日本の未来は俺が守る⁈

「やっぱり大分に来たらとり天が鉄板!このサクッとした食感とジューシーな味わいが堪らんわぁ〜!」
そう、今俺は大分のソウルフードとり天を堪能している。ヒーロー協会からの指令で大分に来たはいいけど…、なぜか今回の師匠は同期のイズミ。しかもイズミは俺と同い年、いったいこいつから何を学べって言うんだよ…。
「なぁ〜ヒナタ、お前今度はグルメレポーターにでもなるつもりか?」
「そんげ言い方ねえじゃろ〜⁈同期に弟子入りさせらるるこっちん身にもなれっての!お前のどこが俺よりすごいっちゅうっじゃが?呼び出しもねえし、せっかく大分来たんやかぃ大分観光付き合えって〜!」
「さすがやな…ヒナタ。」
今日俺は一番早え特急で来て、イズミには大分観光に付き合うて貰うちょる。イズミとは新人研修んときに意気投合して今でん連絡取り合うほど仲がいいかぃ気楽でいいわ〜!
『コケッ、コケーッ』
「ヒナタ出動命令だど、とり天食うちくりいぇでいくどっ!!」

イズミに引っ張られて泣く泣く出動すると、温泉街には似つかわしくない緑色のみかん怪獣が暴れていた。
「なんだあのでっけ〜ミカンは?」
「ありぁカボスちゃ!それよりヒナタ変身!」
「おっ、おう!」
『へ〜んしん!!』
そう言や、イズミが変身するんを見っとは研修振りやなぁ〜。そうそう、イズミはリズム感がねえかぃ変身するとき笑えっちゃがな〜ヒヒヒヒッ。俺はササっと変身してイズミんアホな変身でん見学すっか!津久見扇子踊りんリズムに合わせて変身するイズミはやっぱし〜ダサ…くねえ?ん?ん?ん?いつん間にこんげカッコいい舞いを披露するごつなったと〜⁈前と変わらないはずなのにイズミの変身は眩しく輝いて見えた。
「ヒナタ、向こうのカボス頼む!」 
「おっ、おう。分かった!任せとけ!」
今は目ん前ん敵を倒すことに集中せんと!その時だった…、俺のちょっした隙を狙ってカボス怪獣が鉄拳を振り下ろしてきた。
「ヤバッ…。」
「ヒナタ!」
「イズミ?」
俺がカボス怪獣からの一撃を覚悟したその瞬間、イズミは俺の前に瞬時に現れてあっという間に奴をコテンパンにしやがった!
「ヒナタ、大丈夫か?」
キャー、こんげもんおなごやったら好きになってしまうやつやん⁈
「ヒナタ…お前キモい顔してるぞ…。」
「スマンスマン、妄想が…。ありがとう!それよりお前えろう強くなったな…。」
「…お前⁉」
その後、イズミからの説教が永遠と続いたのは言うまでもない…。チーン。

「ヒナタ君。」
「あっ、イズミのお母さん。ちびっとウトウトしてしもうて…。今日から1週間お世話になります!」
「よう来たね、ヒナタ君こたあよう聞いちょんちゃ。ファッション雑誌に載ったちなあ〜!」
「アハッ……アハハハハッ…。」
イズミの野郎、いらんこと言うて!
「あの…イズミ君は⁈」
「せっかくヒナタ君が来ちくれちょんのにごめんね〜。あん子は暇さえありゃあ、格闘技ジムに体鍛えにいくんよね。」
「俺も見に行っていいっすか⁈」
「いいちゃ〜!場所は〜こんチラシに書いちあるけん行っちみて〜!」

ここかな⁈立宗ジム…。おっ、いたいたイズ…。イズミの姿を見た俺は言葉を失った。ほとばしる汗に躍動する筋肉…これぞまさに男の中のお・と・こ…。
「ヒナタやめろ、そんあちい視線!」
俺が窓に貼り付けて見ていたもんやから、イズミに気づかれちまったぜっ。
「あまりにカッコいいからみとれてたっちゃわ〜!」
「何ちゃ、照るるやろ!」
内心俺は自分んことが恥ずかしゅうてたまらんかった。ここ数ヶ月、考えちょったことといやアジアンに勝つことばっかり…。外見ばっかにとらわれて中身は空っぽ。俺は宮崎、いや、いずれは日本全国を守る立場になるヒーローじゃ。そん俺が本来の目的を見失うなんて…、本当バカじゃ。
「…なぁ、イズミ。俺もまぜてくれよ!」
「おぅ、もちいいぜ!」
それからというもの俺らは暇さえあれば道場で特訓した。特訓の甲斐あってか、前にも増して俺は筋骨隆々、まさにヒーローの中のヒーローにっなっていったのだ。
「どうだヒナタ、実践交えちゃんと体んキレが違うやろ?」
「そうやなあ、前より体が軽うなった気がするな!」
「コケッ、コケーッ」
「ヒナタ、呼び出しだ!うみたまごやてちゃ!」
「おうっ!」

