第99回全国高校サッカー選手権2回戦 山梨学院vs鹿島学園

山梨学院は1回戦で鳥取県代表の米子北を1対0で下し、4年ぶりとなる2回戦進出を決めた。

一方の鹿島学園は4年ぶり9回目の出場となる。
最高成績は87回大会のベスト8となる。
主なOBとして、鹿島アントラーズの上田選手や徳島ヴォルティスの西谷和希選手、栃木SCの西谷優希がいる。
1回戦は三重県代表の海星を1対0で下し、2回戦進出を決めた。

1.起点

スタメンはこちら。

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山梨学院は1回戦から板倉選手に代えて中根選手を起用。
板倉選手は負傷の影響から欠場となった。

一方の鹿島学園は1回戦から水野選手と松村選手に代えて大浦選手と押久保選手の起用となった。

1回戦と違い、落ち着いた入りを見せる山梨学院。
鹿島学園はビルドアップして前進をしたいが山梨学院のプレッシャーに思うように繋げない。
だが、エゼトベチク選手が前線で起点となることから山梨学院の一方的な展開とはならない。

最初に決定機を掴んだのは山梨学院。
中盤でボールの奪い合いから野田選手のスルーパスに久保選手が抜け出すもシュートは枠の外へ。
1回戦では米子北のハイプレスを前にやりたいプレーが出せなかった2トップだったが、立ち上がりいきなり見せ場を作った。

山梨学院は前線の久保選手がDFラインの背後やサイドへのランニングで起点になるのに対し、鹿島学園はエゼトベチク選手が足元で受けることで起点となる。
久保選手は動いて起点になることから鹿島学園としては捉え所が無く起点を作れる。
一方のエゼトベチク選手は足元で起点となり、収まると周りを使うのも上手なため攻撃が活性化する。
だが、山梨学院はエゼトベチク選手にほとんど良い形を作らせない。
見逃してはいけないのは一瀬選手の存在である。
空中戦、対人の強さ、背後のボールへの対応と守備者としての能力は高校サッカー界でもトップクラスであろう。
また、足元の技術も高くフィード能力も高い選手であり、甲府U15出身の選手でもあるため甲府サポーターの方には覚えておいて欲しい選手である。

前半は山梨学院のやりたい形が多く出たが、得点を取るまでは至らず。

2.守護神

後半立ち上がり鹿島学園にビッグチャンス。
ロングスローからのこぼれ球をペナルティエリア内でエゼトベチク選手がヒールキックからシュートを狙う。
山梨学院のDFに当たりコースが変わるも熊倉選手が反応し防いだ。

49分に切り札を投入する。
久保選手と野田選手に代えて茂木選手と笹沼選手を投入する。
久保選手と野田選手のハードワークが前半山梨学院が優位に試合を進める要因となった。
この交代で試合の流れが変わる。

直後に鹿島学園にまたも決定機。
右サイドからのクロスにエゼトベチク選手がヘディング。
クロスバーに当たりゴールとはならなかった。
能力は非常に高い選手だが、元々はボランチの選手でFWに転向したのは昨年の夏とのこと。
卒業後は大学へ進学するとのことだが、大学でFWとして経験を積むことができればJリーグの舞台でも活躍する姿を見ることができる逸材である。


鹿島学園の流れで進む後半だが試合を動かしたのは山梨学院。

1回戦に比べ、早めの切り札投入となったが茂木選手の起用が当たった。
得点を決めた廣澤選手は県大会の決勝でも得点を決めており、大舞台に強い選手である。
山梨に喜びを灯すゴールとなった。

試合後の山梨学院廣澤選手のコメントより。

『県予選の決勝でもこぼれ球を狙って決めていたし、『こぼれ球が絶対に来る』『何かが起きる』と(長谷川大)監督やコーチから言われている』

一方で廣澤選手の本人もコメントしているように持ち味は発揮し切れているとは言い難い。

試合後の廣澤選手のコメントより。

『自分のプレーの特長をまだ出せていない』

県予選決勝で左サイドを切り裂くドリブルを再三見せていたが、まだ本領を発揮できていない。
得点を決めたことで自分の特徴を出せるか。

55分には鹿島学園がクロスから決定機を作るもまたも熊倉選手が立ちはだかる。
右サイドから再三チャンスを作る鹿島学園だが、徐々に後ろからのビルドアップも増やしていく。
早めに切り札を投入し試合を動かした山梨学院だが、2トップの守備の強度が落ちたことから鹿島学園が押し込む展開となっていく。
一方で守備の強度は落ちたもののカウンターの切れ味は増した山梨学院。
鹿島学院が押し込み、山梨学院がカウンターで仕留めにかかる展開となる。

69分に鹿島学園は3人交代し、得点を奪いにいく。
渕、押久保、大浦に代えて山本、松村、鈴木を投入する。
流れが良かった中での交代は難しいところだが、一気に3人代え試合を動かしにいく。

71分に山梨学院は新井選手に代えて浦田選手を投入する。
直後に茂木選手が浦田選手とのコンビで決定後を迎えるも櫻井選手が防ぐ。

79分に山梨学院は廣澤選手に代えて佐藤選手を投入する。
終盤には1回戦同様アクシデントでの選手交代を余儀なくされる。
石川選手の負傷により岩岡選手が投入される。
1回戦からセカンドボールの回収や安定したゲームメイクで貢献していただけに残念な交代となった。

2試合連続で1対0での勝利となった。

試合後の山梨学院長谷川監督のコメントより。

『魂を感じるような守備。非常に頑張った。相手の平均身長は今大会でも一番大きいと思う。セットプレーのポジショニングや、そこにいくまでの準備で主導権を握りたいと思って臨んだので、何回かクリーンなシュートもあったが、よく防いでくれた』

鹿島学園は後方からのビルドアップで前進を図るチームである一方、高さも兼ね備えたチーム。
高さを活かし、押し込まれる時間も作られたが一瀬選手を中心に跳ね返し、決定的なシュートを許しても熊倉選手が文字通り守護神として君臨した。

3.あとがき

2試合連続で強豪を破っての3回戦進出となった。
局面だけを捉えてみても熊倉選手のセービングや一瀬選手とエゼトベチク選手のマッチアップと見ごたえも多かった一戦となった。
一方で3回戦は連戦となるため、またも怪我人が出てしまったことは不安要素となる。
次の相手は静岡代表の藤枝明誠。
富士山ダービーとなる。
連戦で大変な日程だが、3回戦も勝利し一日でも長く高校サッカーを続けてもらいたい。

鹿島学園は後方からのビルドアップも安定しており、山梨学院の守備に合わせて攻撃に変化をつけられる柔軟性も持った素晴らしいチーム。
サッカーを続けるのかはわからないが個性的な選手もおり、次の舞台でも活躍を期待できる選手は多くいるチームであった。

MOM 熊倉匠
またも山梨学院のゴールに鍵をかけた。
熊倉選手で無ければ大量失点を許していたかもしれないほど、鹿島学園の攻撃は迫力もあり、ゴールに迫っていた。
だが、山梨学院のゴール前には熊倉選手が立ちはだかった。
2戦続けて圧巻のパフォーマンスを見せ、高校サッカー界でもトップクラスの実力を示した。

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