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非エンジニアがChatGPTだけでレビューを感情分析してCSVにまとめる方法

株式会社VERSAROC が提供するAI関連情報マガジン。

今回は、市場リサーチやブランドイメージの調査に役立つ「感情分析」を、非エンジニアがChatGPTだけで行なってCSVで出力するまでできる方法を解説します。

必要なのは ChatGPT だけ。Custom Instructions と Code Interpreter という2つの機能を組み合わせて使います。機能の使い方をご存知の方は前半は読み飛ばしていただいて構いません。

メリットはもちろんデメリットまで正直に書いていますので、ぜひ最後までご覧ください。


Custom Instructionsの役割とメリット

Custom instructions とは、あなたが何者なのか、ChatGPTに何を求めているのかを設定する機能です。

Custom instructions を設定するとすべてのセッションに反映されるため、一度設定してしまえば、ChatGPT に演じてもらいたい役割や細かな指示を毎回指定する手間が省けます。

たとえば「私はブロガーです」「ベテラン編集者として、記事作成を手伝ってください。よりよい記事を作成するために私の入力する内容に対して助言をお願いします。」と入力しておけば、その後すべてのセッションでChatGPTが編集者として相談を受け付けてくれるようになります。

ChatGPTに編集者を演じてほしい場合

ChatGPT は、会話を続けているうちに段々と最初の方の指示を忘れていってしまうという弱点がありますが、Custom instructions に設定された内容は忘れずに実行してくれるのも大きなメリットです。

体感的には、2,000文字くらい経過するとChatGPTの記憶喪失が始まるため、2,000文字を越える長期的なやり取りをする場合には、Custom instructions が役立つでしょう。

Code Interpreter の役割とメリット

Code Interpreter は、ChatGPT がプログラムを実行したり、データのアップロードやダウンロードを可能にしたりする OpenAI公式のプラグインです。

プログラムのコード自体も ChatGPT が作ってくれるため、私のような非エンジニアでも実行可能なコードを書かせることができます。

実行可能なプログラムが Python に限られている、ファイルの保存期間が非常に短い、など課題も抱えていますが、プログラムやファイルをサクッといじりたい場合には便利な機能と言えるでしょう。

感情分析とは

感情分析を一言で表すと「人間の感情をAIが理解する技術」です。商品や店舗のテキストレビューを読み込んで、単語や文脈から「ポジティブ」「ネガティブ」「ニュートラル」などを分析します。

具体例として、街の中華料理屋の架空レビューを感情分析してみましょう。

チャーハンはおいしかったけれど、テーブルがベタついているように感じた。
店員が少ないのかオーダーは遅かったけれど、愛想はよかったので許せる範囲ではある。
また近くに寄ったら今度は五目そばを食べてみたい。

レビューの内容は、次のように感情分析できます。

チャーハンはおいしかった → ポジティブ

テーブルがベタついているように感じた。 → ネガティブ

店員が少ないのかオーダーは遅かったけれど、愛想はよかったので許せる範囲ではある。 → ニュートラル

また近くに寄ったら今度は五目そばを食べてみたい。 → ポジティブ

要素分解すると、ポジティブ、ネガティブ、ニュートラル、全ての意見を含みつつも、全体的にはポジティブな要素が多いことがわかります。

人間の感情はポジティブだけでもネガティブだけでもなく、両方を含みつつも全体の所感を持っていたりするため、ひとつひとつ分析するのは意外と時間がかかってしまうのです。そのため、AIをつかった感情分析が発展してきました。

ChatGPTの機能だけで感情分析してCSVにまとめる

ここまでに紹介した機能を使えば、感情分析してCSVにまとめるまでの工程をChatGPTのみで完結できてしまいます。

具体的な手順をチェックしていきましょう。

(1)Custom instructionsを設定する

まずは Custom instructions に、感情分析で出力してほしい項目を伝えましょう。以下の内容をそのままコピペするだけでOKです。

What would you like ChatGPT to know about you to provide better responses?
感情分析を依頼する人です

How would you like ChatGPT to respond?
入力されたユーザーの声に対して感情分析をお願いします。次の4つの項目を出力してください。

###感情分析4つの項目
総合評価:ユーザーの声を(不満・やや不満・どちらでもない・やや満足・満足)の5段階で評価してください。
ポジティブな意見:ユーザーの声からポジティブな意見を抜粋してください。ポジティブな意見が複数箇所ある場合は、箇条書きで列挙する形で出力してください。
ネガティブな意見:ユーザーの声からネガティブな意見を抜粋してください。ネガティブな意見が複数箇所ある場合は、箇条書きで列挙する形で出力してください。
競合に対する言及:ユーザーの声から、他サービスに関する内容を抜粋してください。

###出力のルール
セッションのはじめに「感情分析.csv」を作成し、すべての出力をcsvにまとめてください。
ユーザーの声の中に4つの項目に該当する内容が無ければ「 - 」で出力してください。

Custom instructions に入力

(2)Code Interpreter を使ったセッションを開始

Code Interpreter を使ったセッションを開始します。

Code Interpreter

チェックを忘れるとCSVでの出力ができませんのでご注意ください。

(3)感情分析したいテキストをプロンプトに投下

セッションが始まったら、感情分析したいテキストをひとつずつプロンプトに入力してください。あらかじめ Custom instructions を設定しているため、追記の細かい指示も必要ありません。

ユーザーの声からの感情分析を行います。以下に結果をまとめます。

###感情分析4つの項目総合評価:やや不満
ポジティブな意見:
チャーハンがおいしかった
店員の愛想が良かった
次に訪れた時には五目そばを試してみたいという期待感
ネガティブな意見:
テーブルがベタついていた
オーダーが遅かった
競合に対する言及: -


