ありがとう 「GANⅮAM FACTORY YOKOHAMA 」

宇宙世紀2024年3月31日をもって、4年近く開催されていた「GANⅮAМ FACTORY YOKOHAMA」が幕を閉じた…

2020年12月から始まったこのイベント。コロナ禍と重なる時期もあった。しかし世界中のガンダムファンは勿論、多くのアースノイドに「人類が目指すべき未来」へのメッセージを残した。一ガンダムファンとして、このイベントを横浜で開催して頂いた関係各位に謝意を述べると共に、僕の思いを伝えたい。

宇宙世紀2020年。我々人類は新たな危機に直面した。

中国武漢から発生した新型コロナウイルスによって、未曽有の危機の幕開けとなる。目に見えない殺人者は世界中に散らばり、多くの無辜の民を死に至らしめた。およそ100年前に大流行した「スペイン風邪」以来のパンデミックに為す術がなく…

抜本的な解決策はただ一つ。ワクチンの開発だ。それこそが人類の唯一の希望であった。先の見えない暗雲の中で我慢の生活を強いられる日々。いつ感染するかわからない不安と恐怖。そんな中で始まった「GANⅮAМ FACTORY YOKOHAMA」は一つの光明だったかもしれない。

僕は今回のパンデミックと「一年戦争」が重ねて感じられた。形こそ違うが「人類の危機」という観点からは共通している。一年戦争においては「アースノイド」と「スペースノイド」の対立が描かれているが、コロナにおいては「発生源が中国武漢」とされたことで、露骨なアジア人に対する差別が問題となった。人々の心に憎しみが生まれ、連鎖反応の如く広がっていくことは、新たな争いの火種となる危機ともなり得る。

そんな中で開かれたこのイベントの意義は大変大きい。世界中のガンダムファンが注目し、ガンダムという強烈なコンテンツを発信することが、バラバラになった世界を一つにする。以前にも述べたが、日本のアニメ等のソフトパワーは、時には政治や軍事等のハードパワーを凌駕する。僕はどちらかと言えば現実主義者だ。地政学的に条件が決していいとは言えない日本においては、きれいごとだけでは済まされない。しかし、日本が発信するソフトパワーは周辺国のみならず、世界のパワーバランスを保つ上で欠かせないものになっている。

例えば中国は、安全保障上の脅威という位置付けだ。バリバリの軍事大国の上、ここ10年で着実に海洋進出を果たし、それは太平洋島嶼国にも及んでいる。日本を含め周辺国は軍事等のハード面に備えるが、ごく当然の動きだ。力には力で対抗するしかない。しかし「力には力で」の理論一本では限界にきており、その緩衝材的な役割が必要とされる。それが日本のソフトパワーだ。なので政治的に対立していても日本の文化には肯定的だし、中国共産党が流す反日プロパガンダに疑問を覚える人もいる。

僕は一昔まで、アニメやアイドル等の「オタク文化」を忌避していたが、その見方は時代錯誤だと思う。「いい大人が情けない」という思考はオールドタイプの典型なのかもしれない。一見なんともない物が、人の世界観を変えるきっかけとなるが、その可能性が日本にはまだ眠っているように感じられる。かつてヒトラーは「日本人は創造性に欠けた民族」と評しているが、その見方は違う。「オタク文化」というソフトパワーで、世界に新しい息吹を吹き込んだ日本の創造性を侮ることなかれ!

僕は2年前に「GANⅮAМ  FACTORY YOKOHAMA」に訪れた。動くガンダムを観たときは、人類の未知なる可能性を感じた。3月31日の最後を見届けることはできなかったが、4年間の記憶が走馬灯のように思い浮かんできた。

何故か両目に涙が溢れてきた・・・

新しい職場に移動となり、最初は馴染めなかったこと。慣れない環境で暖かい眼差しで見守ってくれた上司。一家でコロナに罹患し、祖父が命を落としかけたこと。新たな環境とコロナが重なり、人と対立することもあり、どちらかと言えば、辛く大変な期間が多かった。その中で動くガンダムに見守られたような気がする。コロナが明け、今回のイベントが終えた今、改めて「GANⅮAМ FACTORY YOKOHAMA」が残したメッセージはこう言うことだと思う。

「人と人が分かり合える努力をしなさい」と...

感じることは個々それぞれ違うが、僕は強くそう思う。そして声を大にして言いたい。

4年間ありがとう。そしていつかまた会える日を。

         〜完〜

ニュータイプになれなかった37歳