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鯨尺(くじら じゃく)

前回から度々出てきている「尺(しゃく)」なんですが。

尺は昔の物差しに使われるもので、和裁を習い始めた頃、私は全く使う気なんかなかった。というか、それが何なのか知らなかった。

現在使われているのはメートル法で、日本での導入は 1885年(明治18年)らしい。1921年(大正10年)に、この尺を含めた昔の測定法は禁止されている。つまり現在では使用禁止令が出て100年以上経つ訳だ。

ところが、和裁はこの古い物差しを今でも使う。

佐古先生も使っていた。けらけらと笑ながら、政府の指示で教科書はメートル法で表記されてるんだけど、そんなの使ってる人は誰もいないわ。馴れればこっちの方が楽よと言う。何が楽なものか、とは思ったけれど、とりあえず仕組みを説明してもらう事になった。

この記事の写真にある物差し、真ん中の銀色が物差しがセンチで、右寄りの竹物差しが尺になる。

竹物差しの1番小さな目盛りが「一分(いちぶ)」
10分で「一寸(いっすん)」
10寸で「一尺(いっしゃく)」
10尺で「ー丈(いちじょう)」

つまり十進法。よかった、八進法とかじゃなくてと心底思った。丈のうえには確か引(ひき)があるけれど、和裁ではほぼ使わない。逆に分の下には厘(りん)があり、これはちょこちょこ使う。五厘がメートル法で約1.5ミリなんだけど、これを10年後くらいに、カナダでコスプレ衣装を作るアマプロの友人に説明したら驚かれた。詳細過ぎると。いや、慣れちゃうと、そんな気にならないよ…とその頃には思うようになっていた。

この、昔の物差し基準は鯨尺と言うそうだ。鯨尺で習うにしろ、メートル法でするにしろ、物差しは必要という事だった。普通の文房具店では売っていないので、最初は先生の物差しをお借りしつつ、道具はおいおい揃えていく事になった。佐古先生は、昔は誰もが和裁をしたのだから、実家の押入れにあるんじゃないかしらと言う。

母に訊ねたら、本当にあった。母方の祖母の持物の中から一本。父方の祖母の中から一本。私の世代で和裁をするのが私だけということで、その両方の物差しを今でも使っている。

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