ウェットフライのあたりについて

先日、S君が朝一バラシの連続だったと言う話で、昔の沢田の著書を思い出した。
今回はウェットフライのあたりについて整理したいと思うが、古い表現(現在ではほとんど使われていない)を復活させる必要があり、まずは定義から。

パワーウェットとマイルドウェット

あたりの対処については本流で使用されるシステムと渓流で使用するシステムを別に考える必要あるため、古い呼称を復活させます。

パワーウェット

沢田賢一郎氏が開発した、大規模な河川を攻略するためのシューティングシステムおよびメソッド。
シューティング・ヘッドにモノフィラのランニングラインを繋ぎ、飛距離を稼ぎ、手前の流れに影響を受けないようにラインを扱うメソッドなど。
特別な理由がない限り、アップストリームにキャストする事は無い。
現在のスカジットやスカンジもこの分野に含まれる。

マイルドウェット
通常のフライライン(DT,WF問わず)を使用して、比較的近距離を釣るシステムの総称。
フローティングラインを使用する事が多く、またアップストリームにキャストする場合が多い。
ダウンストリームのあたりを取りやすいように、バンブーロッドやウェット専用アクションのロッドを使う事がある。
近年ではスティールヘッドの釣場開拓が進み、マイクロスカジットの総称で軽いスカジットラインをシングルハンドロッド、もしくはスィッチロッド等で渓流を釣る事が増えてきているが、それらも含まれる。

ウェットフライ専用アクション

プロショップサワダの作るロッドでウェットフライ専用アクションとして発売されているシリーズがあった。
SD(スーパー・ドリフト)シリーズである。
開発秘話は沢田氏の著書「渓流のウェットフライテクニック」で書かれていたが、内容はおおむね下記の通り。
ダウンストリームでのあたりを取る時、カーボン素材のロッドではアクションが硬いため、ロッドへの衝撃が魚へダイレクトに伝わってしまう。
そのため魚が深くフライを咥えずに吐き出してしまう事が多い。
対処としてグラファイトやバンブーロッドのスローアクションのロッドを使用して、あたりの衝撃を弱め、フッキングの確立を高める。
フライフィッシングの世界でバンブーロッドが生き残ったのは、このダウンストリームのあたりを取るため。
SDシリーズはカーボン素材を使用して、ダウンストリームのあたりを取りやすいアクションを目指した。
単純にバンブーロッドのようなアクションにすると、キャスティングがままならない。
そのため3ピース化する事で、あたりの取りやすさとキャスティング性能のバランスを高次元で実現した、と言った内容である。
現在販売されているロッドでウェットフライ専用と名打ったロッドは見かけない。
商品の説明ではウェットフライやスペイキャスト向けのロッドと明記されているものは存在し、私の知っている限りではTSRのSH4 9605や9806が該当する。
キャスティング性能重視で製作すると、ダウンストリームのあたりを取りづらいロッドになるような気がする。

あたりへの対処

パワーウェットではラインを持たず、リールをクラッチにしてあたりを取る方法が推奨されているが、マイルドウェットでも同じように対処する。
しかし極近距離を釣るマイルドウェットではラインを頻繁に巻き取る必要が生じる。
そのため沢田氏は渓流では左手巻きのリールを使用するとあった。
どうしてもラインを持っているときにあたりが来た場合は、ラインを離すか、あらかじめ左手で軽く押さえるだけで、滑りやすくしておく、と言う工夫が必要である。



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