既判力

最高裁判例を整理。

【大原則】

確定判決の既判力は、「主文に包含するもの」、すなわち「訴訟物として主張された法律関係の存否に関する判断の結論」そのものについて及ぶだけで、その前提たるにすぎないものは、大前提たる法規の解釈、適用はもちろん、小前提たる法律事実に関する認定、その他一切の間接判断中にとどまるものは、たとえそれが法律関係の存否に関するものであっても既判力を有するものではない(最判S30.12.1民集9-13-1903ほか複数)。

【当てはめ】

① 賃借権に基づき土地の引渡しを求める別訴につき、これを認容する給付判決が確定しても、その既判力は基本たる賃貸借の存否内容に及ばない。
② 所有権に基づき土地の所有権移転登記手続を求める別件訴えにつき、仮にこれを認容する確定判決が確定しても、その既判力は基本たる所有権の存否に及ばないから、後訴である本件訴えのうち所有権の確認を求める請求に関する部分は、前訴である別件訴えと重複して提起された訴えとして旧民訴法231条の規定に違反するものと解することはできない。
③ 別件訴訟における請求の原因が、仮に、Xの本件建物に対する所有権に基づいてYに対し本件建物の明渡し並びに賃料及び賃料相当損害金を請求するものであったとしても、当該別件訴訟における訴訟物は、単に所有権に基づく家屋明渡請求権並びに賃料請求権及び賃料相当損害金請求権にすぎず、別件訴訟の確定判決の既判力は当該訴訟物についてのみ生ずるにすぎないのであって、別件訴訟の確定判決がXに本件建物の所有権が帰属しない旨を判断していても、当該判断は単なる理由中の判断であって訴訟物として主張された法律関係の存否に関してなされた判断でないことは明らかであるから、その所有権の存否の前記判断について既判力を生ずることはない。

一方、既判力に抵触する場合について。

① 所有権確認請求訴訟において請求棄却の判決が確定したときは、原告が”同訴訟の事実審口頭弁論終結の時点において”目的物の所有権を有していない旨の判断につき既判力が生じるから、原告が”右時点以前に生じた”所有権の一部たる共有持分の取得原因事実を後の訴訟において主張することは、右確定判決の既判力に抵触するものと解される。
② 売買契約による所有権の移転を請求原因とする所有権確認訴訟が係属した場合に、当事者が右売買契約の詐欺による取消権を行使することができたのにこれを行使しないで事実審の口頭弁論が終結され、右売買契約による所有権の移転を認める請求認容の判決があり同判決が確定したときは、もはやその後の訴訟において右取消権を行使して右売買契約により移転した所有権の存否を争うことは許されなくなるものと解するのが相当である。

他方、既判力に抵触しない場合について。

① 賃料増減額確認請求訴訟の確定判決の既判力は,原告が特定の期間の賃料額について確認を求めていると認められる特段の事情のない限り,前提である賃料増減請求の効果が生じた時点の賃料額に係る判断について生ずると解するのが相当である。(本件については特段の事情はないから、)前訴判決の既判力は、基準時1及び基準時2の各賃料額に係る判断について生じているにすぎないから、本件訴訟において本件賃料増額請求により基準時3において本件賃料が増額された旨を主張することは、前訴判決の既判力に抵触するものではない。
② 反対債権たる代金請求権は、当該訴訟における訴訟物とならず、したがって、これが引換給付判決の主文に掲記せられて居る場合においても、その存在及び数額について既判力を生ずる余地はない。

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