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読書記録『日没』桐野夏生 

本日は久々に小説を読んだので、その感想を書いていこうと思う。
なんと小説をしっかり読了したのは今年初。(遅すぎな)


なお、私にとっての読書は、本を読んだだけでは終わらず、きちんと感想を書いて、SNSに投稿するところまでがセットだ。

なんなら、感想を書く時間を作るために読書しているようなものである。(文章書くのが好きなんだろうな)

まぁそんなことは置いておいて、本題の読書記録を綴っていこうと思う。

小説に興味ない方もいらっしゃるかもしれないが、「これがALVAが読んだ本なのね」と思っていただけたら幸い。
それでは、あらすじからどうぞ。
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隣に写っているモグラのことはあまりお気になさらず笑

『日没』
小説家・マッツ夢井のもとに届いた一通の手紙。
それは「文化文芸倫理向上委員会」と名乗る政府組織からの召喚状だった。
出頭先に向かった彼女は、断崖に建つ海辺の療養所へと収容される。
「社会に適応した小説」を書けと命ずる所長。
終わりの見えない軟禁の悪夢。「更生」との孤独な闘いとの行く末はーー。
足下に拡がるディストピアを描き日本を震撼させた衝撃作、待望の文庫化!
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結論から言って非常に面白く、燻っていた読書欲に再び火をつけるような一冊だった。

この本は、とある小説家が政府から意味のわからないいちゃもんをつけられ、謎の施設に収容されるところから始まる。

収容所の生活は、食事を定期的に抜かれたり、職員に歯向かうと反抗的態度として減点を課せられ収容日数が延びたりと、囚人以下のものであり、日本国憲法がフル無視の状態となっている。

しかし、あり得ないだろうこんな施設と思いつつも、不思議とリアリティがあり、次はどんな展開になるのかと、ページをめぐる手が止まらなくなる。


個人的に面白いと思ったポイントは二つある。
(以下若干のネタバレ入ります)


一つ目は、物語の後半以降、主人公のマッツが、職員に反抗的態度を取りすぎるあまり、統合失調症の診断を下されるシーンだ

マッツ自身は病気ではないと必死に訴えるが、職員らは「その態度が病気なのに」と全く聞く耳を持たない。

どれだけ足掻こうとも誰も味方はおらず、より過酷な治療を受けさせられる恐怖。

幻覚や妄想症状のある認知症の老人なども同じような気持ちなのだろうか?と想像した。



二つ目は、人間がいかに脆く、弱い存在であるか、ということだ

私たち人間には、当然思考があるし、感情があるし、プライドがある。

明確に、自分はこうなりたい!とか、この思考は絶対に受け入れられない!とかとか。

どの程度それを表に出すかは人によるが、主張したいことがあれば主張するし、納得いかないことには必死で抵抗する。

しかし、それらは毎日健康で、身の安全が保証されているからこそできることだと、この本を読んで改めて感じた。

主人公のマッツは、我が強く、作家である誇りがエベレストのように高い。納得いかないことにはとことん反抗するタイプだ。
(たぶんNT型で間違いないと思う)

しかし、そんなマッツでも食事を減らされ空腹状態にさせられたり、暴力や怪しい薬の服薬をちらつかされたら、途端に弱気になってしまう。

そしてそれらが長期間に渡り、いつ終わるのかわからない状況となると、次第に思考力は低下し、憎たらしい職員たちに歯向かうことができなくなる。

「先程までの威勢はどうしたよ」とばかりに挑発する職員の胸糞の悪さはもちろんのこと、それと連動するように徐々に衰弱していくマッツの様子に、強く人間の生物としての限界を思い知らされた。


やはり身の安全と健康に優るものはない。



最後にこれは本編ではないが、巻末の解説を読んで、改めて昔からの名著は読んでおく必要があるな、と感じた。

というのも、その解説文には、カミュの『ペスト』やフランクルの『夜と霧』などが引き合いに出され、それらの共通点や相違点について述べられていたからだ。
(『夜と霧』はギリギリ読んだことがあるが、その他は未読だった)

音楽や漫画でもそうだが、大体小説は過去の名著などを参考にしており、それらを知っているとより今の小説も楽しめるようになると思うからだ。

とはいえ、名著にも簡単なものから小難しそうなものまで色々あるし、何より一言で名著と言っても膨大な数があるので、どこまで読めるのだろう、という話ではあるのだが。


ということで以上で本日の読書記録終わりです。シリアスな話ながら、登場キャラも少なく、読みやすいので、興味ある方はぜひぜひ。
(Amazonのリンクとかやり方わからないから貼れないけど笑)

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