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【音と向き合う vol.3】 谷川俊太郎さんの織り成す音02

初めて谷川俊太郎さんの詩に出会った小学校を卒業してから10年の月日が経った。
「音と向き合う②」でも少し触れたように中学でも高校でも谷川俊太郎さんの詩と共に生きた瞬間はあった。しかし、実は自分で谷川さんの詩を探して手に取ったのは、今日が初めてだった。
      


オンラインでの日本の音楽に関する授業を終えた後に、ふと思い立って近くの古本屋を調べた。珈琲屋さんと併設されているお店が近くにあったので、そこに行こうと思い身支度を整えた。外はパラパラと雨が降っていたが、レインコートを着てタオルを持参すれば大丈夫。自転車を走らせた。あいにくお目当の店はお休みだったが、素敵な店主のいらっしゃる紅茶屋さんを見つけ、美味しいお紅茶とシフォンケーキを頂いたあとに、ふと思い立って図書館へ寄った。
今履修している授業と、日本語教育に関連する本棚をチェックしておこうと思い、司書さんに尋ねると丁寧に教えてくれた。
教えてもらった日本語教育関連の本棚の近くにいくと、その棚の裏側に谷川俊太郎さん関連の本がたくさんおいてあることに気付いた。
思わず10冊くらい抱えて席に持っていった。閉館まであと2時間。明日までの音楽の課題の参考になりそうな内容と日本語教育関連の本を一通りメモして、さっき集めてきた谷川俊太郎さん関連の本たちのためにスペースを作った。

最初に手に取った1冊に詰まった谷川さんの言葉を読んで、色んな感情が混ざり合った。今までに会った色んな人や、色んな出来事を思い出した。言えなかった言葉や言ってしまった言葉、落ち込んでいるときにかけてもらった言葉や今だから受け入れられる言葉など、色んな言葉を思い出して、気付けば涙で文字が見えなくなった。鼻をすすったら思いのほか響いてしまったし、タオルだけじゃ抑えきれなくなってきたからトイレに駆け込んだ。
谷川俊太郎さんの詩を授業で群読するのも、合唱コンクールで歌うのも大好きだったけど、1人で読むのも、こんなに好きだった。
昔から変わらず大好きなものに再会できて、すごく、嬉しかった。閉館時間までのタイムリミットはあと10分。詩のタイトルと本のタイトルをメモして、私は図書館をあとにした。
もう雨はあがっていて、薄手の長袖シャツじゃ少し肌寒いくらいだったが、そのときの気分にはぴったりだった。私は今日見つけた温かいものたちを大事に心にしまってのんびり自転車をこいで家路についた。

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