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今更だけどValhalla Super Massiveが凄い件について【無料ディレイ・リバーブプラグイン】

 どうも、ぼいどすです。去年リリース時にかなり騒がれたValhalla Super Massive、ダウンロードしてからSSDの肥やしになっていたのですが、今更になってさわり直してビックリしたので、記事化することにしました。インストールした当初、なんか扱いにくいなと思ってたのですが、マニュアルを見返して得られたものがあり、その部分にフォーカスをあてていきます。

Valhalla Supermassiveとは

 高品位なプラグインメーカとして知られるVALHALLA DSP。セールをしないメーカーで、「Everyday Black Friyday」として50USD均一。他のメーカーであればどう考えても150USD以上はする出音の品質で、すっきりしたGUIも特徴的ですね。
 Super Massiveはリリース当時、かなりあちこちで紹介され、「あのVALHALLAがフリーを出してきたぞ!」みたいな反応だったかと思います。このプラグインは有料製品との差別化のためか、じゃじゃ馬すぎて扱いにくい部分も多少あるものの、それでも出音の質感というか密度はすごいですね。
 Super Massiveはディレイなので、一瞬見た感じではディレイタイムやフィードバックなど一般的なパラメータが並びます。が、WARPというディレイにしては見慣れないツマミがあり(しかも大きい)、他にも予備知識無しに触っていくと想像とは全く違う出音となり、そこで迷子になりやすいと思います。配布元の説明をきちんと読むと、そうなることにも納得だったうえ、Super Massiveがとても面白いディレイであることがわかるので、自身の勉強もかねてまとめたいと思います。

最新版のすすめ・便利機能

 リリース当時に落としたままという人も結構いるのではないでしょうか?これを書いている現在は1.3.0となり、ディレイのアルゴリズム、このプラグインで言うMODEがいくつか追加されています。落としたものの結局あまり使ってないという人もぜひこの機会に更新しておきましょう。
 あと便利機能として、MIXと表記されたところをクリックすると、ミックス量を固定できます。この状態でプリセットを替えていくと、プリセットだけ使いたい人でも便利に探せます。
 シンセでよくあるパラメータをワンクリックで初期設定に戻せる機能が無いので、開いたばかりのDefault設定を名前をつけてユーザーエリアにでも保存しておくといいでしょう。ゼロから作り直すときに役立ちます。

リバーブっぽく使う

 初期設定の状態でWARP、DENSITYを最大にします。これだけでもう高品質リバーブが簡単に手に入ってしまいましたね。ここでプリディレイやリバーブタイムを調整したいと思っても、そのような項目は無いので出来ません。
 ですので、大雑把に作ったもので構わない、もしくはそんなに細かくいじりたくないという人にはすごく相性のいいものかもしれません。ある意味時短ツール。

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 ありがたいことに、フィルターはローパス、ハイパスがあります。リバーブタイムはいじれませんが、このへんを調整するとリバーブタイムではなく、距離感をある程度演出できそうではあります。ハイを削ってやるとより遠くから鳴っているように聞こえる、とかですね。
 プラグインによっては音楽ジャンルに合う・合わないありますが、このディレイならばジャンル問わず使っていけそうです。

最も重要で独特なパラメータ

それぞれの項目について取説からDeepLで翻訳したものを以下に。

Warp
DELAY設定に対するフィードバックディレイネットワークのディレイの長さに影響を与えます。単純なエコーから、共鳴したエコーやスミアしたリピート、豊かなリバーブまで、サウンドを変化させるのに使用できます。
フィードバック・ディレイ・ネットワーク内のディレイの長さを、DELAY設定値に対して変化させます。これにより、単純なエコーから共鳴エコー、スミアード・リピート、さらには豊かなリバーブまで、サウンドを変化させることができます。

WARP = 0%の場合、すべてのディレイはDELAYパラメータで設定された長さになります。WARPの値が0より大きくなると、フィードバック・ディレイ・ネットワークのディレイがどんどん広がっていきます(DELAYの設定よりも短くなります)。
WARPの値が5~15%の場合、音が減衰していくにつれて共振が下方にシフトしていく、奇妙な「ハーモニック・ディレイ」になります。
WARP値が20~50%の場合、最初のディレイが不鮮明になり、リピートが徐々に残響を増す「ディレイ・クラスター」になります。
WARPを50%以上に設定すると、より残響感のある音になります。

 WARPでディレイ成分がかなり変わるとのこと、どうりで普通のディレイのように扱えないわけですね。

Feedback
フィードバック・ディレイ・ネットワークのディレイ周辺のフィードバックの量をコントロールします。値を大きくすると、より長いディケイが得られます。いくつかのMODESでは、FEEDBACKの設定がサウンドの初期アタックタイムにも影響します(詳細はMODESのブログ記事をご覧ください)。

 この「詳細はMODESの~」が各モードの説明に該当。

Density
出力に含まれるエコーの数をコントロールします。DENSITY は、様々なディレイが互いにどのようにミックスされるかを変化させます。
DENSITY 値が 0% の場合は、ディレイが並列または直列に配置され、それ以上の混合は行われません。
DENSITY の値が 0%より大きいと、ディレイ間のミキシングが増加し、エコーの密度が高まります。これにより、左右のディレイ出力間のクロスフィードも増加します。
DENSITY が 100% の場合、すべてのディレイが完全にミックスされます。これは、より「従来型」のリバーブにお勧めです。

