記事一覧
最一判R5.7.20について
去るR5.7.20、最高裁第一小法廷において、「無期契約労働者と有期契約労働者との間で基本給の金額が異なるという労働条件の相違の一部が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとした原審の判断に違法がある」という事例判決がなされた。
この判決の解説自体は、労働法に造詣の深い先生方にお任せとして、分野に拘泥しない、より横断的な検討をしてみる。
固定資産税に係る登録価格が違法となる場合
最高裁判例について整理。
最二判H25.7.12が集大成か。
1.登録価格>客観的な交換価値→違法嚆矢は、最一判H15.6.26である。当該事案は、平成5年1月1日から同6年1月1日までに30%超の価格の下落があった時代の話である。
結論は、以下のとおり、原審判断(=第1審判決の結論を是認し、控訴棄却とした判断)を是認している。
これに関連する最高裁の判例が、幾つかある。
(1) 最二判
東京地判R4.11.30の理解
婚姻制度に関する民法第4編第2章及び戸籍法の諸規定(本件諸規定)が、婚姻を「夫」と「妻」の間のもの、すなわち異性間のものとして定めており、同性間の婚姻を認めていないことの憲法適合性が争われた訴訟で、東京地判R4.11.30(池原桃子裁判長)は、「憲法24条2項に違反する状態にある」が、「同性間の婚姻を認めていない本件諸規定が憲法24条2項に違反すると断ずることはできない」と結論付けた。
この判決
訴求債権主張額説vs訴求債権認容額説?
おそらく実務家からすると、間違えようのない問題。
出典は、勅使川原和彦『読解民事訴訟法』とのこと。
読解民訴を見たところ、「上記の見解は明確に否定」されているわけではなく、400万円の不存在に既判力が生じるという見解を明確に「通説」として紹介している。
一方、当の勅使川原先生は、法学教室において、ご自身の見解はそうではないと主張される。
法学教室421号には、上記の例で400万円(訴求債権と
人権制約に関する憲法判例の整理
広く人権の制約に関する憲法判例(最高裁判例)を整理する。
今回の整理の着眼点は、「制限が必要とされる程度と、制限される自由の内容及び性質、これに加えられる具体的制限の態様及び程度等を較量して決せられるべき」などという一般則を打ち出している判例。
1.最大判S45.9.16(未決拘禁者の喫煙禁止)これがおそらく嚆矢。
【問題提起】
【規範の導出】
最高裁でしばしば出てくる「必要(な限度)」
養育費分担義務の根拠
現行法の条文は、以下のとおり。
手続法上の相互関係について。
未成熟子の養育費のみを請求する手続については、
①父母が婚姻中の場合
②父母の離婚訴訟の手続中の場合
③父母が離婚している場合及び父母が婚姻していない場合
とがある。
②について
最判H1.12.11は、 裁判所は、離婚請求を認容するに際し、親権者の指定とは別に子の監護者の指定をしない場合であっても、申立により、監護費用の支払を
最判R4.1.18について
基本的に最高裁判決が出るとそれを前提に実務が動くし、なかなか学者の反対意見もみられないんだが、ちょっとどうかと思う判決(判示)がないわけではない。
ということで、たまたま目についた最判R4.1.18(民集76-1-1)について。
お題は、「不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金を民法405条の適用又は類推適用により元本に組み入れることの可否」。
最高裁第三小法廷の判示は、以下のとおり。
性同一性障害特例法の合憲判断(まとめ)
「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(性同一性障害特例法)の5要件の憲法適合性については、これまでに小法廷で弥縫的に合憲判断が積み重ねられてきたわけだが、今般、ついに最高裁が大法廷を開くこととなったようである。
大法廷審理に先立ち、これまでの小法廷の決定を整理してみた(いずれも裁判所が性別変更を認めないという判断の当否が正に問題となっているので、審判事件であり、最高裁は特別抗告審)
有責配偶者からの離婚請求(信義則違反)
最高裁の3つの判決が整合しているのか、というか、そもそも最大判S62.9.2(調査官は門口正人氏)はちゃんと理解されているのだろうか、というお話。
1.最大判S62.9.2まず、判例変更をしてまで打ち立てた規範について。
非常に理知的である。
この判決が判示しているのは、
(1) 5号所定の事由による離婚請求がその事由につき専ら責任のある一方の当事者(以下「有責配偶者」という。)からされた場
違法だけど過失はないよ判決について
近時目につく、「(客観的には)違法といわざるを得ないが、対象公務員において職務上の注意義務を怠った(過失がある)とまではいえないから、国賠請求は棄却する」という判断について。
こちらの事件について、判決が公開されました(→こちら)。
違法性を認めた点については果断な判断といえるものの、注意義務違反を否定した部分についてはあまりにもお粗末といわざるを得ないと思います。
まず、裁判所が立てた規範
憲法の答案作成上の留意点(その2)
「その1」の続き。
千葉勝美元最高裁判事の成田新法事件の調査官解説が必読に過ぎるので、まとめてみる。
1.成田新法事件(最大判H4.7.1)について
まず、成田新法事件(最大判H4.7.1)についてみる。
この事件では、
①集会の自由(憲法21条1項)との関係
②居住の自由(憲法22条1項)との関係
③財産権の保障(憲法29条1項)との関係
④法定手続(憲法31条)との関係
⑤令状主義(憲法
憲法の答案作成上の留意点(その1)
※以下は、試験問題としては憲法は好きだけど、基本書はろくに読んでいないし、細かな分析もしていないという立場からの無責任な一試論にすぎませんので、その点はご留意いただければと存じます。
1.平成28年の採点実感
さて、司法試験(予備試験を含む。)の問題の中で、最も事前対策としてのコストパフォーマンスが高いのは、憲法ではないかと思う。
なぜなら、圧倒的に「知識」の占める比重が少ない。
民法なんか
令和4年 予備試験 民事実務基礎(一部)
備忘を兼ねて、設問3(冒頭の言及は省略)をやってみる。
問題
1.提出された書証や両者の供述から認定することができる事実
①本件建物は、Yが賃借している物件であり、そのリフォームには賃貸人の承諾が必要であった。
②本件工事に関しては、いずれも令和4年2月2日付けの、X作成の見積書が2通存在する。1通(本件見積書①)は、見積金額が1000万円と記載されている。もう1通(本件見積書②)は、見積金