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イルカロス

あたし、イル。
四年生
あ、小学生ね

「はい、あーん」
イル
「もぐっ」

ごめん、今食事中
介護用アンドロイドに
助けてもらってる。

「喋りながら食べるとむせますよ」
イル
「ほーい」

「‥‥」

一人で食事
取れないのかって
思ってるでしょ?

あたしさ
両腕無いんだよね‥


腕が無くても泳げると
思ってた。

難しいんだね。

結果、溺れた
助かったんだけど
その時助けてもらったのが
トビイルカだった
私はその子に
カロスって呼んだ。

頭にヒレがあって
そこのくぼみに
顎引っ掛けて
足でしがみ付いて
水面まで出してもらった。

その時、義手とかを作る人
‥何て言ったかな?
とりあえず先生。
生体工学の人!
現場にいて怒られた。



お父さん
「娘はまだ義手の
要求をせんのですか?」
先生
「もう少し時間が必要です」
お父さん
「せっかく来て頂いたのに」
先生
「あの子は違う価値観を
持っている様です。
腕が無い事をネガティヴに
捉えていない様ですね」
お父さん
「何と‥では」
先生
「もう少し様子を
見させて下さい」
「必ず何か要求する筈です」


先生
「イル‥その子は」
イル
「あ、先生!」

岸壁に現れたトビイルカの
カロスに擦り寄っていた時
先生がやって来た。

カロスはまだ小さい子供

私を助けてくれた力持ち。

先生
「ラグラの原生動物と
戯れる子供は初めてですね」
イル
「んん?」

カロスの左目を見て
違和感に気付く。

何?目から数字が見える‥
カウント?

イル
「3.2.1‥?」
先生
「イル?」

するとカロスが
思いっきり首を振った。

あたしはビックリして
尻もちをつく。

カロスがあたしを
右目で見ようとした。

先生
「イル!」
イル
「先生!カロスの
目がおかしいの!」
先生
「わ、わかるのですか?」

原生動物保護を専門とする
獣医がいるらしいので、
先生が調べてくれた。


獣医
「‥失明しとるな」
イル
「治らないの?」
獣医
「保護法で切開できん」
「手術は無理だ」
イル
「そんな‥」

あたしはカロスを見る。

カロスの気持ちが伝わってくる。
大丈夫だよ、と
片方は見えるから、と、
そう聞こえた気がした。

イル
「だって」
先生、獣医
「 」


曇り空の下
先生が買い出しに行くので
あたしも一緒に行く。
お気に入りのリュックを
背負って。

先生
「すみませんね。助かります」
イル
「いーのいーの!」

リュックが落ちない
様にベルトも付いている。
空に違和感を感じて
見上げる。
空に数字‥5?デカデカと
カロスの時と同じ事が起きた。

先生
「イル?」
イル
「3.2.1‥雨!」
先生
「え?雨⁈」

土砂降り

先生
「まさか!
このタイミングで⁈」
「イル!走れますか⁈」
イル
「あはははは!」

あたしは先生と雨の中走った。



先生
「はー‥まさか帰りに
降られてしまうなんて‥」
「イル、体拭きますよ。
風邪を引いてしまう」
イル
「先生、来て」
先生
「ちょ、イル⁈」

あたしは部屋に案内した。

足を使いパソコンの電源を入れ、
キーボードを打つ。

先生
「足でキーボードを⁈」
イル
「先生、コレ作って!」
先生
「コレは‥イル、
人魚でもなるつもりですか⁈」
イル
「カロスと飛びたいの!」
先生
「しかし、コレは‥
粒子加速装置」
「シミュレートしたのですか?」
イル
「教材用だけど設計したの」
「お願い!」

腰から伸びたスタビライザー
腰部からエラの様に割れた
粒子加速器‥

教材用の
シミュレーションソフトで
設計した。
材質はシリコンガード。

先生
「腕よりこちらを
要求するなんて‥」

たかが小学四年生が
教材用でここまで設計したの
多分あたしだけかも。



カロスと泳ごうとして
溺れた海。

先生が作ってくれた
粒子加速器
腰から伸びた
スタビライザーが
壊れない様に身につけて
あたしの足はトビイルカと
同じになった。

先生が心配そうに見る。
あたしはゆっくり
粒子加速器を回して
スルッと浮き上がる。

カロスが来てと私に伝える
それが伝わった。

水平に飛び出す。
早い。

先生
「イル‼︎」
イル
「すぐ戻るね!」

あたしの体が
慣れる様にカロスが
動き方を教えてくれる

カロスは分かりやすく
教えてくれた。
あたしもどんどん覚えていく。

そしてカロスは真っ直ぐある場所までついて来てとあたしを
案内する。
下は海だ‥

どこ行くんだろう?


後半へ続く

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