うみたまごに着くと、巨大化したイルカやセイウチが暴れ回っていた。
「イズミどうする?」
「とりあえず、ここは危ないから海に誘導しよう!僕がおとりになるからヒナタはお客さんを安全な場所によろしく!」
「分かった!」
よしっ、とりあえずイズミが巨大怪獣を撒いちょる間に客さんを出口に案内しよう!
「皆さん安心してください!僕らが来たのでもう大丈夫です!」
「キャ〜、ウギャ〜、ワギャ〜」
駄目じゃ、パニックになっちょる…。こうなったら、俺ん華麗なダンスでみんなん心を落ち着かせしかねえっ!
「ミュージックスターッ!!」
プールルルッ♪プールルルッ♪プールルプールルプールルルッ♫
俺はキレッキレのひょっとで鍛え上げた美しい筋肉を惜しげもなく披露した。
「みんなあっち見ち〜!イズミだぁ〜!」
「キャ〜イズミよ〜!」
「エエッ〜⁈ 見てくれちゃ〜!」
まぁいい。今は避難じゃ!
「皆さんこちらで〜す!」
お客さんも落ち着いたらしく、スムーズに出口まで誘導できた。
「こちらヒナタ。イズミ応答せよ!」
「こちらイズミ。ミッションコンプリーッ!」
この日の俺たちは今までで一番って言っていいほどうまいこと連携して華麗に任務を完了した。
「キャー、パチパチパチ、ありがと〜、素敵〜!」
この歓声…。例えこれがイズミに向けられたもんでもいい!俺はこれを求めてたとよ!
もちろん、翌日の朝刊の一面にはでかでかとイズミが載っていた!ん?もちろん、俺も…見切れちょるちゃ〜⁈なんで〜?ガックシ。

イラスト:ciel

「おはよ、ヒナタ!」 
「…おはよ。」
「なんちゃ、そんしけたツラは?アハハハハッ、さてはお前新聞見たな?」
「あっはっ⁈はっ?何んこと?」
「そげな落ち込むなちゃ、本部から聞いたけんど、宮崎ん新聞じゃでっこうお前が載っちょったらしいど!」
「エッ?それ本当?マジマジマ〜ジ⁈なんて書いてあったんやろうか?」
「ヒナタ大活躍ごたる感じやったかえ?ウシシッ。」
「また人気でちゃうなぁ〜。困っちゃう!」
『コケッ、コケッ、コケコッコ〜!!』
「ヒャ〜、本部からん電話じゃ〜!ハイ、こちらヒナタ!」
「頑張っておるようじゃな〜、ヒナタ君。」
「ハッ。ありがとうございます!」
「君にもやっとヒーローの自覚が芽生えてきたようだね!イズミ君からも聞いたよ!」
「ハッ。」
「次の研修先は広島だったね⁈頑張りたまえ!」
「御意!」
「何て⁈」
「広島研修がんばれだって!」
「えぇ〜、広島?広島っていったらビヤン先輩ちゃな⁈」
「おぅ、仲良いんか?」 
「ま、まぁ、頑張れ…。」

今俺は大分研修を終えて、次の研修先広島に向かう飛行機の中にいる。イズミの意味深な発言は気になるけど、俺は今大分研修を終えた達成感に満ちあふれている。それに、宮崎の新聞にも載ったし、イズミと一緒に体も鍛えたし、ヒーローの風格出てきたっちゃないと〜!
「ねぇねぇ、昨日んご当地ヒーローすごかったみたいなあ〜!」
おっと〜こきにも俺のファンが⁈
「あ〜新聞見た〜!っちゅうか、イズミってどっとんカッコようなっちょらん?」
「ちゃね〜!最近ん私ん推しなんよね!」
ん?ん?ん?俺ワイッ⁈
「あの〜お話中すみません。」
「…はい??なんやろう?」
「僕、昨日水族館にいたんですけど…、ヒナタもすごかったですよ〜!」
「ハハハハハッ、ヒナタね、ありゃ最初スタッフと間違われたちなあ!」
「スタッフ〜??いやいや、かなり活躍してましたから〜!!」
「いやいやいや、しまいにはひょっとこ踊り出して笑われてん話ちゃ〜!」
「ハァ?あんた何も分かっちょらんなぁ〜?」
「ハァ〜?あんた何なん?」
『コケッ、コケーッ』
「ハヒッ!こちらヒナタッ!」
「ヒナタちゃん⁈私だけど…」
「ハイ、存じ上げております。会長!」
「君の辞書に成長はないのかね…⁈」
「おっしゃる通り!会長さすがです!日々精進します!!」
「バッカも〜ん!立場をわきまえろ!」
チーン。また、やっちまった…。確かに、俺は誰かに勝つためにヒーローになったわけじゃねえ!弱きゅ助け強きゅくじく、それがヒーローヒナタやっちゃ!それに、これじゃ天国におるじいちゃんにも顔向けでけん!しっかりせんと!

先行き不安だが、まだまだ研修は始まったばかり!!ヒナタが日本一のヒーローになれる日はくるのか⁈いや、まだまだ難しいであろう…。だか、目の前に苦しむ人がいる限り、ヒナタは行くどこまでも!がんばれヒナタ!負けるなヒナタ!!


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