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平等フィットを学問的に考察する試み(Futurist note連載第1回)


1. Futuristの自己紹介

こんにちは、VARIETASのFuturistのRentaです! VARIETASは、構造的な問題によ って発生するひとりひとりを取り巻く摩擦(=フリクション)がゼロな社会(=Friction0)を実現することを目指すスタートアップ企業です。

Futuristとは、目指すべき未来像を示す未来学者です。
この度、以前VARIETASのnote上で発信していたImaginistがFuturistに進化してnoteを1年ぶりに再開することになりました。そのため、今後のnoteの方針を今回は書いていきたいと思います🔥

過去にImaginistとして投稿された記事はこちら

Futuristについて知ってもらうために、3つの問いを用意しました。

  • A.Futurist noteで何をやっていくのか?

  • B.Imaginist noteの最終投稿が1年前だが潜伏期間の理由は?

  • C.Imaginist noteと何が違うのか?

A.Futurist noteで何をやっていくのか?

Futurist noteで何をやっていくのかという問いに答えるために、まずはFuturistが何なのか述べておきます。

Futuristは「あるべき未来像を示す」ことをミッションとする未来学者です。近未来を予測する 学者を未来学者と呼ぶこともありますが、VARIETASのFuturistの役割は「どんな未来が良いのか?」を提示することです。
また、Futuristはあるべき未来像を示すための手段として、学問的アプローチを使います。具体的には以下の流れです。

  • VARIETASのFuturistとして、あるべき未来像において大事にしたい価値観を示す

  • あるべき未来像に関して、学際的な議論に展開できる問いを示す

  • 価値観に基づいて、あるべき未来像のブラッシュアップや問題点の指摘に学問を使う

特に大事なのは2つ目です。私たちFuturistは学問を愛しています。しかし、ミッションは未来像を示すことなので、まずはFuturistとしての価値観を反映した未来を示すことを重視します。だから、学問は補強的な位置づけです。

そして、Futuristは学問を使うのでnote中に出典を示します。文末に1)や2)などの数字と括弧が出てきたら、その文章に引用や参照元がある印です。出典は記事の最後に明記しております。

B. Imaginist noteと何が違うのか?

前節を見て、「Imaginist noteと何が違うのだ?」と思った方もいるかもしれません。Futurist noteの最大の特徴(そしてImaginist noteとの違い)はビジョン設定型アプローチに集中していることです。
下図をご覧ください。一般に、問題解決にはギャップフィル型とビジョン設定型の2つのアプローチがあるとされています。


ギャップフィル型アプローチとビジョン設定型アプローチ


ギャップフィル型は、予めゴール(表中の健常状態)が決まっています。現状と健常状態のギャップを埋めることを目指すのが、ギャップフィル型の問題解決です。

これに対して、ビジョン設定型はゴールの見極めから始まります。なぜなら、何が健常状態か分からない時に、ビジョン設定型の問題解決アプローチが採用されるからです。

もちろんImaginist noteにもビジョン設定型の要素はありました。その一方で、そもそもなぜ現状(病んでいる状態)があるのか、現状とゴールのギャップを埋めるためにはどうしたら良いのかという風に考えていた節がありました。

しかし、実際にプロダクトを実装する知識やスキルが欠けていることもあって、Imaginistのやり方には限界があったのです。ならばいっそ、「どんな未来が良いのか?」を考えることにキャパを振り向けた方が良いのではないか?という判断をしました。
だから、Futuristはビジョン設定型アプローチに集中するのです。

C. Imaginist noteの最終投稿が1年前だが潜伏期間の理由は?
この問いへの回答はシンプルで、社内向け発表に勤しんでいました。ビジョン設定型アプローチのアイデアは社内向け発表を通して採用することになりました。
以上、3つの問いによってFuturistが何なのか、これからどんなことをやっていくのかご理解いただけたら嬉しいです。

2.Futuristが実現したい未来像は自由である

それでは、Futuristはどんな未来像を実現したいと考えているのか? それは「平等フィット」を通して実現される自由です。平等フィットとは何か。平等フィットと自由はどのように関係するのか。この2つを1節ずつ使って説明します。

