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【ラ・トラヴィアータ 誕生の秘密/その④】

下記の手紙は、1852年1月21日に、当時パリにいたヴェルディからヴェルディの養父アントーニオ・バレッツィに宛てられた手紙です。

当時正式な結婚をしないまま“同棲”していたかつてのソプラノ歌手ジュゼッピーナ・ストレッポーニについて書かれている部分で、《ラ・トラヴィアータ》の第2幕を彷彿とさせる内容ですが、さらにヴェルディはこの手紙を書いた直後の2月、パリのヴォードヴィル劇場で上演されたアレクサンドル・デュマ・フィスの《椿の花の貴婦人》を観劇しました。

この時のことについて、ヴェルディとも関わりの深いある音楽雑誌は、「そのテーマは彼の心を打ち、劇中のヒロインが喜び、恥ずかしさ、悔い改めを通してもがくのを見て、彼は竪琴の弦が振動するのを感じたのである。」と書きました。

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 私の家には自由で自立した一人の女性が住んでいて、私と同じように孤独な生活を好み、あらゆる必要なものを満たすのに十分な財産を持っています。
 私そして彼女のどちらも私たちの行動について話す必要もありませんが、私たちの間にどんな関係があるのか、誰が知っているのでしょうか?どのような事であるか?どのような関係なのか?私は彼女に対してどのような権利を持っていて、彼女は私に対してどのような権利を持っているのか?誰が彼女が私の妻かどうか知っているのでしょうか?そしてどのような特別な理由があり、公にしないという考え方がどのようなものであるのか、一体誰が知っているというのでしょうか?誰がそのことが良いことなのか悪いことなのか知っているのでしょうか?なぜそれも良いことではないのでしょうか?…例えそれが悪いことだったとしても、誰に私達を呪う権利があるでしょうか?
 しかし私の家では、彼女は私と同じように、むしろ私よりも大きな敬意を払われているでしょうし、それはどんな肩書の人間であっても、誰一人として欠かすことは許されないものなのです。
 彼女の振舞い、彼女の精神、そして彼女が他人に対して決して欠かすことのない配慮から、彼女には尊敬されるべき権利があると私は申し上げるでしょう。」

(「Giulio Einaudi editore『Giuseppe Verdi “LETTERE”』/2012年、トリノ」より)
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