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思い出

去年の今頃の話。

たまには敢えて地元の観光地を見てみようと仙台城跡を訪れた。
一見したところ他に観光客はいないようだったが、一人、伊達政宗の騎馬像を乗り回している人がいた。
逆光(※)でよく見えないけど、同い年くらいに見える。

※伊達政宗の騎馬像は結構高い位置にあるので逆光のときは見えづらい

あまり関わりたくなかったので足早に通り過ぎようとすると、その人が話しかけてきた。

「そこの者、拙者とマイクロフォンを挟んで天下を覆さぬか!!!(クソデカ声)」

いや、マイクロフォンって(笑)

私は「それはよくわかんないですけど、漫才だったらいいですよ。」と返した。

すると、その人は「あー、それな、それだわ。」
と言ってきた。

これが、ハイスクールマンザイ(※)2019に出場した相方との出会いだ。

※『ハイスクールマンザイ』は、2009年から行われている「高校生お笑いNo.1」を決めるイベントである。通称は「H-1甲子園」。

そのままの流れで仙台城跡最寄りのファミレスに入り、コンビ名を決めた。

「ぐり&ぐら」
「お野菜絶対残さないズ」
「マイクロフォン」
などたくさんの候補があったが、

「春の粧(はるのよそおい)」

に決まった。結成した時期の時候の挨拶に春粧という言葉があったからだ。
もし梅雨にコンビを組んでいたなら、コンビ名は「不快指数が高まる今日この頃」になっていたかもしれない。うげー。

こうして、私たちのハイスクールマンザイが始まった。

まずは、5〜7月に毎月動画審査の予選があり、2分のネタを提出しなければならない。
どこかの月で通過すれば地方の準決勝に進むことができるのだ。

互いにネタを作るのは初めてだったが、手探りで作ったネタを送り合い、実際に公園とかでネタ合わせもして、予選に提出する1本を絞り込んだ。

そのネタというのが、
オカンが好きな朝食を忘れてしまい、どんな特徴を言っていたのか聞いて思い出そうとするネタだ。

題して『フルーツグラノーラ』

なかなかいいものができた!(満面の笑みでピース)
提出する用の動画を公園で録画すると、オーディエンスの鳩たちも大爆笑でパンくず(※)を吹き出していた。

※何を食べてるのかはよくわかっていません!おいしくはないけど、あるから食べてるって感じですかね〜(笑) 3歳/オス

そんな鳩の様子は初めて見たが、なかなかに汚いものだ。

汚い鳩の話はさておき、私たちは5月の予選で一発で合格することができた。
合格メールにはプロ作家さんからのコメントが載せられていて、とても長い猫の写真まで添付されていた。
ながねこ。
ラッキー☆(満面の笑みでピース)

地方の準決勝は8月。イオンの特設ステージで、お客さんの前で3分のネタをする。なんと吉本芸人のMCまで来てくれて、私たちの地区はかまいたちさんだった(これはホントのやつ)!!
準決勝を通過できれば、なんばグランド花月の舞台が待っている。こういうの、なんていうんだっけ!そうだ!あれ(※)だ!

※夢いっぱい

準決勝のためにネタを用意したあとは、衣装の準備だ。
え?どんなネタを用意したのかって?
最中じゃないです。それは普通に私のnoteを遡ってほしい。普通に。

記事の写真を見てわかる通り、衣装のコンセプトは、シルバニアファミリー(左)と夜(右)。
他の出場者は制服が多かった中で、なかなかに良い衣装だったと思う。

実は、ワンポイントのお揃いもある。写真ではわからないが、腹巻きだ。

あの、"消しゴム付き鉛筆の、鉛筆部分と消しゴム部分のつなぎの金属のやつ"柄のお揃いの腹巻きを百均で買った。
信じられないかもしれないが、在庫の中で一番お洒落だったのだ。
これでお腹が冷えない最☆強のコンビになった!(凛々しい顔でピース)

そして迎えた本番。

北海道•東北地区は全部で15組くらいいた気がする。
今まで生活してきて漫才をする高校生なんか見たことがなかったから、よくもまぁこんなに潜伏していたなというのが率直な感想だ。

私たちの出番は最後から3番目だったので、待っている間も緊張していた。ギリギリまでネタ合わせをしたり、私はじっとしていられずに外に出て何本かダッシュしたり。
「漫才はスポーツ」ってこういうことかぁ〜。うんうん。なるほどね。あ~完全に理解した。

出番直前になり、袖に集められる。
袖からかまいたちさんのMCを聞くのは変な感じがして、今まで味わったことのない種類の緊張に襲われた。

それでも私は相方の緊張を解こうと、あばれる君が桑田真澄のモノマネをするときの顔をやってあげた。

相方は「あ、そういうの大丈夫なんで」
と言った。

出囃子が鳴り、飛び出るタイミングまでの間、コンビ結成からの4ヶ月のことを思い出そうとしたが、いや、それにしてもマイクロフォンって(笑)ねぇ(笑)

なんてことを考えていたので、「どーもー!」って飛び出るところを「oh no!」と言いながら出てしまった。

それに動転した相方が
「聞いてほしい話があるんですよ」
と言わなければいけないところを、
「香港のデモについてどう思う?」
と言ってしまったものだから、さぁ大変。

時事問題に反応した池上彰が客席から上がってきてしまい、急遽アドリブでトリオ漫才をするはめになった。

結果は、準決勝敗退。
地区代表として決勝に進んだコンビは、北海道でラジオ番組を持っていてステージ経験も豊富なガチの高校生芸人だった。すげー!

その後、私は受験勉強があるため今年のハイスクールマンザイ出場は断念してコンビを解散し、相方は池上彰とコンビで活動することになった。
それだとハイスクールマンザイに応募できないということを教えてあげるタイミングを逃し続けて今に至る。



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