2.1 平等フィットとは何か

平等フィットとは、個性学の権威であるトッド・ローズ教授が提唱したもので、VARIETASが大切にしたい概念の1つです。具体的には、

「平等なフィット」のもとでは、誰もがその個性に応じた最高の機会を受け取ることができる。(太字は原文ママ)1)

とされています。
Futuristは平等フィットの概念に共感しています。ひとりひとりの個性が、誰にも邪魔されずに社会でフィットすることを重視しているからです。しかし、平等フィットが実装された社会やプラットフォームは、まだ実現されていない。そのため、何が平等フィットに向かって行動を起こすことは困難です。

ならば、何が平等フィットか見えるようにしたらいい!というわけで「あるべき未来像を示す」ことをミッションとするFuturistの出番というわけです。

2.2 自由と平等フィットにどのような関わりがあるのか

さて、平等フィットへの拘りにFuturistの価値観が反映されています。
それは、人間の本質である自由を大事にしたい、ということです。このnoteでは、「自由=自分の行為を不当に制限されないこと」としておきます。

当然、他者危害原則などのルールが自由には付き物なので、自由に関する細かい議論は次回以降のnoteで行います。
ここで強調したいのは、上記の意味での自由は平等フィットによって促進されるはずだということです。 以下のような流れで整理してみます。

  • D.人間の行為は自由である

  • E.人間の自由は社会に縛られることもある

  • F.人間が自由を最大限に享受するには、個々人の社会へのフィットが必要

D.人間の行為は自由である

まず、「哲学界のロックスター」と呼ばれるマルクス・ガブリエルは、人間の行為の原因としての自由を擁護しました。
現代の哲学では、決定論という「人間の行為は、神経科学などの自然科学によって『すべて』説明できる」という潮流があります。マルクス・ガブリエルは、著書『私は脳ではない 21世紀の精神のための哲学』において、自然法則のような不変の原因だけでなく、可変だが説得的な理由が行為の元になるとしています。

具体例を通して説明します。 私たちがレストランで注文するメニューを決める時、何が起こっているか考えてみましょう。 決定論の視点では、神経が反応しています。種々のメニューを見て、ハンバーグには激しく反応しているかもしれないし、グリルにはあまり反応していないかもしれません。しかし、これだけでグリルではなくハンバーグを食べる原因になるとは言えません。

例えば、キャンペーンによってグリルがハンバーグの半額だったらどうでしょうか?また、あなたがビルドアップ中でなるべく鶏肉を摂取したいとしたら?もしくは、ハンバーグは美味しそう(神経が反応している)だけど、量が多すぎて苦しくなりそう、ということも考えられます。
これらは、体内の神経の反応とは無関係にハンバーグではなくグリルを食べることを促す理由となり得ます。もちろん、これらの理由を振り切ってハンバーグを食べることもできます。つまり、

私たちの行為は、常に何かの原因があってその行為が起こる訳では無いから、自由なのです。2)

とマルクス・ガブリエルは述べます。
E.人間の自由は社会に縛られることもある
マルクス・ガブリエルの主張は確かに自然法則に対する人間の自由を擁護出来ています。しかし、その人間が作る社会によって、人間の行為が妨害されるという視点は「私は脳ではない」では全面に出てきません。
Imaginist noteでは、まさにその点に着目しました。 Imaginist noteの課題観は「機会平等や能力主義は本当に正義なのか?」というものでした。
以下、Imaginist noteからの引用です。

能力主義という考え方は「世間は機会平等で回っているのだから、成功も失敗も自己責任である」という態度を生み、本人の責任以上の問題で成功できなかった人々を苦しめている。また、そうならないように夢ややりたいことはひとまず棚上げにして、なるべく社会的地位のある学歴や職を得ようと競争が起こっています。 機会平等・能力主義は個人を自由にするように見えながら実際には個人を縛っているという点が理不尽です。

縛られ方は以下
1.自らの社会的な場を選択できない
2.社会的な場でできることが拘束されている。3)

