妖怪キチントさん

春めき立つ季節、一般的な新生活とはもう少し先を差しますが、
1ヶ月ほど早く新生活を始めることになった私です。
婚約者だった人は配偶者となりました。
職場で真っ先に声をかけてくれたお姉様は
無理してない？私の友達はことごとく結婚したら頑張りすぎちゃって病むから心配で…
なんてことはない、例に漏れず頑張りすぎている。

一人暮らしの頃から、
定期的に「妖怪キチントさん」に脳みそを乗っ取られることがある。
この妖怪に取り憑かれると
明日の私のために、誰に怒られるわけでもないのに
あれもこれも、きちんとできないと気が済まなくなる。
痩せるために一駅歩き、買い物し、
手料理を作り、合間に洗い物
合間合間に気がついた所の掃除をし、
風呂から出たら丁寧な保湿
名前のつかない家事だって全て手を抜かない
どんなに疲れても、休憩を入れられない。
入れるタイミングがわからない。
やる家事に対して悪口を吐きながら
手を休めることができない。

一人暮らしでこれなのだ、結婚生活でしんどくならない訳がない。
案の定、この3週間ほど、妖怪キチントさんに脳みそを乗っ取られ、
加えて生活が自分だけのペースで進まないことに、
疲労困憊してしまった。

妖怪キチントさんと名付け、伝わるように説明をする。
この妖怪を追い出すためには、妖怪ダメットさんに魂を捧げる必要がある。
家事を放ってダラダラしたり、
1人で飲みに行くことが召喚魔法である。
優しいので、ダメットさん呼んでいいよと言ってくれる。
申し訳ない。1人飲みは私にとって大事らしい。
物語からエネルギーを摂取することも長らくできていない。

一緒にいたいし気持ちよく暮らして欲しい。
ただでさえアカペラで家を空けてしまう私は、
ダメットさんに心を委ねるのも勇気がいる。
いい塩梅を見つけるには、まだ少し時間がかかりそうだ。