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イルカロス2

「こちら海上救助隊、
岩礁が船底に刺さり、
身動きが取れない。
至急救援を要請する」

海は深い青から
潮の満ち引きなど、
地球のサイクルとは
比べものにならない程
予測がつかない。

海上救助隊の船体は、
荒ぶる海面の波に
対応できるように
潜水艦としても行動できる
設計になっていた。

けれど、海上の航行中
潮の満ち引きが
急激に変わり、海中の
岩礁が船底に突き刺さって
しまった。

空を飛ぶ事ができない
海上救助隊は
レスキュー隊に
救助要請を出した訳。

「海上救助隊がレスキューを呼ぶ
羽目になるなんてな」

「通信も当てにならない。精神感応が此処ではな」

備蓄の食料も底をつく。
このままでは‥

「見ろ‥誰か来るぞ」

「おい‥冗談だろ?
人魚が空飛んでやがる」
イル
「カロス!もしかして
あれのこと言ってたの?」

そうだと伝えている。

救助隊の船に近付き、
隊員に聞いてみた

イル
「おじさん達、
此処で何してるんですか?」

「船体が身動き取れない。
救助を呼んでくれないか?」
イル
「うわ、大変だ。
カロス、あたしを
呼んで来たのは
こういう事だったんだ!」

あたしは理解する。

イル
「待ってて!
先生に連絡して来る!」

「頼む!」

あたしは引き返すと、
一気に加速して
先生の所に戻った。

「あの子、両腕が無かった‥」

「空飛ぶ腕の無い人魚、か」

そこから先は、先生に
頼んでレスキューを呼ぶ
騒ぎとなる。

空中救助隊「G-BART」が
緊急出動し、カロスに水面から
ガイドしてもらう。

あたしもカロスと一緒に飛んで
救助に行った。



何も出来なかったけど‥
あたし、この時ばかりは
自分の腕が初めて欲しいと
強く願った。



先生
「お手柄でした。
イルが救助隊を助けるなんて」
イル
「‥‥」
先生
「どうしました?
浮かない顔して」

感謝されても、
カロスのおかげであたしに
連絡が届いた訳で。

思えば、
誰かのおかげで私は
生きている。

恩返し出来ないまま
こんなの‥やだよ

決めた。

イル
「先生、あたし両腕欲しい!」
先生
「イル‥」
「今日が最終日です」
イル
「 」
先生
「大丈夫、私が戻っても
イルの腕は作れます」
「しばらくかかるでしょうが
君なら、待てますよね?」
イル
「うん‼︎」
「あたし、先生に
腕作って欲しいの‼︎」
先生
「イル‥ありがとうございます」

先生は笑顔で帰って行く。

義手の接合には
神経を繋ぐ手術が必要になる。
その頃には先生の作った
義手が病院に届いて
手術する事になる。

あたしは待った。



手術当日

5年生になりました。

あたしを乗せたお父さんの
車が病院に向かい、走る。

お父さん
「病院には先生は
いないんだぞ」
イル
「わかってるよう」

車窓から流れる風景を見る

お父さんが聞く

お父さん
「腕が付いたら、
最初に何をしたい?」

あたしは少し
照れ笑いしながら
答える

イル
「ハグ」

‥そして
やがて、手術を待つ
病院が見えて来た。


終わり

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