Imaginistの課題観は支配と抑圧という2つの概念にまとめることができます。4) (支配と抑圧という概念は、現代正義論の学者の1人であるアイリス・マリオン・ヤングが唱えたものです。)

  • 支配:自らの意志によって社会的な場を選択することを阻害する社会的要因(したいことを選択できない)

  • 抑圧:社会的な場でできることが拘束されている状態(したいことを実現するリソースが足りない)

つまり、Imaginist noteでは「機会均等や能力主義という不正義」を「支配と抑圧」という概念で表現したのです。そこには、人間の行為の自由が社会によって縛られている状況に対する批判的視点がありました。

F.人間が自由を最大限に享受するには、個々人の社会へのフィットが必要
Imaginist noteによって提起された問題への解決策として、平等フィットを考えることが出来ます。つまり、抑圧がより少ない社会を考えるためには、個人が社会に合っている、フィットしている状態が全体に広がっていることが必要です。

ここで、強調したいのは必ずしも「社会にフィットしている=社会で活躍できる=お金を稼げる」ということを意味しないということです。
仮に社会主義が実現して、すべての人民に平等に富が分配されたとしても、個々人の身体的差異や事情によって、支出は変わってきます。その差が実質的な不平等を生んでしまいます。また、「稼ぐことこそ正義」という雰囲気の社会では、あまり豊かではなくても図書館に通いつめて知的な生活を送ることが出来れば幸せという人は、疎外感を感じるかもしれません。

閑話休題: カール・マルクスは極貧生活をやりながら(そしてエンゲルスの支援をもらいながら)大英図書館に通いつめて、資本論第1巻と2~3巻の草稿を書いたそうです。

2.3 指針となる問い:「何の平等」が平等フィットにおいて大事なのか

ここまで、Futuristとして大事にしたい価値は自由で、それは平等フィットと密接な関係にあるはずだということを語ってきました。これを踏まえて、Futurist noteで指針としたい問いを示します。それは「何の平等」が平等フィットにおいて大事なのか?というものです。

平等フィットには嗜好や経済活動、社会制度など様々な観点が必要です。そうしないと、何をもってしてフィットなのか分からないからです。平等フィットの提唱者であるトッド・ローズ教授は、平等フィットを機会均等に代わる社会制度として見ています。

そして、現状の社会制度である機会均等そのものが、人間の平等(自然権)・資本主義・高等教育・近代国家などの様々な文脈によって成立しています。そんな機会均等に代わる制度として平等フィットを考えるならば、色んな分野からの考察が必要になります。人間と社会について知ることが平等フィットの考察に必要であり、あるべき未来像の提示に繋がるのです。

しかし、ここまで多岐に渡る話をまとめるには指針が必要です。だから、「何の平等」が平等フィットにおいて大事なのか?という問いを掲げ、何をもってして「平等フィット」となるのかを探っていきます。
次章では、この問いに答えるための方法論を示します。

3.正義論の方法を参考にして平等フィットを考察する

早速ですが、このFuturist noteではロールズ正義論の方法論を参考にして連載します。

3.1 なぜ現代正義論の議論が平等フィットの考察に役立つのか

ロールズ正義論とは、アメリカの政治学者であるジョン・ロールズによって提唱された「公正としての正義」の通称です。ロールズ正義論では、機会均等や社会的な効用を最大にする限りでの富の分配などを、「公正としての正義」として提示し、それがなぜ社会的に正しいのか論証しようとしました。

ロールズ正義論の参考にしたいところは2つです。 1つ目に、トピックの類似性があります。ロールズを初めとする現代正義論のキーとなる問いは「何の平等か」です。これに対する回答の違いが、現代正義論の様々な学派に分かれるくらい重要な問いです。 Futuristとして考察する「平等フィット」も「フィット」が社会全体に平等に行き渡っていることを指すので、正義論の議論が参考になるはずです。
2つ目に、ロールズ正義論は未だ存在していない規範的な社会制度を、説得的に論証しようとした試みであることです。Futuristも同じことをしようとしています。ならば、一から方法論を考えるよりは、既にある洗練された方法論から学んだ方が良いのです。

