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【ラ・トラヴィアータ 誕生の秘密/その⑥】

下記手紙は、ヴェルディがようやくサルヴィーニ=ドナテッリを受け入れる意向を示したものの、依然として《ラ・トラヴィアータ》を完成させるかどうかについては懸念が残されていたため、フェニーチェ劇場の理事会が、本来ならヴェルディの新作オペラのリハーサルが開始される日であった1853年2月8日に臨時の理事会を開催し、様々な問題に対処するためにフェニーチェ劇場の秘書官ブレンナをヴェルディのもとに派遣することを決定し、ブレンナにその任務を託すことを伝える手紙の一部です。

「フェニーチェ大劇場の理事会秘書官、グリエルモ・ブレンナ氏へ。
 理事会は、マエストロ・ヴェルディ氏が約束し、皆が切に待ち望んでいた新しいオペラに関する決定について、残酷なまでの不確実性に遭遇しているため、肯定的な情報を得るために、そして様々な困難を解決するために、あなたにできるだけ早く上述のマエストロの所に赴く任務を託します。
 本日詩人ピアーヴェ氏から届いた手紙は、疑惑を断ち切るどころか、むしろそれを増長させるものである。しかしながら、書簡によるやりとりでは十分な迅速さを確保できないため、あなたがマエストロ・ヴェルディのもとへ赴く必要があります。
 ともかくサルヴィーニ=ドナテッリの代わりに別の歌手を起用して欲しいという希望を撤回したのは良いことで、これは、彼が引き受けた義務の遵守と正義のために怠ることができなかったのであろう。
 しかしマエストロは、請負業者に与えられた職務を中断する可能性についてほのめかしたこと、彼のオペラの結果に大いなる疑問をはっきりと示したこと、そしてさらには、現在契約されている歌手達は、フェニーチェ劇場にふさわしくないということを述べていることは非常に残念である。彼は今年の春に契約書に署名するまで、歌手達の名前や資質を知らなかったのだろうか?良い判事であり、彼らの評価に熟知しているはずの彼が、なぜ今になってこのような意見を述べるのか?
 一方で幸先よくシーズンをスタートさせていて、フェニーチェのような大劇場に値する人々に劣らない存在である彼ら全てのアーティストを罵るために、悪意があり客観性のない他人の告げ口、そして非常に不確かなオペラにおける、しかも急遽用意された応急処置のオペラにおける不幸な結果を必要としたのではないか?
 ヴェルディは、自分のインスピレーションや、彼のアーティストのために正しく書くというよく知られた能力をあまり信用しておらず、彼の才能や最近の勝利が彼に保証するような成功を―もしそうであるのなら―全体としてあまり優れていない我々の歌手達で得ることを恐れているのだろうか?
 さあ、卓越したマエストロがこのような誤った考えを取らないように、そして彼の友人や崇拝者の間に入っても恐れることがないように努めて下さい。

理事 マルツァーリ、ベンヴェヌーティ、トルニエッリ

(「Marcello Conati著『Verdi e La Fenice』/1983年」より)

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