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【ラ・トラヴィアータ 誕生の秘密/その①】

いよいよ「ラ・トラヴィアータ 誕生の秘密」の出版が近づいてきました!

 本書はヴェルディの書いた書簡や楽譜、初演のフェニーチェ劇場に残された様々な一次資料等を基に、《ラ・トラヴィアータ》の誕生の歴史を詳細に記した日本で初めての書籍となります。
 本書の出版に先駆けて、本日より《ラ・トラヴィアータ》に関するそれらの資料の中から、特に興味深い資料を公開していきます。
 これらの資料を通して、少しでも皆様に《ラ・トラヴィアータ》の誕生の歴史に興味を持って頂けましたら幸いです。
 是非情報のシェアもよろしくお願いいたします!

「ラ・トラヴィアータ 誕生の秘密」詳細・お申し込みはこちら
https://www.verdi-project-japan.com/pubblicazione-traviata/


 下記の手紙は、ヴェルディがトラヴィアータの3回目の公演を終えヴェネツィアを発った3月10日に、《ラ・トラヴィアータ》の初演でジェルモン役を歌ったフェリーチェ・ヴァレージが、ヴェルディやリコルディ社とライヴァル関係にあったルッカ社に宛て送った書簡で、この手紙の中でヴァレージは、自身の〝弁護〟を依頼しました。
 ヴァレージは、《マクベス》や《リゴレット》の初演においてもそのタイトルロール役を創唱した歌手で、聴衆からも大変人気が高かったことが、下記の手紙からも伺えますが、今回の《ラ・トラヴィアータ》の初演で、ヴァレージに一体何があったのでしょうか?


「ヴェネツィアでの短い滞在中に見せてくれた親切に乗じていますが、ヴェルディのオペラ、トラヴィアータについての情報を提供するにあたり、ヴェルディの崇拝者をも激怒させたヴェネツィアのガゼッタ紙の無礼な記事から私を弁護して下さるようお願いします。
 あなたのためにここに立ち会った真のミラノ人を証人として、彼らと共に数日後にミラノで話をすることができます。彼らはトラヴィアータで私がどう歌ったか、そして声が出ていたかどうかをあなたに教えてくれるでしょうし、最も強力な証拠は、3回目の公演がグラツィアーニの病気のために中断され、海賊に置き換えられた時、私は多くの称賛を受けたのです。
 トラヴィアータの音楽的な良さを判断するために自分自身をたてるつもりはありませんが、ヴェルディは彼の自由にできる芸術家の才能を利用する方法を知らなかったということをはっきりと強調しておきます。
 サルヴィーニ夫人の全てのパートの中で、彼女に良く合っているのはカヴァティーナだけです。グラツィアーニにとっては、少しあるいは何もありません。私にとってはアリアのアダージョです。
 そしてこのことは、ヴェルディがあのように成功したマクベスとリゴレットの巨大な部分を私のために既に作ってくれていたこと、そして開演前にマエストロが私をとても喜んでくれていたということが知られていたため、私は良い扱いを受けるだろうと期待したヴェネツィアの聴衆をうんざりさせたのです。」
(「Franco Abbiati著『Giuseppe Verdi』、全4巻/1959年/ミラノ」より)

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