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Splatoonに学ぶゲーム制作ポイント

本記事はK3 Advent Calender 2023の参加記事です。


スプラトゥーンはなぜ流行ったのか?

 Splatoonとは2015年5月28日にWii Uで発売されたゲームタイトルのことである。

 非常に失礼ながら、それまでのWii Uには主力となるタイトル、いわゆる看板タイトルの数は非常に少なかった。マリオ系列やスマブラ、辛うじてピクミンやゼノブレイドといった作品が候補になってくるが、それはWii U独自の作品ではなく過去のナンバリングのようなものが大半であった。

 そのような状況の中、Splatoonは完全新規タイトルでありながらも流行し、今や看板タイトルとまで言われるようになった。そこでSplatoonがなぜここまで流行したのかについて考察することで人にプレイさせる気にさせるゲームとは何かを考える。

ゲームに引き込むビジュアル

 

 最初に挙げるものとしてはやや不適当かもしれないが、やはりプレイヤーにとって遊ぶゲームタイトルを吟味する最初のポイントはパッケージの画像でろう。ゲームの世界観を一気に観察できるからである。そもそもゲームタイトルは小説や漫画と違いあらすじ等だけでは概要をあまり説明できない。対戦ゲームとなれば他人と遊ぶことが楽しみになるのだからなおさら文字では説明することは難しい。そのため、ビジュアルは非常に大事である。



 ビジュアルの良さの説明として、まず初めに、人は暖色(赤、黄色、オレンジ等)に注目しやすいという性質を持っている。また当然ではあるが大きい物体であれば目を惹きやすいということも考えられる。そのような視点で上のタイトル画像を見ると、右下のオレンジ色のイカが最も注目を浴びる。

 中央のインクリングはオレンジ色ではあるが、青色のインクを身にまとっており、オレンジの比率が低い。奥のオレンジ色のイカはそもそも小さく、青色のインクリングに関して言えば、左のパブロを持った青いインクリングが存在することに筆者が気づいていなかったくらいには存在感がなかった。

 このようにオレンジ色のイカに注目させ、さらにはこのイカはビジュアルが良い。ゲーム内で敵と味方が戦わずにイカ同士で戯れる時期があったくらいには癒される見た目をしている。

 このかわいいイカの存在によって、プレイヤーは「なんかかわいいからちょっと概要見てみるか」という気持ちが芽生えてくるのである。どんな面白いゲームであっても遊んでもらえなければ等しくゴミゲーであるということを十分考慮した結果と考えられる。

単純明快な操作方法


 

 ここではSplatoon最大の特徴ともいえるその簡単な操作について触れる。Splatoonでは主にゲームパッドを用いる操作を行うが、そのうち必要なボタンはスティック2種類とわずか3ボタンのみである。それはZL、ZR、Rボタンであり、これらのボタンはコントローラーの背面に配置されている。もちろん、Yボタン(視点変更)やXボタン(ジャンプ)も存在はするが、必須ではないため割愛させていただく。

 この必要なボタン数がSplatoonを看板タイトルに押し上げた最大の要因である。中でもZL(イカ状態)の貢献度は素晴らしい。このボタン1つで弾(インク)のリロード、高速な移動、壁張り付き等の数多くの動作が実現できる。

 さらにプレイヤーが射撃ボタン(ZR)1つとスティックしかわからない人だったとする。そんな初心者だろうとSplatoonでは大丈夫。初心者ならだれもが通る道であるローラーコロコロという行為で結構楽しめてしまう。

 このようにSplatoonは初心者に非常に優しい操作設計になっている。任天堂が出すゲームはスマブラ然り、従来のものと比べると操作性が快適なものが多い。これはターゲットする年齢層がやや子供向けであるためであるが、それに加え初心者向けという側面もある。最初の門戸を広くすることにかけて任天堂はかなりの工夫上手だと感じた。


報酬系と行動について

 いきなり難しそうな言葉が飛んできたが、そこまで難しい話ではない。この論文によると、欲望ホルモンと呼ばれるドーパミンの量が増えるとより欲望を満たすための行動をするし、ドーパミンの量が減ると何もやる気にならずただ寝ることになるということである。つまり、人をやる気にさせるためにはドーパミンの量を増やすように働きかける、もしくは少ないドーパミンでも行動できるようにすることが重要である。

 また、この論文によると、ドーパミンを放出するためにはただ報酬を与えるだけでなく、報酬を目指して何かをしようという「実際に何かをするアクション」が大事になってくるということである。

 Splatoonではこのドーパミンに対する接し方が上手いように感じられる。ガチマッチを例に挙げよう。

 ガチマッチとは、ランクが10になって初めて潜れるようになるレート戦である。勝てばレートが上がり、負ければレートが下がることで自分が今どのような実力に属しているのかということを把握することができる。プレイヤーは主にこのレートを上げるために日々ガチマッチに潜っている。ここでは勝ってレートが上がるということを報酬として話していく。

 報酬に結び付く勝利を得るためにプレイヤーがしなければならないことは、相手を倒すことである。しかし自分や味方はもちろんのこと、対戦相手だって勝利したいのだからただ黙って倒されるわけにはいかない。ではどうやって相手を倒すのか?といった際に出てくるのがスペシャルウェポンである。

 Splatoonのスペシャルウェポンは全体的に強力なものが多く、1回の発動で相手が倒れるといった事態も珍しくない。一定時間何も攻撃を受け付けない無敵状態となるダイオウイカやバリア、1撃で倒す威力のある攻撃を遠距離から放つメガホンレーザーやトルネード、スーパーショットなどがある。

 これらのスペシャルウェポンを駆使することで相手を倒し、勝利に導くことができる。従って、このスペシャルウェポンを発動させようとして行動をし、相手を倒して勝利するという一連の流れができる。この流れは先ほどのドーパミンの流れと一緒ではないだろうか?
 勝つため(報酬を得るため)にスペシャルウェポンを駆使して相手を倒す(何かをする)ことでドーパミンが得られる。

 また、Splatoonは一連の出来事に挑戦した際のデメリットが少ないことも特徴の1つである。デスという相手にやられた回数、つまり報酬を得ようとして失敗した指標が存在するのだが、それは1試合(5分間)におよそ10回ほどは許容される数値となる。10回ほどの失敗が5分の間に許され、かつ勝利すれば報酬が得られるということで、少ないドーパミンでより多くのドーパミンを得られるように実装がなされているのである。

ゲーム制作ポイント(まとめ)

  ここではまとめとしてスプラトゥーンが流行った理由について整理していく。Splatoonが流行った理由としては主に以下の3点である。

  1. ビジュアルが良い

  2. 操作方法が簡単かつわかりやすい

  3. ドーパミンがドバドバ出る

 これはつまり、よりプレイする人口を増やし(①)、何もプレイせずにちょっと触っただけでやめる層を減らし(②)、より多くの人をゲームに熱中させる(③)ということである。

このように他人から見たゲームの評価を把握し、初心者がつまづくポイントを消し、ドーパミンをドバドバ出させる構造にしたSplatoonはとてもすごいゲームである。Splatoon3も見習ってほしいところ。

 このことから、ゲームはただ面白ければよいということではない。どんなに面白くてもプレイヤーにその面白さが伝わらなければそのゲームは”面白くないゲーム”と認定されてしまう。

 従って、ゲーム制作をする際はフィードバックする人がいた方がよいと感じた。自分1人であるとどれだけ客観的にみようとしたところで結局は主観的になってしまう。他人、それも作ったゲームのターゲット層がどれだけ自分の作ったゲームについて理解しているかを問うことで、よりゲームの完成度というものは増していくものと考えられる。

 


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