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さよなら。のしこさん


餅が食べたいと言ったから
駅前で売ってた赤福買って
一緒に笑って食べたのが 最後になった。

その日の夜 夕食が終わっても
いつもの食堂の席で
ちーちゃんちーちゃんとわたしを呼ぶ
早く部屋に帰りなよ。と言うと
あんたは帰るの?あんたの家に連れて帰ってよ。と
また無茶なお願いをする
これもいつものこと。
夜勤スタッフにお部屋まで送ってあげてと
お願いして、じゃあね。またね。と手を振った
そんないつものバイバイが
最後の会話になるとは夢にも思ってなかった

休み明け4日ぶりに出勤したら
のしこさんが熱を出してて寝込んでいると聞いた
よく熱を出す人だった
いつものことだと思ってた
明日にはまた騒がしく下に降りてくると
思ってたのに
次の日も降りてこなかった

毎日毎日、早く起きてと肩をゆすった
なんの返事も返ってこないまま。

ある日の0時頃
夜勤のスタッフからラインが入った。
布団を飛び出して 車を飛ばして
着いた頃にはもう少し冷たくて
他人の死で生まれて初めて
声を出して泣いた。

毎日毎日 大きな声で言い合いしたり
二人でおやつ食べたり

嫌いなんだか好きなんだか。

にわとりから始まった私のあだ名は
事務所にもぐってお菓子ばっかり食べてるからと
もぐらになり
かしこまって名字で呼ばれたかと思ったら
悪魔の金庫番になったり
あーちゃんになって
最後はなぜかちーちゃんだった。
誰か懐かしい人を、重ねてたのかな

銀木犀に入居した頃から2階の談話室で
お別れ会をすると仰っていたのしこさん
棺に入る時の洋服もご自身でしっかり
私たちに伝えていてくださり
2月2日金曜日 のしこさんの希望通りの服を着て
たくさん笑って、たくさん口喧嘩した方々に見送られ
銀木犀を去りました。

ほとんどの職員が入社して初めて覚える入居者は
のしこさんだったのではないでしょうか
度肝を抜かれるようなメイクをしたり


部屋でタバコを吸ってこっぴどく怒られたり
これでもかというくらい部屋を散らかしたり
コンビニに行けば毎回3000円くらい使ったり
好きな人は好き!嫌いな人は嫌い!
ほんとにはっきり正直な人でした。
なんだかんだ言う私たちに
大きなお世話!と毎日好き放題生きたあなた
これほどまでに 
銀木犀が似合ってた人はいるのだろうか。

私はきっとあなたのことを忘れることはないです


96年お疲れ様でした。ゆっくり休んでね。
大好きだよ。のしこさん。またね

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