(たまにC/T) 2枚PullのQB ChoiceがKeyPlayになっていた。

https://twitter.com/SpreadOffense/status/1318230091151872000?s=20

実際、TEN DFに対しても同様の2枚Pullパターンは展開しており、またFakeのWingFlatやMotionを絡めたSwingパターン等多彩なパターンで見せ方やターゲットを変えて展開していた。FBのFlatパターンはこの後のPlayoffでも使用するであろう良いチェンジアップだった。


TEN粘り強いDFと相対したことで、シーズン中のように終始Runが出続けているという状態ではなかったが、それでも相手のミスもあり、LJのScrambleで1発TDに持って行ったり、3QはLJのRunが2回ほど出たことでTDにもつながった。

一方、TEやWINGを付けないスプレッド隊形では、TENの3menでもRushが厳しく、LJの判断も時間がかかってしまいサックされている状況もあった。また、ぶん投げエイヤーパスを序盤にINTされていたが、パスの精度や雑さがNFL入団前後のLJの評価が低かった状況に戻っていた。

BAL DFが踏ん張ってくれたために試合には勝ったが、モバイルQBでもR.Wilsonのように堅実なゲームメイクをしていかないとやはりPOで勝てないQBには変わらないのではないか。

TEN DF

TEN DFは3men BaseのDFでOFがTightな隊形の場合は5menLookのケースが多かった。BALがH/WINGを使ったフォーメーションが多く、2枚飛びや通常のPowerをいの一番に止めるために、Frontを上げて対応した形。QBRunの脅威はあるものの、隊形に応じてまずは通常のRunも止めに行けるようにしないと本末転倒になる。

また、Motion時やWINGのいないサイドではSFのSky等で枚数を合わせに行ったが、結果これがOptionの止め方③のようにSFにブロッカーが来ず、丸裸でLJと対峙出来ることがあった。

WingやTEがいない状況では3menのままBlitzを入れたり、そのまま引いて守っている絵が多い。

おそらくスカウティングの結果、OFパーソネル(か隊形アジャスト)でDF側のSystemも変更していたように見受けられる。

Tightな隊形ではWing/TEなどの枚数差からFrontの計算が合わなくなるので、5menで守る。BALは2枚飛び or FB+QBのようなChoicePlayも多く、LOSに近い位置で勝負するのは得策だったと思う。

スプレッド隊形にはショートパスやSweep/Swingを絡めたOpenPlayがあるので、3menでUnderの枚数を増やして守る。OptionにもDFの参加人数を増やして対応。おおよそRunについては大きく崩されることのないGamePlanだったといえる。

LJ/RunGame対策は前述の②,③が中心で、シンプルだったが効果はあった印象である。

Passingでは要所でMtoMのBlitzPackageやStuntsを組み合わせていたが、

MtoMが裏目に出てしまいFSとLJの1vs1が仕留められず、2QのScrambleTDに。また、Marquise Brownなどが競り勝ったシーンも得点につながったが、DFは結局1 vs 1が負けてしまうと組み立てようがない。

事故と後半の入りでテンポよくとられてしまった部分はあるが、結果的には被獲得YDSに反して、17点に抑えることが出来たといえるのではないか。

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◆Tight AceWingに対して5menFrontで受けるTEN DF

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◆MotionからSFが左からSkyするパターン。この後アサイメントから余りLJをタックルしている。先述のOptionの止め方では③のパターン。

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◆1QのINTも手前サイドがSkyしている。試合全般、Snap後のSky/Buzzが多かった。Sky/BuzzはOptionが多いOFに対しての常套手段である。

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◆スプレッド隊形では1st/2nd Downでも3menのまま守ることで、BAL側のTightな隊形との表裏に対応していた。Underの人間を増やすことでRunを守る+タイミングパスを警戒する意味合いがあったと思慮。

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Appendix: Game Highlight/Stats


https://nflcdns.nfl.com/liveupdate/gamecenter/58492/TEN_Gamebook.pdf

まとめ

「倒れないRB」はうまく枚数をあてがうことで止まる。OFはRunが出ない時のPlan Bを複数持っておく必要がある。

「走れるQB」には案外人を割かない(=Underの枚数を増やす)でも対応できる。RBと異なりQBにはPlay選択できるので、DFが大きく動きすぎると簡単に裏を取られてしまう。

また、お互いがRun Orientedのチームではキャッチアップの際にPassを投げるころには時間もPlay展開もタイムオーバーの場合があるので、特に負けている・Runが止まっている側は早めにOFのプレーサイクルを回す必要がある。

※この試合のTOPはBALが33:38 TENが26:22

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面白かったら投げ銭的なやつを設定して、意識高い系のnoteにしあげました。



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