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"ただ可愛い女"を演じられない呪い

声。わたしの声は例えるなら硬筆のような声だと自分では思っています。コンコンとしたような、少し擦れたような音。決して可愛くない声。淡々としていて硬い。少し上擦り。透明感がない。

顔。男顔というほど精悍ではなく、女顔といえるほど丸みはない。シンプルでつまらなさそうな顔をしていると思う。可愛くはない。

体型。平均身長、太り気味、手脚は短く6頭身。可愛くない。

こんなわたしは可愛い女性を演じた経験がありません。可愛い女性っていうか可愛いヒロイン。絵に描いたような王道のTHEヒロイン。元より演じたいと思ったこともないです。主演張る女優よりも、それを支える上手い脇役役者になりたいと思って演劇をやってきた女です。だからそういう透明感と初々しさが噴き出すようなヒロイン然とした女性は演じられなくても構わないと思ってました。あーちょっと嘘つきました。演じられるものなら演じたいです。純ヒロインをやってみたいです。女の子、女子、女!って感じの役を演じてみたい。

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TRY-SYSTEMという一人芝居マッチングサービスに登録しました。脚本家、演者が登録されていて、観劇者側からの視聴と投げ銭を募るサービスです。
そこで長らくお世話になっているまるかど企画の田島聖也くんの脚本をお借りして、シークという一人芝居を演じてTRY-SYSTEMから配信して頂いてます。

TRY-SYSTEM配信作品一覧
こちらの作品番号002ですね。
これから"キミ"と宅飲みをする一人の女性が、ソワソワと支度をして駅まで迎えに行くショートストーリーです。

この作品の主人公、わたしが演じた私、"可愛くない私"を演じてる可愛い女性なんだろうなと思ったんです。
たくさんいるじゃないですかそういう人。すごい悪く言うと、サバサバぶってて男友達多くて普段はお前さーとか言ってる癖に二人になるとちょっとなんか女出してきたり、でもそういう雰囲気になったらいやうちらそういう感じじゃないじゃん?とか笑ってかわしつつでも結局そういう感じになっちゃうタイプ。たくさんいますよね。たくさんいる。

"キミ"は年下の男の子。なんか澪とか飲むんでしょうね。作中で澪を用意してあるって台詞があるんですけど、たぶんきっと"キミ"が澪好きだから買っといてるんでしょう。そういうところで気遣いできる私を演出する女ですよ。

最初、"キミ"を女の子に設定しようかななんて思ったんです。なんかどうしてもラブストーリーのヒロイン然とした自分がうまくイメージ出来なくて、むしろ男っぽい振る舞いをして、女性同士の付き合いの解釈でもいけるかなって思ったり。幸い劇中"キミ"の性別に触れる発言はない。澪とか女の子好きだし。でもやめました。やめたというより、そうであることを前提に作るのではなくて捉えようによってはそう見えるかもね、みたくなるよう作ろうと思いました。そしてふとよぎったのです。わたしがわたしの想像したまま演じても見た人がきっとそれぞれ想像してくれるはずじゃないか。演劇の基本のキです。観客の想像力を信じる。そうだ。可愛い女を演じられないならそのまんま、可愛い女を演じられない女をやればいい。

そうしてやってみた結果、本当に可愛くない女が出来上がりました。
劇中にジェラピケの部屋着を用意するくだりがあるんですけど、もう嘘すぎてびっくりしました自分でも。ジェラピケなんか絶対着ないじゃん。

やっぱり可愛くない。声、顔、体型、全てが可愛くない。もうもはや呪いです。自分は可愛くないと、頭の中で決定づけられてしまっている。アイドルのような可愛らしさは手に入れることが出来ない。これから先もっと手に入れることが出来なくなる。ストレートな可愛い女を演じられることはついぞない。

それが少し寂しいというか、あー、だから売れないのもあるな。という結論まで引っ張ってくる。可愛い演技ができない。要はストレートな役が演じられない。脚本に書かれているままの可愛い印象をアウトプット出来ない。ひねた捉え方ひねた演じ方しか出来ない、ニーズが限られる、ファンも付きにくい応援する気が湧きづらい。

マイナスなことを書いている。でもそんな悲観しているわけではないのです。一人芝居いい感じにできたと自負がある。なかなか良い演じ方をしたと思ってる自分がいる。
可愛くなれない呪いにかかっているなりの、可愛くない芝居ができるっていうのもまたひとつの武器足りえるのではないか。とも。

というわけでTRY-SYSTEMで配信中の一人芝居、作品番号002
「シーク」よかったら見てみてやってください。

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