3.2 Futuristの方法論

Futuristの方法論を示すため、ロールズ正義論の理論構造の紹介とその批判を行います。

3.2.1 ロールズ正義論の理論構造

塩野谷によると、ロールズ正義論の理論構造は以下の要素で構成されています。5)

  • Ⅰ「価値前提」:前提となる実体的な価値判断 →自由で平等な個人、自己保存のための自然権を持った個人、秩序ある社会が想定されている。

  • Ⅱ「道徳的観点」:規範を規範たらしめる論理的性質

  • Ⅲ「情報」:規範原理の選択の場において事実についての情報がどのように与えられるか →この想定の差異が理論の最終的な結果の差異をわける

  • Ⅳ「性向」:人間がどのような動機や誘因によって行動するかについての想定 →基本的には利己心である。

  • Ⅴ「統合」:すべての人々のもつ「性向」を前提として、社会制度を構想すること →最終的なアウトプットとして社会契約が想定される。

以下の画像にロールズの正義論の構造を示しました。


ロールズ正義論の構造

ロールズ正義論における正義の原理は、自由で道徳的な個人(道徳的人格)が「秩序ある社会」を構成・統治するために必要な制度になっています。
自由で平等な個人も「秩序ある社会」も価値前提にて想定されているものなので、実現されてはいません。それを可能にするのが、正義の原理なのです。6)

正義の原理は「公正な決定」によって為されます。人間が社会を構成しているので、この決定が公正であるためには、人間のクセを把握し、公正な決定に導く装置が必要です。クセとは「性向」に相当し、ロールズ正義論では利己心とされています。装置は「公正な決定」に参加する個人に与えられる「情報」を操作するものです。ロールズ正義論では、「無知のベール」と呼ばれています。

無知のベールでは、個々人は自分が置かれている社会状況(収入や地位など)を忘れてしまいます。その状況の中でどんな正義の原理が必要か決めるのです。例えば富の分配では、利己的な個々人は自分の収入が分からないので、たとえ自分が最貧層だとしてもマシな富の分配状況を選びます。一人一人は利己的に行動しているけれども、全体としては利他的な正義の原理が採択されるのです。

3.2.2 ロールズ正義論への批判

ロールズ正義論の批判の代表的なものとして、「無知のベールは非現実的だ」というものがあります。例えば、マイケル・サンデルによってなされた批判が有名です。7)

確かに、個々人の社会的状況の記憶を一時的に抹消してしまうような装置は聞いたことがありません。
しかし、ロールズにとって無知のベールとは事実の記述でも価値の提示でもないのです。 塩野谷は、ロールズのKantian Constructivism in Moral Theory(道徳理論におけるカント的構成主義)という論文を引用しつつ、以下のように述べます。8)

(ロールズは)道徳的人格と「秩序ある社会」の概念は、それぞれ人間と社会の理想像を明示”するものとした。その上で、”原初状態の概念は実際に原理選択を説明するための「媒介的なモデル関数」であって、「その機能は、道徳的人格のモデル概念と、秩序ある社会のモデル概念における人々の関係を特徴づける正義の原理との間に関連付けを行うことである」(J.Rawls, "Kantian Constructivism in Moral Theory", Journal of Philosophy, p.520)とした。

つまり、無知のベールとは「社会制度の選択の原理」を示したものだということです。
誰がどんな社会状況に生まれるのかは分からないので、無知のベールのような状況は起きています(特に幼少期)。
その上で、人々が社会制度を選択できるとしたらどのようなものになるのか?ということを導出するために、無知のベールが要請されたと考えるべきです。

そもそもロールズ正義論は、未だ存在していない社会制度について考察しているので、非現実的なものが導入されたということだけで、批判することは不当です。 だからロールズ正義論を批判する際は、彼の掲げる価値観を批判するべきです。9)

それは「公正な決定」の特徴の1つである、正義の原理の導入に伴う公正な決定は一度しか為されないというものです。 なぜ「公正な決定」は1度しかなし得ないのか。この決定には正義の議論の決着が含まれているからです。
ロールズは「公正な決定」による正義の原理の導出によって、利己的な個人が自律的に道徳的に行動するように促そうとしています。そのため、1度導出された正義の原理が覆されるということは、それまでの社会は公正ではなかったことになってしまいます。

