ビヤン先輩の告白

ふぁぁぁ〜よう寝た!ぼつぼつ広島かぁ〜。大分はイズミやったかぃ楽やったけど、今回はちびっと不安やなぁ〜。まぁ、どんげかなるかっ!
「まもなく広島です。」
おぉ〜着いたか!イズミの母さんが色々持たせてくれたかぃ荷物が重いわぁ〜。俺が重たい荷物を両手いっぱい持ってプラットフォームに降り立った瞬間だった。
「えらい荷物じゃのぉ〜ヒナタ!よう来たな!」
「えっと…あっ、ビヤン先輩⁈お疲れ様です!」
「広島は初めてか⁈」
「はいっ!!初めてです!ふつつか者ですがよろしくお願いします。」
「アハハハハッ!結婚するわけじゃないんじゃけぇさ。まぁ、初めてなら広島案内せにゃあな!」
「あざます!」
「とりま、行こ!」
ノリもええし、イズミの言いよるこたぁあてにならんなぁ〜!
 
そこから、ビヤン先輩は厳島(いつくしま)神社や宮島水族館とあらゆる名所に連れてってくれた。変な人やったらどうしようかと思っちょったけど、いい人んごたってよかった〜!でも、こんげ観光ばっかしちょっていいんやろうか…⁈不安そうにしているのを察したのかビヤン先輩が俺を見てニヤリと笑った。
「ヒナタ、はじめての広島はどうだ?」
「いや〜活気があっていいところですね〜!」
「そうやろ?俺はこん街が大好きなんや!そう言ゃあ、ヒナタは宮崎のどこが好きなの?」
「ん〜、そうですね…。」
そう言や、宮崎についてそんげ真剣に考えたことなかったなぁ〜。どこが好きって言われてんな…とりあえず、チキン南蛮はてげ好きやけどなぁ〜ハハッ!これじゃあんまりか…⁈ なんて答えたらいいか分からんなぁあああ〜⁈
「ヒナタ、われはばかか?自分が守る街のことすぐ答えられんでなにがヒーローじゃ⁈」
なんやそん顔は〜⁈ さっきまでの穏やかな先輩はどき行ったっちゃが?
「すっ、すみません。僕は宮崎ののどかな街並みが好きで…、えっと、え〜っと、キュウリやきんかん、ピーマンなどが有名ですし、我が家では週に1回はチキン南蛮を食べてますし、青島あたりの海は波が穏やかで全国からサーファーが来たりして〜最高です!」
『パチパチパチパチ』
「それでこそ立派なヒーローじゃ!」
そこから始まったビヤン先輩の質問攻めは拷問だった…。
「ヒナタッ、神話の里と呼ばれ、パワースポットとしても注目されている場所は?」
「たっ、高千穂峡?」
「正解!」
「濃厚な甘さがたまらない!太陽のタマゴと言えば?」
「マンゴ〜〜〜!」
「正解!」
「4年連続で内閣総理大臣賞を受賞したものは?」
「エッ⁈」
「…エッ?」
「あっ、宮崎牛?」
「もっと素早く!モアイ像7体」
「サンメッセ!」
「正式名称はっ?」 
「サンメッセ宮崎!ってか、俺より詳しい〜!」
まだ続くと〜⁉︎ビヤン先輩からの容赦ない質問攻撃にギブアップしかけてたときだった…
「ツァーン、ツァーン、ツァーン」
アビの鳴き声…?あっ、本部からの指令か⁈
「ハイ、こちらビヤン!すぐ向かいます!ヒナタ出動だ!行くぞ!」
「ハイッ!!」 
 
広島城に着くと、そこにはもみじ饅頭やらお好み焼きやら大好物ばかり!
「今回ん敵は全部美味しそ〜!お昼食べちょらんかぃお腹くすなぁ〜!」
「ヒナタ!集中!」
「ヒッ!かしこまりました!」
そうこうしている間に敵はあっという間に倒されて、もはや俺の出る幕はなかった…。
「先輩すみません…、俺…。」
「気にしんさんな!あれじゃのぉ〜ヒナタは根本がなっとらんけぇ動きも遅いんじゃのぉ!」
「根本…、確かにビヤン先輩に比べたらまだまだ特訓が足りないですよね…。」
「そうじゃないんじゃよなぁ〜!ちいと、わしについて来い!」
ビヤン先輩はそう言うと、それ以上何も語らなかった…。
「着いたぞヒナタ!ここじゃ!」
「あっ、ハイ…ここは…⁈」
「ここが原爆ドームじゃ。わしはわれにここを見したかったんじゃ!」
「…ハイ。」
「ヒナタが守りたいなぁ何じゃ?」
「…苦しんでる人たち…です。」
「じゃな?なら、なりふり構うていられんのじゃよ!」
「ハイ…。」
「まぁ、今日は家でゆっくりしたらええよ!うちの母さんがお好み焼き作って待っとるし!」
「…ハイ。ありがとうございます。」
俺は…何をやりよったんやろ…。
 
