"相対な夢"制作メイキング兼備忘録
2024年6月26日に投稿した「相対な夢【ゆめにっき】」について、制作時に考えたことなどを残しておこうと思います。いつものように技術的に役立つ情報はありません。
①主題の決定と構想・準備
本作はフリーゲーム「ゆめにっき」の公開20周年を記念して制作したものになります。
いままで毎年のように公開記念日にお祝い動画を制作し続けていましたが、今回20周年という大台をお祝いするにふさわしい作品をどういうものにするか考えた結果、今一度窓付きとポニ子の関係性について考え直してみることにしました。
窓付きとポニ子の関係性については、これまで何回か映像作品にしたことがあります。それくらいこの二人の関係はゆめにっき内で非常に特別であり、かつ異質なものであると思っています。
ポニ子との出会い。そしてウボアへの豹変は、ゆめにっきで最も強烈なドッキリポイントとして有名であり、ゲームを代表する場面として知られています。実況動画でも一番の見せ場として扱われることが多い場所ですが、じっくり考えてみると、場所・キャラクター・状況いずれもゆめにっきの世界観においてかなり不思議であり異質なステージであることが読み取れます。
全体的に冷たく・暗い世界が多いゆめにっきにおいて、ポニ子がいるステージ(通称「浅瀬」)は暖色が使われていて暖かく、明るいという数少ない場所です。また水の中に入ることもこのステージ固有の行動であり、他の世界で登場する水辺は、用水路や沼など暗くよどんだ色をしたものがほとんどです。そのような水辺に対しネガティブな世界観がほとんどを占めるゆめにっきにおいて、唯一の例外ともいえるのがこの浅瀬です。だからこそ、ここに何かしら特別な意味があるのではないかと考察がされています。
ポニ子がいる部屋も同様にポップで明るい色使いとファンシーな家具がならび、無機質で暗い色使いの窓付きの部屋とまるで異なる印象を受けます。音楽も優しく穏やかで、これほどまでに安心感を与えてくれる場所である一方で、ポニ子自身は窓付きに対して全くの無反応。目をそらしているかのような目つきのまま、まるで窓付きなんて存在を認めないかのように動き回る。そして電気を消すことによる豹変。
徹底的なまでに窓付きの対比という存在を表現し、一瞬にしてその二面性をさらけ出す。ドッキリポイントとして見るだけではもったいない、ここにいたる過程と演出の妙が丁寧に描かれています。だからこそこの場所に惹かれ、ポニ子が窓付きにおけるどういう人なのか。彼女は何者なのか。明るい舞台装置だからこそ際立つ彼女のもう一つの顔とは何か。それが知りたいし考えたくなる。
これだけで長文のnoteが書けるくらい語りたいことがたくさんあります。それほどまでに「浅瀬」と「ポニ子」は魅力的な存在なのです。
言葉が無いからいかようにも読み取れる関係性。20年経っても衰えることないゆめにっきの魅力が詰められた場所でもあります。
原点に振り返るという意味でも、この二人の関係をテーマにしたいなという思いがあり制作を開始しました。
②制作過程
本作は手書きがメインであり映像的にあまり凝った作りはしていません。ただ、ポニ子とは切っても切り離せない浅瀬の表現については手書きをすることが困難であったため、AfterEffectsのエフェクト処理で水面っぽいものを作ってあります。
実際の水面がこのようであるかは別として、風のない凪の状態で温かみのある水面っぽく表現できたのではないかと思います。
人物の手書きは3Dで窓付き・ポニ子に似たモデルを作成しポージングさせ、それをトレスしています。絵は苦手なので仕方ない。この3Dソフトはあるゲームのモデリングを利用しています。わかる人はわかるんじゃないかな…
拙作「夢十夜」「ゆめと泡沫」「また夢を見る」でも同じモデル使用しています。
先述の通り、僕は窓付きとポニ子は相反する、対になるような存在だと考えています。なので彼女たちを登場させるとしたら左右別の方向を見ていたり、対峙し向き合っている配置にしたいと考えていました。横に並び同じ方向を向いているような描写は避けています。他人とも友達とも言えない緊張感のある関係。直接的な表現は避けつつ、そういう感じに試行錯誤しました。
③おわりに
何はともあれ、ゆめにっきが公開20年という大きな節目をお祝いすることができて本当に幸運に思います。6/22からは2種類のゆめにっきポップアップストアが開催されるなど、いままでにない盛り上がりを感じる界隈ですが、今後も静かに応援できたらなと思います。
ご視聴ありがとうございました。