これは正義の原理への服従とされています。服従と言いますが、正義の原理自体は無知のベール下にある個々人の自由な判断によって全員一致で為されています。だから、手続き的にも結果的にも公正であるのです。10)

ここに私が批判を向けたいポイントがあります。それは全員一致での、1度限りの決定です。 なぜなら、1度限りの決定に絶対に参加出来ない人達がいるからです。それは、若者です。若者は生まれ落ちる社会を決めることが出来ません。出生においては、人間は不自由だとも言えます。 そんな若者が生まれた、"正義の原理"によって運営される社会が、たまたまその若者にとって疎外的なものだとしたらどうでしょうか? しかも、社会制度はもう変えられないので、何かを訴えても「もう決まったことだから」と言われてしまうのです。

だから、個々人が縛られないような社会制度を構想するには、社会制度の決定が反復可能であることが求められます。
現代は変化の激しい時代と言われます。そんな時代に個人の社会への平等なフィットを考える際に、この視点は重要です。

4.平等フィット論の構造

前節の視点を大事にしつつ、平等フィット論の構造を示します。

  • A.人間の本質

  • B.人間の本質を踏まえた際の害

  • C.人間の本質が充実される社会

  • D.現状の社会と人間の本質が充実される社会のギャップ

  • E.ギャップを埋める原理

まずAにおいて、社会制度を導出する際、どの個人を縛るものでもあってはならないので、人間の本質をまず考察します。
次にBでは、人間の本質がもたらしてしまっている社会的弊害を指摘します。何を直せば良いのか可視化するためです。
Cでは、人間の本質とこのnoteなどでの議論を踏まえると、どんな社会が理想なのか考えます。
Dでは、理想の社会と現状の社会のギャップを示し、Eではそのギャップを埋める原理を示します。

Futuristの進め方として、学際的な問いを展開することを最初の方で示しました。これから、毎月1本のペースで、A~Eに関する問いとその回答を示すnoteを書いていきます。具体的には以下のようなスケジュールです。

A.人間の本質とは何か
10月 「人間の本質は自然法則からの自由であり、それは社会の構成によって為される」

自由とは、上記で説明した通り、外部的な原因に必ずしも拘束されずに行為を行うことです。
マルクス・ガブリエルは、自然主義的な決定論に対して人間の自由を擁護するために、上の主張をしました。その根拠として、人間は社会制度を作ることで、それを達成してきたとします。

11月 自由な人間はどのように社会を構成するか
マルクス・ガブリエルの自由論に則れば、人間の自由の本質は社会の構成にあります。その一方でアイリス・マリオン・ヤング著「差異と正義の政治」において明示されている通り、社会的抑圧は人間の自由を封じてしまう側面もあります。 ここに「なぜ人間の本質は自由であるにも関わらず、社会的抑圧が確認されているのか?」という問いが成立します。その予備的考察として、Beger and Luckmam著"social construction of reality"を参考に、人間による社会の生成過程を追います。

B.人間の本質を踏まえた際の弊害は何か
12月「人間の本質は自由であるにも関わらず、社会的抑圧が確認されている。それはどんなものか」
「なぜ人間の本質は自由であるにも関わらず、社会的抑圧が確認されているのか?」の問いに答えるための予備的考察その2です。今回は、実際にどんな抑圧が起きているのか概念化する作業です。

C.人間の本質が充実される社会とは何か
1月 人間の本質は自由であるのに、社会的抑圧が起きてしまうのはなぜか
人間の自由の最大の矛盾である社会的抑圧の発生源を考察します。次回以降の、社会的抑圧の発生を防止して人間の自由を満たす社会の考察に繋げます。

2月 人間の本質が充実される社会とはどんなものか
1人1人の自由が叶う社会のあり方を考察します。自由の矛盾が解決されており、誰かにしわ寄せがいかない状態が理想です。また、社会的抑圧によって見えなくされていた他者との共存の条件も重要です。なぜなら、1人1人の自由を実現させるためには差異の尊重が大事であり、右派ポピュリズムの隆盛などを見るに、それは難しい問題だからです。

