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子どもの頃に飴をのどに詰まらせて息ができなかった体験

成長しても飴玉は危険物だった

上の画像は大玉コーラ飴です。すでに嫌な予感がしますね。今でも駄菓子屋さんでよく見かけます。しゅわしゅわゴロゴロして、とってもおいしい。私の大好きな飴です。たしかサイダーもありましたよね。

とある休日、角度調整できる座椅子に深く腰かけて、この飴をゴロゴロなめていました。座椅子を倒しすぎていたのかは定かではありませんが、行儀悪くふんぞり返って漫画を読んでいたことだけは覚えています。

後に体重をかけると座っている面が少し浮きます。しばらくして元の体勢に戻り、また後ろに体重をかけて座面を浮かせて……という感じで繰り返していたそのとき、飴玉がコロリとのどの奥に入ってしまいました。

まだ詰まってはいません。ですが、かなり奥に入ってしまい、指でかきだそうにも届きません。このままじゃまずいなあと思い、吐き出す体勢をとろうとしました。しかし吐きたくても出てこない。酸素の出し入れができない。吐こうにもうまく押し出せない。

焦って四つん這いになる私。すると飴がスススとすべって、さらに奥に入っていきした。口内にたまった唾液を飲んだのがいけなかった。それは自分の意志とは関係のない反射のような動きだったかもしれません。

ここで完全に飴が詰まってしまいました。入ってはいけない喉の奥の深い域に、ごろりと異物が落ちるおぞましい感覚。粉砕機に足を突っ込んでしまったような取り返しのつかなさ。あれは本能的な恐怖に違いありません。

驚いて息をしようとしましたが吸えない。当然ですが声も出ません。のどの隙間に飴玉がぴったりと嵌って何もできなくなりました。誰かが背中をドンドン叩いてくれたら出たかもしれませんが、それは無理でした。この日、家族は留守で家にはわたし一人だったのです。

『このまま息ができないと…どうなる!?』『こわい、こわい』
頭の中はそればっかりです。阿呆な体勢で飴を舐めた後悔をする余裕なんてありません。恐ろしくて苦しくて、一人で絶望していた時間はどのくらいだったでしょうか。おそらく一分もなく、数秒だったのではないかと思います。

カハッ!とやって喉から出そうにも息が出せない、そんな無駄なことをしているうちに、すーーーーっと息が通りました。パニックになっている間に少し飴が溶けたようです。ほんとうに少しだけですが、のどにヒュッと空気が通り抜けた、あの感覚は今でも鮮明に覚えています。神が送り込んだ風だ!

冷たい風が心もとない息と一緒に奥から出てきて、それにすがりつくように細くこまかく呼吸をくり返しました。わずかな呼吸ができるようになっただけなので、怖くて体を動かせませんでした。

秋の蚊の羽ばたきの方が余程か力強かったと思います。必死に微風を吹かせながら息をしているうちに、飴による圧迫感がうすれてきました。しかし胸のあたりに飴が詰まっている感じが気持ち悪い。飴はゆっくりと、気管を通過していきます。それが分かってしまうのが輪を掛けて気持ちが悪い。

そのときになって私はようやく立ちあがり、おそるおそる水を飲みました。しかし水がうまく飲みこめません。アホですね。まだ飴が詰まっているのに水なんか飲んだら、それも詰まるのに。めちゃくちゃ胸が痛かったです。

それでも、なんとか水は飴のすき間から胃に入っていきました。まだ肺のあたりで飴を感じます。ちょっとずつ水を流し込みながらドキドキして過ごしました。

そして……飴は無事に胃にたどりつきました。胸の違和感が消えたのです。さぞ胃は驚いたことでしょう。
胃「なにこれ、デカッ!? こんなに負担をかけやがってちくしょう」
申し訳ないですね。今は飴を舐めるときにはとても気をつけています。

窒息の恐怖のまとめ

あのとき、いちばん恐ろしかったのは「声が出せないこと」と「のどがピタッと閉じたような感覚」でした。あのまま息ができなかったら誰もいない部屋で一人死んでいました。

息が吸えない絶望と、ヒュッと息が通った安心感。飴をなめると、たまにその両方を思い出します。わたしは飴を口に入れたら、すぐにガリガリかんでしまうクセがあります。いつからなのか分かりません。もしかしたら、この日のことがあったからかもしれません。

飴をじっくりなめる派のあなたも、ガリッとかんじゃう派のあなたも、ほんとうに怖いので気をつけてくださいね。

以上、「体」という大きな組織で起きた私の大事件でした。

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