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【特別対談 #4】Vegetable Record × おふろcafé utatane 2021.08.07

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写真左上より時計回りにVegetable RecordのSyotaro HayashiとRyota Mikami、おふろcafé utataneの小川陽輔氏と野尻穂乃佳氏。

音楽レーベル「Vegetable Record」の共同代表兼アーティスト、Syotaro HayashiとRyota Mikamiによる「音楽を使った空間デザイン」「サイトスペシフィックミュージック」などについての特別対談。

第4回目は温浴施設「おふろcafé utatane」の館内音楽「Song for utatane」について、utataneの野尻穂乃佳さんと小川 陽輔さんとお話しました。

おふろcafe utatane(うたたね)
埼玉県大宮のおふろcafe utatane(うたたね)はお風呂のみならず、お食事ができるお洒落なカフェ、漫画が読み放題のラウンジ、仕事ができるワーキングスペース、宿泊設備等を完備した新しい温浴施設です。

Vegetable Record / ベジタブルレコード
「音楽の新しい楽しみ方・価値観を創る」をコンセプトに掲げた、音楽レーベル。林翔太郎と三上僚太により設立。楽曲を空間やプロダクトなどを構成する「自立したひとつの要素」として制作し、その時/場所/物でしか成り立たない音楽「サイトスペシフィック・ミュージック」を目指している。「ONSEN RYOKAN YUEN SHINJUKU」の館内音楽、専門店と共同制作した「音楽付きコーヒー豆」「音楽付きビール」など、他多数。ワークショップやライブ、インスタレーションも多数開催。

おふろcafé utataneについて

三上:今回は埼玉県にある、株式会社温泉道場グループが手がける、宿泊施設・おふろ・カフェが融合した新しいスタイルの温浴施設「おふろcafé utatane」の館内音楽「Song for utatane」について、utataneの野尻穂乃佳さんと小川陽輔さんとお話しします。本日はありがとうございます。

林:よろしくお願いいたします。

野尻 / 小川:よろしくお願いいたします。

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三上:それでは早速なんですけど、「おふろcafé utatane」についてご紹介いただけますでしょうか。

野尻:はい。「おふろcafé utatane」は北欧のカフェをイメージした、温浴宿泊施設です。私たちはお客さまに友達の家に遊びに来た感覚でリラックスしていただきたいと思い、お店作りをやっています。漫画を読んだり、ごろ寝をしたり、ボードゲームをしたり、自由に楽しんでいただけるのが、一番の魅力です。

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音楽を依頼した経緯について

林:ありがとうございます。音楽を依頼した経緯についても伺えますか?

野尻:背景というか、私が高円寺の小杉湯さんとすごく親交があって、小杉湯さんから「ベジタブルレコードさんがめちゃくちゃいいよ」というお話は日々の雑談の中でよく聞いていました。

その後に、ちょうど小杉湯さんの新しい館内音楽が初めてお披露目されるライブ(2019年6月、小杉湯の男湯と女湯で実施した「Song for 小杉湯」のリリースライブ)に行ったんですけど、それがとても楽しくて、衝撃を受けたんですね。

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今まで私が聴いていた音楽とすごく違った、っていうのももちろん新鮮さとしてあったんですけど、その空間に非日常的なものを作っているのを感じて・・・。言語化するのが難しいんですけど、毎日の何気ない暮らしの中にすごく非日常的なものをプラスしてくださるのがベジタブルレコードさんの音楽だな、という印象を私は受けました。

それで、そういったワクワク感を掘り起こすっていう体験を音楽として届けたいっていう気持ちをすごく感じたので、その当時私は(utataneの)新人で、なんの決裁権も無かったんですけど勝手に名刺をお渡しして笑、自分でお願いしたのがきっかけです。

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Song for utataneについて

三上:僕たちベジタブルレコードの三上と林以外にも、外部のミュージシャンと曲を作ったりすることがしばしばありまして、小杉湯の時(「Song for 小杉湯」)が最初かなと思うんですけど、マリンバ奏者の「野木青依」さんという方と初めて一緒に作ったんですね。僕らが作曲して、野木さんにマリンバを演奏したいただいて、それを僕らが再構築してひとつの曲を作る、という。

そういった経緯の楽曲を野尻さんにお聴きいただいて、「こういった雰囲気の楽曲を作って欲しい」「マリンバ以外の音があっても面白いかも」みたいなお話を貰いまして、それで「リラックス」「うたた寝」を楽曲コンセプトに、野木さんに弾いていただいたマリンバやグロッケンシュピールと、僕らで演奏したギター、ピアノなどを組み合わせて、丸みとか浮遊感、透明感がある子守唄のような音楽を作りました。

小杉湯ではコンセントなどの関係でお風呂の中では音楽は流せなかったのですが、utataneでは浴室内も各所で聴くことができますよね。

野尻:一番目立って聴こえるのが水風呂だと思うんですけど、お風呂の中でも聴こえます。

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三上:施設の中は2つのゾーンに分かれているんですよね。

野尻さん:そうですね。アクティヴゾーンというか、ラウンジの方は小川がとてもこだわって選曲した楽曲が流れていて、リラックスゾーンのゆったり過ごすところでは「Song for utatane」が流れています。

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楽曲の反響について

林:館内音楽として楽曲をご使用いただきいかがでしたか?