 リバーブとして使うならば100%がよいとのこと。

各モード紹介

Gemini
Supermassiveモードの中でも最も「オーソドックス」なモードです。アタックタイムが非常に早く、自然な指数関数的な減衰をします。DENSITYパラメーターを最大にし、WARPを50%以上に設定すると、Geminiから非常にスムーズなリバーブを得ることができます。DENSITYコントロールを下げると、リバーブは減衰していくにつれて密度が低くなり、点描画のような効果を得ることができます。
Hydra
このモードは、比較的速いアタックタイムと、非常に豊かで長い指数関数的なディケイを持っています。Hydraモードは、DENSITYパラメータに非常に敏感です。DENSITYが0%の状態では、Hydraはかなりシンプルなエコーのように聞こえます。DENSITYを上げていくと、エコーの密度が急速に高まり、複雑なリバーブ/エコー構造になります。モジュレーションはHydraでは非常に豊かなものになります。
Centaurus
アタックタイムが遅く、ディケイタイムが短く、残響に少し「サスティーン」があるモードです。Centaurusのアタック・タイムはFEEDBACKパラメータに連動しており、フィードバックの値が高いほどアタックは速く(ディケイは長く)なります。このゆっくりとしたアタックは、WARPの値を小さくすることで、ゆっくりとフェードイン/アウトするエコーを作り出すことができます。WARPの値を上げると、ゆっくりとフェードインし、しばらく空間に留まるようなリバーブになります。
Sagittarius
FEEDBACKの設定によっては、アタックタイムが非常に長いリバーブ/エコーになります。FEEDBACKの設定が70%以下の場合、Sagittariusはゆっくりとフェードインし、同じような時間をかけてフェードアウトしていきます。FEEDBACKを高くすると、より早くフェードインし、よりゆっくりと減衰していきます。射手座は、音の「質量」や「慣性」がかなりの程度あると見なすことができます。時間とともにフェードインするエコーや、WARP値の高い巨大な残響の塊を作るのに最適です。
Great Annihilator
Centaurusに似ていますが、より巨大なものです。スローなアタックとかなりのプリディレイ、そして超ロングディケイタイム。
Andromeda
Sagittariusモードの超巨大バージョン。非常にゆっくりとした攻撃で、かなりのプレディレイがあり、ディケイタイムは数千秒にも及ぶ。
Large Magellanic Cloud 
DENSITYをゼロに設定すると、非常に長い初期ディレイが得られ、ループディレイや巨大なリバーブが可能になるモードです。DENSITYコントロールにより、0%では非常にまばらなリバーブ、60%以上では濃厚でみずみずしいリバーブになります。Large Magellanic Cloudは、CentaurusとLyraモードの特大バージョンを掛け合わせたようなイメージです。
Triangulum
ルーパーとしても、巨大で豊かなリバーブとしても、また個々のリピートと全体のディケイタイムを独立してコントロールできるリピートディレイとしても機能するディレイモードです。Triangulum DENSITYコントロールを0%に設定すると、表示されているDELAY設定の8倍のエコーが繰り返されます。DENSITYを0%より大きくすると、ディレイの長さが短い場合は、長いエコーの空間を埋めるような拡散したエコーが発生します。
Lyra
よりコンパクトな天体。攻撃時間が早く、減衰時間が長く、エコー密度が非常に低い。DENSITYを最大にしても、Lyraは "リバーブ "領域よりも "エコー "領域に多くの時間を費やしています。これは、時間の経過とともに徐々に拡散していく空間的なエコーにはとても良いでしょう。
Capricorn
Lyraの拡大版。アタックタイムが早く、ディケイタイムが長く、エコーの密度は中程度です。点描画のようなリバーブや豊かなコーラス・エフェクトに便利です。
Cirrus Major
密度の低いリバーブ/エコーモードで、最初のエコーに不思議なパターンがあります。まばらなマルチタップディレイ、広々としたエコー、80年代の冷たいリバーブなどに最適です。
Cirrus Minor
Cirrus Minorに似ていますが、小さくて密度が低いです。奇妙な繰り返しのエコー、低い初期密度、リバーブの前の大きなプリディレイ。サイズを大きく、密度を小さくして、時間とともにエコーが変化していきます。また、密度を上げてサイズを下げると、80年代半ばのデジタル・ルーム・リバーブが完成します。

 各MODEには天体にちなんだ名前をつけられてるのが詩的ですね。

出音を試す

 動画にまとめてみました。すべてのMODEを試せていないですが、DTM解説系としては約15分と長いものになってしまいましたが、これまでの説明と、ボーカルにかけてみる例など。

 全然関係ないですが、ぼい子のアバター衣装と色がカブってますねw

最後に

 動作が軽いので、トラックにとりあえず挿してガンガン使うだとか、特徴的なディレイ成分を生かして効果音を作るなど、マルチな用途に使えそうです。こんな素晴らしいプラグインをフリーで公開してくれて感謝しかありません。同社の有料プラグインはShimmerしか持ってないですが、VintageとかDelayも欲しくなってきました。多分そうなるのを狙ってるのでしょうね。

 似たような立ち位置のプラグインとしては、Native Instruments Replika XTがあたると思います。

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 こちらは有料で6,600円・・・とはいっても持っている人のほとんどはKompleteに付属していたというケースが多いかと思います。こちらのほうが従来のディレイと近く扱えるイメージですが、Super Massiveは操作子が少ない分手軽感が大きいと思います。

 今回まとめるために色々調べたり実験してみて、改めてディレイも奥深いなと思いました。また、とりあえず音をならしがら変化を聞いて使い方を把握することも多かったのですが、あらためてマニュアルを読むことの大切さも実感しました。参考になれたら幸いです。


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