ワールズエンドブルーバード、レビュー
ワールズ・エンド・ブルーバード(未完結作品)
総評★★★★(五段階評価)
【属性】
身分差(受けの方が身分が高い)・男前攻め・強気受け・両性具有
【ストーリー】
SFファンタジー×BL。SFの中では比較的分かりやすい世界観だったように思う。
舞台が近未来のトーキョーと名付けられているので混乱するが、人間関係の構図や社会は中華が主軸を握っている。
SFだと思い込みすぎると世界観へのツッコミにキリが無くなるので、《中華モノに現代的親しみやすさとSFっぽさを混ぜ込んだらこんな世界になるんやろうなー》と解釈した方が楽かも。
受けと攻めが関係性を深めていくキッカケが「身分が違うのに似たような本を読んでいる」ということ。
本が共通点のため、詩的な表現や有名どころの本の一説がよく出てくる。意外と文学的な会話で進むシーンもあり、二人の世界観に引っ張られる。
食指が動かなかった原因が両性具有設定だったのだが、これも読んでみれば特に問題なかった。女性化現象はストーリー上必要だが、BL恋愛描写として邪魔をしてくることはほとんどなかった。
月に一度、両性化する(発情)という設定。オメガバースの亜種みたいなもん。
受けは魔法使いであるが、魔法が沢山出てくる物語ではない。万能でもない。
作中で魔法についての詳細説明があるまで、ずっと心の中で「いや、魔法使ったらええやないかーい!」と突っ込んでた。
web小説によくある魔法たくさん使ってファンタジー!な世界は期待しない方がいい。
この魔法使いという存在の罪深さと背徳感は、面白さを加速させた。
二巻読み終わったあとに、一巻目の冒頭に戻ると………え、これハッピーエンドで終わるよね……?という不安と期待が入り交じる。
三巻目早く。
【画力】
画力自体は○。
漫画の評価としては……良く言えば、一つ一つのコマが一枚絵。悪く言えば、コマ割りと繋ぎが苦手な印象。コマが変わる度にシーンが極端に飛ぶことがある。
漫画というより、一つ一つのコマをイラストとして認識し、繋ぎの部分は脳内補完ができる人にオススメ。私は一瞬戸惑ったが、すぐに慣れた。
pixivを見慣れてる人はそこまで苦労しないけれど、商業コミックしか読んだことない人は驚くかも。
【キャラクター】
攻め……堂々とした立ち振る舞い、献身的で男前。貧民街に住んでいる。作中では半分くらい怪我してる。本を読んでいたため、基礎学はないのに一部突出して博識。いい男。受けを幸せにしてあげて欲しい。
受け……高貴な身。平素は高圧的なお坊ちゃま。感情が高ぶったらすぐ噛み付いちゃう。攻め曰く「火の玉みたいな性格」。でも、B級グルメを食べて目を輝かせるお坊ちゃま可愛い。
キャラクターの登場数は6~7人。けっこう多い分、物語の展開が早く飽きを感じない。サブキャラやざまぁ相手の過去にも触れたりするので、キャラへの厚みは満足出来た。
【エロシーン】
えっちの回数は比較的多め。描写濃度は普通。【画力】で書いた通り、コマ割りがやや独創的であるという部分に起因し、画角が独特。
ついで、モザイクが広かったり、下半身を移さないような描き方をしている部分も多いので、濃厚エロ派の人は物足りなく感じてしまうかも。
女性化についての詳細
⇒外見的変化は陰部のみ。作中ではワンシーンだけ露骨に描写される。
子供が作れる設定があるが、現状作中で妊娠はしない。受けの意思としては「絶対子供なんか作るか」と、女体化する自分の体を嫌っている傾向にある。
男性妊娠という概念が根本的に無理な人はやめておいたがいい。
【恋愛面】
攻め側は使命感をきっかけに恋愛へと変化。
受け側は渇望・欲望をきっかけに恋愛へと変化。タイミングはほぼ同じ。
もしかしたら、「好き」⇒「愛してる」までがやや強引に感じる人もいると思う。
攻めが受けに向かって「魂と運命をかけてお前を守る。俺の王」と言って跪くところは、尊すぎてクラクラした。
メインストーリーもサイドストーリーにも、どちらにも通じる恋愛キーワードは「愛していると言えばよかった」。
切なすぎる運命の歯車の着地点は、まだ未完結のため不明。
【総評】
良。手を出したことの無いジャンルということもあって、世界観を理解するのにやや時間がかかった。二巻からは没頭して楽しめた。
解決しなければいけない問題が次々現れるので、飽きずに読める。反面、強引さもあるのでご都合主義に見えるシーンも。
とにかくキャラの顔がいい。逆身分差、強気受けが大好きな私はニコニコと読むことができた。
この作品を手に取るのに向かない人。もしくは挑戦を覚悟しなきゃいけない人。
⇒商業コミックの中でも、現代モノしか読んだことがない人。
⇒画力よりコマ割りの上手さを重視したい人
⇒細身のキャラが苦手な人(全体的にキャラクターの線が細い)
⇒ストーリーより濃厚なエロシーンが欲しい人
⇒男性妊娠概念・女性化が絶対無理な人
⇒運命とか奇跡とかいう概念にご都合主義を感じてしまう人
⇒未完結作品は読みたくない人
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