ビヤン先輩の家に到着すると、そこには僕が想像してたのとは違ってとっても上品な豪邸があった。
「先輩…⁈ここは…、誰の家ですか?」 
「わしや?」
「いやいやいや…⁈見栄は張らないでください!」 
「失礼なやつじゃのぉ〜、あっ、ひとつ言うとかにゃあいけいことがあるんじゃけど、うちの親の前ではヒーローの話はすなや!」
「それは…内緒ってことですか?」
「色々訳ありでさ…、それと、ビヤン呼びもやめろよ!よろしゅう!」
「ハッ、かしこまりました。」
ビヤン先輩に連れられて自宅に入ると、何と言うことでしょう⁈ビヤン先輩の外見からは到底考えられないほど眩しい世界がそこにはあった。
『ポカーン…。』
「あなたがヒナタ君ね、宮崎でモデルをされてるとか?噂はかねがねきいているわよ〜!」
「モデル〜⁈」
「それより、お母様、ヒナタ君を僕の部屋に案内してもいいですか⁈」
「お母様〜?僕〜⁈エ〜、エ〜、エ〜ッ⁈」
「ヒナタ君、長旅で疲れているんだね…、さぁ、こっちが僕の部屋だから!遠慮しないで!」
「イデッ!健ちゃん痛い⁈」
部屋に着くと、またビックリ!見渡す限りの本棚には医学書がびっしり埋まっていた。
「おいっ!何じゃ?さっきの態度は?」
「それより、この医学書は何なんですか⁈」
「あ〜うちの親医者でさ、わしも将来医者になれ言われとるんや!」 
「え〜⁈ヒーロー辞めちゃうんですか⁈」
ビヤン先輩は俺の質問に答えてくれなかったけど…ビヤン先輩が色々訳ありなのは分かった…。
 
それから1週間べったりビヤン先輩と一緒におるけど、ヒーローとして大事なことはもちろんのこと俺にでもでくるような応急処置んやり方やらも教えてくれて、ビヤン先輩は本物んヒーローなんやと思った。出動するときはあちい先輩で、自宅ではインテリな先輩。今流行りん二刀流ってやつでカッコいいな…。
「ヒナタ本部から連絡来たら、出動だで!」
「ハイッ!」
急いで戦場に着くと、そこには数えきれないほどたくさんの敵があふれかえっていた。
「ウギッ⁈今日はえろう敵が多いなあ〜⁈」
「ヒナタあっち頼む!」
「ハイッ!任せてください!」
俺はビヤン先輩に教わった通り、目の前で困っちょる人を第一に考えてでくる限りんことをした。ハニワパンチ、チキン南蛮キック、チキン南蛮キック、ハニワパンチ、ハニワ、チキン南蛮、チキン南蛮、ハニワ、ハニワ…「ヒナタ終わったで!ようやったな!」
気づいたら目の前ん敵はあっちゅう間におらんごつなっていた。
「われは聞いとった通りすぐ吸収しんさんな〜!すごいのぉ!」
「いや〜ん、照れてしまうやん⁈」
「おいっ、調子乗りんさんな!」
「はひぃ!」
 

イラスト:ciel


そうこうしてるうちに広島での研修はあっという間に過ぎ、次の研修場所に出発する日がきた。さすがジェントルマンなビヤン先輩!わざわざ俺を空港まで送ってくるるなんて…どこまでもついて行くっちゃ~!
「ヒナタ、次は奈良じゃな?ベルにゃあ連絡しといたけぇ!」
「ありがとうございますっ!!あの〜ベル先輩ってどんな方なんでしょうか?」
「ベルはわれの後輩じゃなかったっけ?」
「エッ、エッ?後輩?エ〜後輩に弟子入りやらあるっちゃ〜?」
「おいっヒナタ!ヒーローに先輩も後輩もないよ。わしも今回われに教わったことがえっとあるけぇ感謝しとる!」
「ビヤン先輩…どこまでも最高じないっすか〜!」
「なんじゃそりゃハハハッ!そう言やあ、われってアジアンに憧れとるんじゃな?」
「だっ、誰から聞いたんすか〜?憧れてるわけないじゃないですか〜?そもそもアジアンって誰っすか〜⁈」
「言うとらんかったけど、アジアンとわしゃ従兄同士なんじゃ!」
エ〜、色々情報がすごすぎて混乱すっちゃけど…。ビヤン先輩とアジアンが〜?まぁ〜いっぺん壁にぶつけてこねくり回したら似ちょらんこともねえか?
「失礼な顔してわしを見んさんな!」
「言われてみたら、どことのう似てますね…。」
「まぁ、わしゃわれに期待しとるけぇ!見た目だけじゃのうて中身も磨いてアジアンに負けんヒーローになれよ!」
「ウゥッ…ハイ!頑張ります!」
 
そうして俺はビヤン先輩と別れて伊丹行きの飛行機に乗った。そう言や、ビヤン先輩がお土産にくれたん何やろ?紙袋を開けると、そこにはもみじ饅頭と写真集?が入っていた。
「ん?写真集…?ご当地ヒーローアジアン⁈」
エッ、写真集?エッ、エッ、いつの間に…?
「コケッ、コケーッ」
「ハヒッ、こちらヒナタッ…」
「ヒナタ君、研修頑張ってるようだね!今回もご苦労であった。」
「ハッ!ありがとうございます…。」
「ところで、もう見たかね?」
「ヘッ?何を…?」
「ビヤン君からもらったと思うんだが、アジアン君の写真集だよ!」
「ヒッ⁈あっ、あれは本部が出したものでしょうか?」
「イヤ、アジアン君にはファンが多くてね!ファンの熱い要望を受けて、今回は特別にね、ファンクラブが出版するのを許可したんじゃよ!じゃあ、そういうわけで奈良ても頑張りたまえ!」
「…。」
この後、俺が荒れたのは言うまでもない… 。
とりあえず、今回の研修でも確実にヒナタは成長した…ハズ⁈目の前で苦しむ人がいる限り、ヒナタは行くどこまでも!がんばれヒナタ!負けるなヒナタ!!

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