第99回全国高校サッカー選手権準々決勝 山梨学院vs昌平

3回戦で静岡県代表の藤枝明誠をPK戦で下し、準々決勝を進出を決めた山梨学院。
3試合で1失点と堅守を武器に勝ち上がってきた。

準々決勝の相手は埼玉県代表の昌平。
2大会連続4回目の出場となる。
最高成績は前回大会のベスト8となる。
主なOBとしては福岡の松本泰志選手や北九州の針谷岳晃選手などがいる。
今大会屈指の注目チームだが、Jリーグ内定選手が4人、年代別代表選手も4人いるタレント軍団である。

今年度はプリンスリーグ関東で対戦し、昌平が1対0で勝利を挙げている。

1.ハードワーク

スタメンはこちら。

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山梨学院は2人変更となった。
3回戦で途中出場となった新井選手と欠場した石川選手がスタメンに復帰。

昌平は3回戦と同様のスタメンとなった。

立ち上がりからボールを繋いで攻め込む昌平と野田選手を中心としたカウンターに活路を見出す山梨学院。

試合は開始早々に動く。

左サイドで野田選手が得たFKを野田選手が前線に入れ込む。
ファーサイドで一瀬選手が競り勝ち、折り返すと久保選手が合わせ山梨学院が先制する。
野田選手、久保選手と毎試合途中交代することが定番となっているが、勝ち進む毎に2人のプレーは向上してきている。
笹沼選手、茂木選手でスイッチを入れる役割を担ってきたが、先発の2人で得点を取り先制に成功する。

試合後の山梨学院久保選手のコメントより。

『セットプレー練習であの形は練習していた。(一瀬が)折り返してくれるのを信じて、セカンドボールに素早く反応するために落ちてくるところを予測して入った』
『練習試合とかでは点を取るけど、公式戦では全然点が入らなくて、(監督から)『お前を信じているから次決めろ』と言われた。次は絶対にチームの勝利のために点を決めるぞと思っていた』

狙い通りのセットプレーからの得点。
茂木選手が出場停止の中得点というFWとして最高の結果で信頼してくれた長谷川監督に恩返しする得点となった。

試合後の昌平須藤選手のコメントより。

『セットプレーが強いのは分かっていたけど、それで前半に失点してしまった展開はつらかった』

対する昌平も持ち前のテクニックを活かし、攻め込んでいく。
山梨学院はCBの一瀬選手、GKの熊倉選手の安定した守備で守っていく。
特に機能していたのは右サイドの守備。
山梨学院は守備時に2トップが盾関係となり、久保選手が唐木選手のパスコースを、野田選手がボランチの選手のパスコースを切り右サイドへ誘導する。

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狙いは小澤選手からのパスをインターセプトすること。
小川選手へのパスは石川選手が、須藤選手へのパスは鈴木選手が狙う。
奪えなくても新井選手がプレスバックし、自由を与えない。
鹿島アントラーズ内定の須藤選手、U18日本代表の小澤選手と昌平の武器となる左サイドへ誘導し野田選手、新井選手、石川選手のハードワークで前進を阻む。

試合後の山梨学院長谷川監督のコメントより。

『非常にテクニカルなチームが対戦相手なので、相手の良さと自分たちの良さをどう組み合わせてサッカーをしていくのかを非常に分析して臨んだ』

だが、昌平も徐々に慣れていきプレッシャーを回避しだす。
20分には小川選手、柴選手と繋ぎ荒井選手がハーフライン付近で石川選手を交わし、ドリブルから小見選手が抜け出す形を作るも一瀬選手が最後まで小見選手を離さず決定的なシュートまでは至らない。
スピードや裏抜けが得意な新潟内定の小見選手に対し、スピードでも一瀬選手は負けなかった。
ここまで高さ、強さ、足元の上手さで活躍を見せていたが、スピードも見せた。

試合後の昌平藤島監督のコメントより。

『前半はセカンドボールを拾えず、自分たちの良さが出せなかった。』

33分にはゴール前でセカンドボールの勝負に勝った石川選手が新井選手からのパスに抜け出しシュートを放つも決めきれず。

ハードワークを武器にセカンドボールを回収し、試合を優位に進める山梨学院。
一方で昌平はテクニックを武器にボールを繋いで攻め込むもセカンドボールの争いに勝てないこともあり、厚みのある攻撃とはならない。

2.矛か盾か

前半同様に山梨学院がハイプレスを仕掛け、昌平がテクニックとパスワークで剥がしていく。
サイドで高い位置を取れるようになってきたことから攻撃に厚みが出てきた昌平だが、山梨学院も決定的な場面は与えない。