野尻:スタッフの皆んながみんなそんなに音楽好きとか詳しいわけはないんですけど、「このフワフワした感じはすごくutataneっぽいね」というのはすごく言って貰えました。

あと「サウナのととのいをイメージした欲しい」みたいなオファーもしていたと思うんですけど、「これがサウナの感じなのかな」とか、音楽を聴きながら語り合ったりするシーンもあって、それぞれの感じ方を色々話し合いながら、どんどん愛着が深まっていったっていう思い出があります。

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お客さまの反響については、これまでもutataneの中で色々なイベントをやったり、装飾を変えたりとかあるんですけど、直ぐに「これいいね」「あれよかったね」って言っていただけることはそんなに多くはないんですね。じわじわ効いてくるというか。なので、「Song for utatane」に変えた時も直ぐには無かったんですけど、半年くらい経った時に、浴室のスピーカーの不具合でたまたまその日だけ楽曲が流れていない時があって、お客さまから何人も「曲が流れてないよ」ってちょっとご意見をいただいたことがありまして、個人的にはびっくりしたというか・・・。

お客さまからお話を伺うと「いつも楽曲が流れている中でゆっくりお風呂に入って帰る、っていうのが当たり前の自分の日常になっているから、朝のスタートがいつもと違うところから始まってそわそわする」「ルーティンを乱された」みたいに仰っていて・・・、その時に「Song for utatane」っていう楽曲もutataneという空間を作ってる一部なんだな、っていうのをすごく感じて、あらためて私たちの仕事って来てくださる皆さまの日常の中の穏やかな時間を作っているというか、きっとそこの部分も「Song for utatane」で強調されているんだな、と。ひとつお客さまと私たちの間にある繋がりが、音楽を通して強まったことを実感できたエピソードがあります。

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林:常連さんというか、ご高齢の方々からいただいたってことなんですよね。

野尻:そうですね、その時は60〜70代くらいのお客さまです。他にもカルチャーが好きな20〜30代くらいのお客さまから帰り際に「音楽が変わりましたね、いいですね」って話しかけられたこともあります。

三上:僕らは普段、空間やプロダクトを、CDやレコードと同じような「音楽のフォーマット」のひとつと捉えて、音楽作品を空間に対してリリースする、みたいな考え方でやっているんですけど、デジタルリリースだけでは繋がれない人たちと繋がれた瞬間なのかな、っていうのがそのエピソードを聞いて思いました。空間で音楽を発表する魅力というか、醍醐味というか・・・。そのお話を以前少し伺った時も、僕は結構感動したんですけど笑

一同:笑

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林:utataneは僕らも時々遊びに伺うのですが、浴室の中で自分たちの制作している音楽が流れているので不思議な感覚になります笑 楽曲が流れることで、ちょっと空気感というか、浴室全体のトーンみたいなものが統一されている感じがして、よりリラックスできる、ユニークな体験になっているのかなと思います。

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野尻:私たちは「家のお風呂とは違う、大きなお風呂でのんびりするっていう非日常な体験」を商品として作っているので、その時間をより穏やかに感じられるように音楽が演出してくださっているなと思います。

あとは、最近サウナ好きな方も多くいらっしゃるんですけど、「サ活」っていうコミュニティサイトにも「水風呂で聴くマリンバの音色が最高」みたいなコメントをいただいていたりとか、サウナーの方から「あの曲はなんなの?」って聞かれたこともあります。水風呂にぷかぷか浮かびながら、マリンバがホワンホワンって反響するのが感覚的にとても心地いいみたいです。

林:たしかに水風呂上がったタイミングでリラックスしてる時が一番聴こえてきますもんね。そこで曲の存在を知る、みたいな方も多いのかなって先日入った時に思いました笑

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音楽×お風呂

林:それでは最後に、今後「音楽×お風呂」で実施してみたいことはありますか?

小川:いまお話にありました音楽が流れている浴室って異常空間というか笑

一同:笑

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小川:お気づきかと思いますけど、utataneの浴室ってめちゃくちゃ天井が高いじゃないですか。

三上:はい。

小川:あの空間って、本当に正統派なライブをやろうとしたらすごいPA泣かせというか、難しい環境だと思うんですけど笑

お風呂場の二次的利用というか、同じ音の反響が返ってこないお風呂場という環境でしかできない再生方法だったりとか、まだまだ音楽的にも面白い可能性は色々あるなとは思っています。僕個人的には、深夜の2時〜5時の清掃時間を貸し切って、ライブを開きたいなと笑

一同:笑

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小川:それこそマリンバとかでもいいですし、ギターとか。utataneの強みというか、自分たちで持っている空間っていうこともあるので、ある程度は自由に出来ますし。そういう部分をしっかり活かしたりとか。あとは当館の面白いところは施設の2〜3Fにホテルがあるんですね。そこの廊下部分でインスタレーションみたいな感じで、違う音楽を追加したりとか。そういったことを今後やりたいなと思っています。

三上:深夜の2時〜5時のライブはいいですね笑

小川:面白そうですねよね笑 あとは録音だけで使っていうのもいいと思いますし、贅沢に。

三上:たしかにあの残響空間は中々ないですもんね。

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三上:utataneの今後の情報はどちらを見ればいいですか?

小川:サウナネタとか少しニッチなネタを知りたい場合はTwitter、utataneの世界観が好きな方はInstagramをぜひフォローいただきたいです。Facebookでは基本的な情報を常に発信しています。でも、utataneを気に入った方は全部フォローいただけるのが一番いいと思います笑

三上:そうですね笑 utataneにもぜひお越しいただければと思います。それでは本日はありがとうございました。

林:ありがとうございました。

野尻 / 小川:ありがとうございました。

<2021年8月7日 ZOOMにて>

本インタビューは、Podcastでも配信中です。

撮影:工藤 葵/写真家
https://aoikudoaonisai.wordpress.com