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普通の水彩絵具で上手に描く方法

水彩絵具が濁ってくる?

Twitterで「学生の方が水彩絵具を使っている時、描き始めは素敵なのに、終盤になるにつれてなんだか色が濁ってきて灰色になってしまい、ガッカリしている様子なのだけど、専門の人だったらどう指導しますか?」
というような記事を見たので私なりに考察してみようかと思います。

よく使っている水彩絵具、実は〇〇だった

小学校~中学校の義務教育で使っている水彩絵具。色々なメーカーから出ていますが、大体12色入りで1000円前後。水で薄めて濃淡を作ったり混色したり水彩の体験が気軽に出来ます。画用紙に描くだけでなく、木工作品や紙粘土に塗るのも可能です。私も美大受験のために画塾に行くまでこの水彩絵具を愛用していました。

実はこの水彩絵具「透明水彩」ではなく「不透明水彩」なのです。

不透明水彩は透明水彩と何が違うのか

透明水彩は彩度が高く混色しても色の鮮やかさが失われにくいです。下地の色が透けるので紙の白地を生かす使い方が主流です。
不透明水彩は塗る前の彩度は高くても混色するほど色が濁ってゆきます。下地の色が透けにくいので、紙の上だけでなく、木の上や紙粘土の上に描いても定着がよいです。

水彩画を描くには本来、透明水彩が向いているのですが、原材料が貴重なため比較的高価です。また、制作ごとに絵の具を揃え直すのも金銭的に勿体ない為、汎用性が高く安価で手に入る水彩絵具として、不透明水彩が使われているのだと思います。

また、高価な水彩絵具に触れる前に絵の具の取り扱いを学ぶ道具の手入れをする筆の使い方に慣れる…といった基本を学ぶ入門として相応しい絵具です。

不透明水彩で水彩画を描くと濁ってしまう理由

前述の通り、不透明水彩は混色してゆくと色が濁る性質があります。また水で薄めると発色が鈍くなります。つまり、書き込めば書き込むほど、絵を描き上げる終盤になればなるほど、画面が灰色っぽくなる危険性が高まります。かといって書き込みが浅いと物足りない絵になってしまいがちです。

絵が好きで熱心に書き込みをしたい、意欲のある子ほど水彩画を濁らせてしまう危険性が高くなります。
側で見ている先生が「どうにかしてあげたい」「何か方法はないのか」と思う気持ちも良く分かります。

普通の水彩絵具で上手に描くには?

では、普通に安価で手に入る水彩絵具が不透明水彩だったとしたら、その絵具で水彩画を上手に描くにはどうしたらよいのでしょうか。

いくつか方法がありますが

見せ場となる箇所になるべく混色しない鮮やかなままの絵の具を使う

◎明るい面は画用紙の白地を生かしハイライトを効果的に使う

◎濡れているところは画用紙が弱っているので、塗り重ねたくても乾くまで書き込みは我慢する(計画的に塗り進める)

◎水で薄めることに頼らず、薄い色にしたいときは白い絵の具を使うと比較的発色が良くなる

紫色は色の安定が悪い色なので、赤や青を効果的に使って紫色に錯覚させる

絵の具の発色の癖、湿っている時と乾いた時の差を考えながら、頭を使って塗る

等が考えられます。
ただ、描き方は好みにも寄るので絶対というわけではありません。
鈍い色もまた美しいと考えればそれはそれで成立するのが絵の奥深さです。

筆者が普通の水彩絵具をそこそこ使えるようになったのは〇〇時代だった

私がごく普通の安価な水彩絵具(=不透明水彩)を効果的に使えるようになったのは高校生の頃、美大受験のために画塾に通ってからでした。
画塾ではプロも愛用する透明水彩(ホルベイン製の学生には高価な物ですが画塾併設の画材店にて学割購入)を使って、芸大出身のプロの先生が指導してくれました。水彩絵具に苦手意識のあった私は覚えが悪く、下塗り、適切な絵の具の濃度、水の使い方等を入門から優しく丁寧に指導して下さった先生のお陰で、マイナー美大に現役で合格出来ました。
合格できたのは先生の指導が良かったからです。

プロも愛用する透明水彩に慣れから安価な不透明水彩を使うと、発色の鈍さに改めて自覚的になり、「あえて鈍さを生かす」「発色のよい色をメインに据える」ことで見せ場を確保し、それなりの画面を作ることが出来るようになっていました。小学校の頃から使い始めて10年が経っていました。私の要領が悪かったせいもあると思います。

まとめ

どこにでもある普通の水彩絵具でも、戦略的に絵の具の特性を掴むことで、思ったような場面を描き出してゆくことが出来ます。

ここに描いたことはすべて技法書とか指導教員の方の受け売りを混ぜ合わせた物で、そこら辺の技法書に載っていることでもあります。

水彩絵具で色んな物を恐れずに描き、実験を繰り返して自分なりの絵を試行錯誤しながら描いてみてください。
駄文ですが読んで下さった方の何かのヒントになれば幸いです。読んで下さり、ありがとうございました。

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