楽曲「ウェルカムカラー」公開によせて
ミュージシャンのベントラーカオルと申します。
'18年4月1日に文化放送 超!A&G+のラジオ番組「阿澄佳奈のキミまち!」ゲスト出演時に放送して頂いた「架空のひだまりスケッチ新作OP(オープニング)楽曲」である「ウェルカムカラー」を公開しました。
「阿澄佳奈のキミまち!」(以下「キミまち」)とは、声優・阿澄佳奈さんがパーソナリティを務めるアニソンリクエスト番組で、「ひだまりスケッチ」とは阿澄さんが主演を務めるアニメーション作品としては1, 2を争うであろう人気作であり、2007年から現在までにTVシリーズ第4期までが放送されています。
前述の通り'18年4月1日、僕はこの「キミまち」のゲストコーナーに出演し、未発表のオリジナル楽曲「ウェルカムカラー」(作詞作曲編曲歌唱演奏:ベントラーカオル)を放送して頂きました。
この「ウェルカムカラー」という楽曲、もともとは'14年、あるきっかけでアニメソングを標榜したいくつかのデモを制作することになりその時生まれたうちの一曲でした。
はじめは芳文社「まんがタイムきらら」系のコミック誌の連載作品をアニメ化したもの(「ひだまりスケッチ」はその代表格。ほかに「かなめも」「ご注文はうさぎですか?」など無限に例あり)を好む自身の傾向から「俺が思う『きらら系』ソング」として作り始めましたが、具体的な作品を思い浮かべた方がモチベーションも完成度も上がるだろうと軽い気持ちでつけた仮タイトルが「ひだまり5期」。自分の好きなアニメ作品の一つである「ひだまりスケッチ」シリーズの、その更なる続編が作られOP楽曲を自分が担当したならば・・・という荒唐無稽な、ある種のノイローゼのような仮定のもとに制作しました。
その結果、僕にとってシリーズ中最も思い入れの強い第3期「ひだまりスケッチ☆☆☆(ほしみっつ)」のOP楽曲「できるかなって☆☆☆(ほしみっつ)」の影響を強く受けたアレンジの楽曲が誕生しました。当時は歌詞も正式なタイトルもなく、作った後はたまになんとなく「そういえばひだまりの架空のOPとか作ったな〜病気だったな〜あの時の俺は」と思い出す程度でした。
時は流れて'16年夏。僕が主にキーボーディスト(たまにギタリストでたまにソングライター)として在籍するバンド・Koochewsen(クーチューセンと読みます)がミニアルバムをリリースし、プロモーションの一環として文化放送でシンガー・やなぎなぎさんがパーソナリティを務める「やなぎなぎのLISTEN?2-3」にゲスト出演したのですが、その時お世話になった放送作家さんこそがその後キミまちを担当することになるミラッキ(大村綾人)さんでした。
(因みにこの時プロモーションしていたKoochewsen(当時「クウチュウ戦」表記)のミニアルバム「超能力セレナーデ」に収録されている、僕が作詞作曲を担当した「魔法が解ける」もキミまちで掛けて頂きました。)
このミラッキさんが実はKoochewsenのディレクター渡邊文武の過去の仕事(サニーデイ・サービス、ゆらゆら帝国など)のファンだったこともあり、その後もKoochewsenのプロモーションについて水面下でやり取りが続いていたらしいのですが、「ベントラーカオルがアニメファンであり、架空のアニソンを作っている」という話にミラッキさんが食いついてくれたらしく、「何かアニメ絡みの番組でベントラーカオルを呼びKoochewsenのプロモーションに繋げる」というアイデアが出た……と聞いています。記憶が確かならば。
その後、'17年4月に「キミまち」がスタートするのですが、その1, 2週間前、Koochewsenのライブ当日ディレクター渡邊と機材車で二人きりになった際、
「カオル君、阿澄佳奈さんっていう声優さん知ってる?」
「え?(勿論)知ってますけど……」
という会話が発生。「ミラッキさんが新たに担当する、阿澄佳奈さんがパーソナリティを務めるアニソンリクエスト番組がこの春始まる。そこでいつかカオル君をゲストに呼び、過去に作っていた架空のアニソンを放送してもらおうという話が出ている」とのこと。
あまりに現実離れした内容にその時は何を言っているのか全く分かりませんでしたが、その後深夜アニメのことは専門外である渡邊Dとの会話の中で「阿澄さんといえばその代表作にひだまりスケッチというアニメがある。僕はこれの架空の続編のOP楽曲を勝手に作ったことがある」という話をしたところ、「じゃあ放送してもらうのはその曲で決まりだね」ということになってしまい、その時から時間を見つけてはアレンジと録音をブラッシュアップし続けました。
そして'18年2月、渡邊Dからのメッセージ「キミまち、遂にオファー来ました!」
読んだ瞬間震えだす両腕。上がる心拍数。本当に大変なことになってしまった。ゲストに呼びたいという話を1年近く前から聞いてはいても、いざ決まるともうわけがわからない。
公式発表があるまでは人に話しても遂に発狂したと思われるだけだろうと知り合いのアニメファン達にも相談出来ず。
データを完成させ、「ウェルカムカラー」とタイトルを付ける(その意味については後述)。ミラッキさんとも何件か直接やり取りをして打ち合わせを進め、あっという間にその日が来る。
普段はよく酒を飲んで過ごしているが、この日はクリーンな状態で臨みたかったため4日ほど前から断酒。前日はKoochewsenの企画ライブがあったにも関わらず打ち上げでもノンアルコールで過ごす。
