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マキシマリスト宣言

マキシマリスト maximalist
最大限綱領派と訳される。社会主義陣営において要求のすべてを主張し,決して妥協しない一派をいう。
ブリタニカ国際大百科事典


 一個の怪物がインターネットを徘徊している。すなわちマキシマリストの怪物である。古いインターネットのあらゆる権力は、この怪物を退治するために、神聖な同盟を結んできた。Instagramerも天皇も、ひろゆきもメンタリストも、日本の電通も、アメリカのウォルト・ディズニー・カンパニーも。

 ミニマリスト、ノームコア、丁寧な暮らし、無印良品、それらのイデオロギーは、少しだけ裕福で貧乏な日本の生活を肯定することで、2010年代以後に条件付きの勝利を収めてきた。私服はユニクロが最強、スタバで人生を豊かに。そういったスタンスは、勝負から降りていること自体が強さであるがために、誰にも否定することができなかった。

 しかし、われわれはここに戦闘の開始を宣言する。この宣言は、「マキシマリスト宣言」と呼ばれる。当然、ミニマリストはダサく、間違っている。ユニクロやスタバでわたしたちは満足しない。これから世界は、家がグチャグチャでスマホがバキバキで毎日30分かけて服を選び風呂が嫌いでロングスリーパーで貯金のないわれわれの世界である。われわれはコストパフォーマンスという概念を破壊する。

 金がないのに本を買い、古着を買い、グチャグチャの部屋でYouTubeを見る。風呂でNetFlixを見て、ソシャゲをしながら食事を摂り、生活を情報で埋め尽くして、どうしようもないスクリーンタイムのiPhoneを握りしめて眠る。それがマキシマリストのスタイル。しかし、加速主義者とわれわれは注意深く区別されなくてはならない。また、われわれマキシマリストは、単に過剰性や装飾性を称揚するものでもない。

われわれは、われわれの生に対して「要求のすべてを主張」し、「決して妥協しない」ことを告げている。そのために結果的に、自分たちの生活スタイルや、趣味判断がミニマルになることすら否定しない。ただ、われわれは常に、われわれの生をマキシマムに生きようとする。

 マキシマリストはこれまで誰にもその名前を与えられていなかったが、いまやあらゆる人間が、心の奥底でそれを既に一個の勢力として認識していること。マキシマリストが全世界の面前に、その見解、その目的、その方向性を公然と表現し、われわれ自身の宣言をもって、インターネットのおとぎ話と、戦闘すべき時機が熟していること。

 この目的のために、日本のマキシマリストが、ごみだらけのひとりの部屋で、上の宣言を起草した。

(2023年1月24日)

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