徐々に山梨学院の足が止まっていく中、山梨学院はサイドでは突破されても中央を締めてゴールは許さない守りを見せる。

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試合後の山梨学院熊倉選手のコメントより。

『相手は足元のうまい選手が多く、中央を締めて堅い守備をしようと話していた。』

昌平はパスワーク、ドリブルで打開を図るが山梨学院は抜かれても次の選手がすぐにカバーリングで2人目、3人目と続き守備が破綻しない。

山梨学院としては守備の強度を落とさないで試合を進めたいところ。
そこで63分には足を吊った廣澤選手に代えて山口選手を投入する。
持ち味のドリブル突破を見せる場面はあまり作れなかったが、攻守にハードワークしサイドに蓋をした。

まずは同点に追いつきたい昌平は66分に選手交代を行う。
平原選手に代えて篠田大輝選手を投入する。
1回戦で劇的な同点ゴールを挙げた篠田大輝選手に期待をかける。

直後に昌平にアクシデントが発生してしまう。
唐木選手が競り合った着地の際に足首を捻ってしまい負傷交代となり、代わって八木選手が投入される。

試合後の昌平須藤選手のコメントより。

『6年間一緒にやってきて、オフのときも常に一緒にいた。あいつが(負傷交代で)いなくなったときはあいつの分も頑張ろうと思ったし、もっとあいつとサッカーがしたかった』

唐木選手の思いを背負ってプレーする須藤選手にビッグチャンスが訪れる。
ペナルティエリア内で崩し、須藤選手がシュートを放つも熊倉選手が立ちはだかる。

試合後の須藤選手のコメントより。

『決めたい、決めるしかないという思いで蹴ったけど、相手の熊倉もうまくて、その壁をはがせなかった。振り返るとすごく悔しい』

3回戦までは熊倉選手の活躍が目立ち勝ち上がってきた中で、この試合初めての見せ場となったが相変わらずの安定感を見せた。

73分には山梨学院が新井選手に代えて浦田選手を投入する。
3回戦で得点を挙げた選手でカウンター、前線からのプレッシャーで貢献したいところ。

75分には久保選手が足を吊り、常盤選手を投入する。
全国大会では初めての出場となるが、県大会の準決勝では得点も挙げている選手。

試合後の山梨学院久保選手のコメントより。

『センターバックの4番の選手(DF唐木晃)にプレスをかけて、そこからハメにいってボールを取ろうというのがあった。自分はしっかり4番の選手にアプローチして(パスコースを)制限するところを頑張った』

前半から山梨学院のファーストディフェンダーとして、走り続けた。
後半からはコメントにあるように唐木選手をプレスのファーストターゲットとした。
2回戦、3回戦でも守備面での貢献度は高かったが走り続けたことが報われる得点となった。
また、攻撃面でも身体を張り続けボールを収めカウンターの起点となった。

試合後の山梨学院長谷川監督のコメントより。

『後半押し込まれる展開となったが、非常に粘り強いコレクティブな守備、魂を感じるような守備ができた。今大会、チームの強みとなってできているので、今日も最後は体を張って良く守ってくれた。1-0だけど、非常に良い試合ができたと思う』

最後まで守備は破綻せず、昌平がボールを持ち攻め込む時間は多かったが、山梨学院が守備で試合をコントロールしきった試合となった。

3.あとがき

ナイスゲームであった。
お互いに特徴を出し合い、80分戦い抜いた一戦。
山梨学院の堅守がテクニカルな昌平攻撃陣をシャットアウトした。
山梨学院は圧倒的なタレントはいないが、試合毎にヒーローが出てくる選手層の厚さを誇り、優勝した88回大会以来の準決勝進出を決めた。
一方の昌平は2年連続でベスト8での敗退となった。
持ち前のテクニック、パスワークを全面に出しゴールに迫ったがこじ開けられなかった。
Jリーグ内定選手や年代別代表選手だけでなく、出場した選手皆能力が高く、下級生も多くいるチームであり、この先も注目度の高いチームとなるだろう。
卒業後も楽しみな選手も多くおり、活躍を期待したい。

MOM 石川隼人
3回戦は怪我のため欠場したが、怪我の影響は全く感じさせなかった。
谷口選手とのボランチコンビで幾度もピンチを未然に防いだ。
ピッチ上の至るところに石川選手が顔を出し続けた。
決定的なチャンスで得点は奪えなかったが、攻守共に存在感を発揮した。

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