劇場版「Fate/stay night[Heaven’s Feel]」I〜IIIの考察・感想 その3
今回はその2で残した部分の考察です。
前回のNote
その2で残した部分
「先輩は私から離れられない。これ以上自分を裏切ることが出来ないから」の意味
この部分を、解釈を加えて分解していきます。
・「先輩は私から離れられない」
これは読んでそのままです。先輩は私から離れることはできない。
理由は次の部分です。
・「これ以上自分を裏切ることが出来ないから」
「これ以上自分を裏切れない」ということは、既に裏切ったものがあるということです。これは映画を見た方なら問題ないでしょう。既に裏切ったのは、「切嗣との約束。士郎が目指していた正義の味方になる」です。
では、「これ以上」とは何か。これも難しくないと思います。
それは「桜だけの正義の味方になる」です。
士郎は「桜だけの正義の味方になる」と決めています。この決心を曲げるということは、桜に対する裏切りであり、士郎自身に対する裏切りでもあります。
実際、士郎は「桜だけの正義の味方になる」を曲げることは出来ないでしょう。何故ならこれを曲げてしまうと、何のために
「切嗣との約束。士郎が目指していた正義の味方になる」を裏切ったのか、分からなくなってしまいます。つまり、これ以上裏切れないのです。
また桜は「Ⅱ.lost butterfly」の衛宮邸で
「出会った時から分かってたんですよ。この人はきっと、何も裏切らない人なんだなって」と独白しています。士郎は自分も他人も裏切れない。桜はそういう認識で士郎を見ています。
桜は士郎が自分を守るために、どれだけ重い決断(正義の味方を止める)をしたのか、重々分かっています。それが士郎を苦しめている事も理解しています。
※この独白は、衛宮邸で桜が家事をしながら、常に士郎の事を考えている事も示しています。
一旦、まとめ
なんのことはない。
つまり桜は、言葉通りの意味を士郎に投げかけています。
「切嗣さんとの約束。士郎が目指していた正義の味方になる」を裏切り、
「私だけの正義の味方になる」と決めた先輩は、もうこれ以上自分を裏切る(「私だけの正義の味方になる」を捨てる)ことは出来ない。
これが、先輩が私から離れられない理由です。
冗長に書くと、こんな感じでしょうか。
それほど、無理のある解釈ではないはずです。
士郎、絶句の意味
士郎は桜の、この言葉を受けて固まり、何も言えません。
大粒の汗が滴ります。
何故何も言えないのか。それは
図星だったから
と解釈しています。士郎は桜にこう言われるまで、はっきりと自覚していなかったはずです。
桜の言葉は、士郎が自覚していない潜在的な意識まで、こんな短い言葉で言い当ててみせたのです。
なぜこんなことが出来るのか。
それは桜が四六時中、士郎のことばかり考えているからです。
図星であるため、士郎は否定することが出来ません。
そして肯定も出来ません。
肯定出来ない理由、それは桜が自分から離れられない理由を直前に聞いているからです。
桜は、何故士郎から離れられないのか
士郎への問いかけの直前に、桜はこう言っています。
「私といると苦しいでしょう?」
「だから私、先輩の前から消えないといけなかった」
「けど出来ないんです。私にとって嬉しいことは、先輩だけだから」
少し言葉を変えてあるだけです。
言っていることは、士郎への問いかけと一緒です。
「先輩の前から消える」は、「先輩から離れる」と同義です。
「私にとって嬉しいことは、先輩だけだから(離れられない)」
つまり桜は、「先輩を苦しめることは分かっているけれど、先輩のことが好きだから離れられない」と士郎へ伝えています。
この解釈も問題ないはずです。
桜の言葉の真意、悲しそうな顔の理由。
結論から言ってしまうと、これは桜が、士郎にカマをかけています。
真意(カマ)は「私の事、本当に好きなんですか?」です。
私は先輩が好きだから離れられない
でも先輩は違う。先輩は自分の信念が理由で、私から離れられない
桜はこう言っています。
何故、桜はこんな士郎を試すような事を言ってしまったのか。
それは、士郎が他ならぬ遠坂に駆け寄っているからでしょう。
話を戻します。ここで桜がほしかった言葉は、士郎からの否定です。
例えば、こういう言葉だったはずです。
「違う。俺は桜が好きだから、離れたくないんだ」
しかし、現実は違いました。
士郎は図星を突かれてしまい、桜に何も答えることが出来ません。
桜は自分の言葉が、士郎の図星をついたと理解したはずです。
なので桜は、
をします。
つまり桜は、「私の事、本当に好きなんですか?」とカマをかけ、見事に悪い方向へ当ててしまった訳です。
桜は「もしかしたら、そうなのかも」ぐらいだったはずです。
しかし、士郎の図星をついてしまったことにより、逆に当惑してしまいます。
なので桜は、
をするのです。
控えめに解釈すると、「私の好きと、先輩の好きは違う」という感じでしょうか。桜にとっては悲しい、辛いことだったはずです。
士郎の気持ちはどうだったのか
多分、否定の意見としては、
士郎は寝室での桜の問いかけに、「俺は桜が好きだ」と明確に答えている。あたりでしょうか。
これは好きの種類の違い。と解釈しています。
桜が士郎に向ける好きは、憧れとか、そういう類の好きです。
士郎が桜に向けている好きは、恐らく庇護欲から来ているはずです。
「守ってあげたい」とか。少なくとも、桜は憧れの対象では無いでしょう。
士郎が憧れとか、そういう類の好きで見ているのは遠坂の方です。
確か、原作で明言されている、士郎の好きな相手は遠坂凛です。
士郎が答えられなかったからと言って、士郎が桜のことを好きで無いわけではありません。士郎は憧れではなく庇護欲から、桜を好きと思っています。好きの種類が違うだけで、うまく説明できなかっただけです。
うまく説明できたかなぁ
原作(ゲーム)を見れば正解が書いてあるのやも。
プレイは大昔で、印象に薄いシーンだったから忘れてしまった。