この情報をcsvファイルにまとめます。

Finished working

Show work

感情分析の結果をまとめたCSVファイルを作成しました。こちらからダウンロードしてください。

ひとつめのテキストを分析した時点で、以下のようにファイルが出力されます。

2つ目、3つ目とテキストを入力していけば同じファイルに分析結果が蓄積されるため非常に便利です。

本記事の感情分析の活用シーン

本記事で紹介したChatGPTを使った感情分析の活用シーンの例をご紹介します。

(1)ブランドイメージの調査

リサーチ会社を通さず低予算でブランドイメージを調査したい場合、今回ご紹介した感情分析は役立つでしょう。

広告やアンケートサイトなどを活用してユーザーの声を集めた後、ひとつひとつのレビューを人力で分析するのは本当に大変です。要素の分解や競合についての言及などはChatGPTに分析してもらうことをおすすめします。

(2)プロダクトのレビュー

β版などのプロダクトレビューは、その後の改善のためにとても重要な役割を持っています。開発を進めながらレビューを分析するのは、時間や人的リソースの振り分けが難しい問題になりがちです。

ChatGPTをつかった感情分析で不満点や要望を洗い出し、要約したうえで開発の優先順位をつけるなどの使い方が考えられます。

(3)市場調査

プロダクト開発前の市場調査でも、感情分析が役立ちます。顕在化していないユーザーのニーズを洗い出すために、いくつかの要素を定めて分析すれば、潜在的なニーズを掴める可能性があります。

本記事の感情分析法のメリット

本記事で紹介している感情分析は、リサーチャーの仕事を奪ってしまうほど完ぺきとは言えないものです。とはいえ、この方法ならではの圧倒的なメリットもあります。

最大限に活用するために、メリットを確認しておきましょう。

(1)非エンジニアでも実行できる

本記事で紹介している内容は、プログラミングをしていないため、非エンジニアでも簡単に実行できます。

つまり、マーケッターや経営者が一人で感情分析を進めることが可能となりました。

(2)ChatGPT PLUS のみで実行可能

感情分析などの複雑なタスクを実行しようとすれば、通常は複数のツールを組み合わせる必要があります。

今回ご紹介した方法なら、ChatGPTのみで全ての工程を完結できるため、新たなツールの使い方を覚えたり、使用料を払ったりする必要がありません。

(3)タスクの最中に指示がブレない

ChatGPTのデフォルトモードでは、タスクを進めているうちに初期の指示を忘れてしまったり、複数のタスクをごちゃ混ぜに実行したりといった問題が起こりやすいです。

今回の方法は Custom instructions を使用しているため、ChatGPTが指示を忘れてしまう心配がなく、連続してタスクを実行できます。

(4)CSV形式の出力

ChatGPTは支持すれば表で出力もしてくれるため、これまでもエクセルに転載する前提で出力をさせることはできました。しかしそれでも毎回コピペする必要があるため、転載の手間や操作ミスの可能性など課題もありました。

本記事の方法なら、Code Interpreter でCSVファイルを作りそこに結果を追記していくため、コピペの工程は不要になります。

本記事の感情分析のデメリット

本記事でご紹介した感情分析も完ぺきではありません。いくつかの課題はどうしても残っていますので、ここで正直に告白します。

(1)データの保存期間が短い

Code Interpreter にはデータの保存期限があり、その期間は数時間程度と非常に短いです。

Code Interpreter のデータ期限切れ

極端に言えば、感情分析を行なっている最中に別の緊急タスクが発生した場合、タスクを終わらせて戻ってきた頃にはデータが消えているなんてことも考えられます。

ほかにも、GPT4の使用回数上限に到達した場合、制限が解除した頃にはデータが消えていることも。

CSVは定期的にダウンロードし、必要に応じて最新のデータをアップロードしながら追記していく必要があります。

(2)箇条書きの扱いが難しい

ChatGPTは賢く、複数の要素を箇条書き形式で出力してくれますが、CSVの仕様として箇条書きの形式で保存する方法がありません。

コロン(:)で区切るなどの方法もありますが、CSVを読み込む際にそれが箇条書きを表していることを読み取れるよう設定する必要があります。

(3)カスタマイズに限界がある

本記事の方法の優秀な点として、Custom instructions の設定を変更すれば、ポジティブやネガティブ意外にも、特定のキーワードに関する情報を抽出することができます。

しかし、ChatGPTにも得意不得意があり、特定の年齢のユーザレビューだけを抽出したり、アソートしたりといったカスタマイズは従来のプログラミングの方が精度高く実現してくれます。

ChatGPT上で完結させるというコンセプトで作られた方法では、カスタマイズの幅に限界があるのは事実です。

デメリットである課題を解決する方法

(1)データの保存期間が短い
(2)箇条書きの扱いが難しい
(3)カスタマイズに限界がある

これらの課題は、本記事の方法が「ChatGPT内で感情分析を完結させる」という点を重視しているからこその課題だといえます。

自社独自の感情分析ツールを設計するなら、ChatGPTの得意とする部分をうまく活用しながら、苦手なポイントを補うプログラムを組むことも可能です。

非エンジニアが低予算で高精度の感情分析をするなら、本記事の内容が役立つことは間違いありませんが、もっと精度の高い分析が必要になった際は最適なシステムを実現しますので、ぜひ株式会社VERSAROCへお問い合わせください。

株式会社VERSAROC
ライター/プロンプトエンジニア
小橋川 遥(コバシガワ ハルカ)
haruka_kobashigawa@versaroc.co.jp




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