当日。キミまちは朝11:00から始まる。ゲストのスタジオ入り時間は12:00。早起きして正座し精神を統一する。渡邊Dと落ち合い車に乗り込みカーラジオのチャンネルを文化放送に合わせる。キミまちが始まっている。この日のリクエストテーマは「アニソンじゃないけどそれっぽい曲」。友人達からも次々にメッセージが届く。精神の焦点がぼやけてくる。車が浜松町に着く。文化放送に入る。スタッフの皆様にご挨拶し台本をもらい軽い打ち合わせが行われる。約5メートル?先、防音扉二つ挟んだ向こう側に「あの」阿澄佳奈さんがいる。かつて味わったことのない緊張。誰に頼まれたわけでもないのに勝手に作った架空のひだまり続編OPを、主人公役の声優であるその人にこれから目の前で聴いてもらう。まだ全然わけがわからない。時間が来る。防音扉を一つ開け、コントロールルームのスタッフの方々にご挨拶する。さらにもう一枚の防音扉を開ける。
その後は、放送を聴いて頂いた皆様のご存知の通りでした(聴き逃した方々には申し訳ないですが放送中のことに関してはまだまだ思い出して冷静に語れる状態ではないので割愛)。一点だけ記しておくと「ウェルカムカラー」はひだまり主演声優たる阿澄佳奈さんから直々に「これひだまりの曲だ!」という最大の賛辞を頂くことができ、過去味わった多くのモヤモヤが報われたような気がしました。
スタジオを出てすぐ路肩に車を停めてもらい、文化放送ビル1階のローソンでビールを買う。車に戻り即開封し飲む。それまでに味わったことのない、またこれから先も味わうことがあるかどうか疑わしいほどの美味さ。
この日もライブがあったので会場近くの駐車場へ行くと、偶然にも友人の音楽家でアニメファン仲間でもあるAD再騰二三夫(エーデイーさいとうふみお)に会う。お互い無言で駆け寄り抱擁、のち乾杯。
会場入り時間まで車内で休む。ふとTwitterで阿澄さんの以下のツイートを目にし、涙を流す。
ライブが終わる。出番が最後だったのでゆっくり機材を片付ける。誰もいないフロアでその日一日を思い出しまた泣く。
………………………
今日までの数ヶ月間、公開するかどうか、また公開するのであればその方法など迷いに迷い、悩みに悩みました。本来ならラジオ放送直後にその勢いのままバーンと公開してしまうべきだったのかも知れません。
そうしなかったというかその準備を全くしていなかった理由の第一に、放送直前まではこの楽曲にそれほどの反響を期待していなかったから、というのがあります。
(当時実際にどのような反響があったか、Twitterで2018年4月1日の「#kimimachi ひだまり」等のワードを含むツイートを探すと分かって頂けると思います。そして当時放送を聴いて下さった皆様、改めて本当にありがとうございました。)
また、ラジオ放送の二日後にはKoochewsenにとって初の海外ライブツアーのため中国に飛ばなければならなかったドタバタなどが重なり・・・などなどしているうちに機会を逃してしまいました。
あの放送からそれなりに時間が経った今、やっとこの楽曲との向き合い方も整理されて来ました。
今後制作されるであろうソロ名義の新しいアルバムに収録することも考えましたが、コンセプト的に普段自分が歌い演奏する為に作る楽曲の世界観と共存させる上手なやり方が見つけられず、このように単体での公開としました。
因みにソロとしてはこんな楽曲をやっていたりします。
去年は久々にアルバムをリリースしました。
また、ボーカルトラックについて。「ウェルカムカラー」で聴ける歌声は僕自身が歌った声を無理矢理に変調させたものです。従って音質には明らかに難があります。
公開にあたって、誰か女性のシンガーの方に本歌をお願いするという考えもよぎりましたが、「ひだまりスケッチ」の実際のキャストの皆様に歌って頂くという奇跡中の奇跡でもない限りどんなに自然にその音域で歌える方の力を借りたところで「ひだまり」OPのヴィジョンに近づくことは叶わない。それならば自分の声の無理矢理な変調という「情熱の暴走」をそのままドキュメンタリーとして公開した方がいちファンアートとして伝わるものは大きいだろうと判断しました。
余談ですが(もはや説明が面倒過ぎるので皆さんが「ひだまりスケッチ」を知っているという前提で書きます)この「ウェルカムカラー」、ゆの、宮子、乃莉、なずなの4人が茉里 a.k.a フェス太を歓迎し歌うという想定で歌詞と歌い分けを考えています(だから「ウェルカム」)。歌詞はyoutubeとsoundcloudそれぞれの詳細欄に記載しています。歌い分けは聴いて自由に想像してみて下さい。
あまりにも思うことが多すぎて、また放送当日を思い出したら色々な感情が溢れ出してしまい長々と雑に書いてしまいましたが、「ウェルカムカラー」お楽しみ頂けると幸いです。
最後に、「キミまち」パーソナリティ阿澄佳奈さん、当日の隔週アシスタント中倉隆道さん、放送作家ミラッキさん、文化放送の皆様、応援してくれた友人諸兄、「ウェルカムカラー」の原型を作るきっかけをくれた元V社のK氏、そしてあの日の放送を「目撃」して下さった皆様、本当にありがとうございました。
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