D.現状の社会と人間の本質が充実される社会のギャップは何か
3月 現状の社会と人間の本質が充実される社会のギャップは何か 前回で理想状態を定義したので、現代社会の概念と比較しつつギャップを探ります。 現代社会を見るキーワードとして、世界史・資本主義・科学革命・グローバル化・汎システム化などが挙げられます。学問分野としては、歴史・社会学・国際関係論・哲学などを参考にします。

4月 人間の本質が充実された社会はこれまで実現されてこなかったのか 理想の社会の指標を提示し、歴史上でそれに近そうな社会を比較します。これはそれぞれの社会がどのようにしてそれを成り立たせていたか知るためです。成立条件は、次回のギャップを埋める原理の考察の予備的考察となります。

E.ギャップを埋める原理はなにか。「何の平等」が平等フィットにおいて大事なのか。
5月 「何の平等」が平等フィットにおいて大事なのか 理想の社会と現状の社会のギャップを埋める原理を提示します。その際、前回に比較した社会たちを説明&アップデートできることを目標とします。その原理は**「何の平等」が平等フィットにおいて大事なのか?**という問いへの回答になっているはずです。

6月 その原理は本当に機能するのか
原理の有効性を示すため、ダークホースからケーススタディを取り出します。具体的には原理によって説明できるポイントと、原理があったらより良くなったであろう箇所を強調します。

追記(2024年2月24日)

第5回までの平等フィットを巡る考察を続けた結果、以下のようにスケジュールを変更することになりました。

  • 2023年10月 人間の本質は自然法則からの自由であり、それは社会の構成によって為される

  • 11月 自由な人間はどのように社会を構成するか

  • 12月人間の本質は自由であるにも関わらず、社会的抑圧が確認されている。それはどんなものか

  • 2024年1月 人間の本質は自由であるのに、社会的抑圧が起きてしまうのはなぜか

  • 2月 「何の平等」が平等フィットに大事なのか

  • 3月 就活への提言1(就活共通テストについて)

  • 4月 就活への提言2(就活共通テストの拡張可能性)

  • 5月 Futuristの視点でダークホースを読み直す

2024年1月まではスケジュール通りですが、2月からスケジュールが変わっています。

2024年3月の問いである「現状の社会と人間の本質が充実される社会のギャップは何か」は2024年の1月で十分に探求できました。
そこで、2024年2月のnoteで平等フィットの全体像を示します。

ここまでで平等フィットの理論的な面の整理が終了するので、具体的な状況への適用を試みます。まずVARIETASから「就活共通テスト」というプロダクトがリリースされますので、3月は平等フィットと「就活共通テスト」の関係性について、4月はその拡張可能性について論じます。

5月のnoteは平等フィットという言葉の原典であるトッド・ローズ著「ダークホース」をFuturistの視点で読み直す、ということを行います。
この変更によって平等フィットの具体的な側面への言及が増えますので、ぜひお読みいただけると幸いです。

まとめ

冒頭においてFuturistの議論の進め方を以下のように示しました。

  • VARIETASのFuturistとして、あるべき未来像において大事にしたい価値観を示す

  • あるべき未来像に関して、学際的な議論に展開できる問いを示す

  • 価値観に基づいて、あるべき未来像のブラッシュアップや問題点の指摘に学問を使う

マルクス・ガブリエルの著書を参考にしつつ、大事にしたい価値観を自由としました。 そして、自由と平等フィットの関係について考え、「何の平等」が平等フィットにおいて大事なのか?という問いを掲げ、学際的な議論の準備としました。最後に、学問的知見によって問いに答えるために、このnoteのスケジュールを示しました。

次回は「人間の本質とは何か」ということを考えます。平等フィットが人間にフィットしているかを考えるためには、そもそも人間がどんな存在なのか知る必要があるからです。

最後までお読みいただきありがとうございました!

出典
1)トッド・ローズ、オギー・オーガス. Dark Horse(ダークホース) 「好きなことだけで生きる人」が成功する時代. 三笠書房. 2021. p.284
2)マルクス・ガブリエル. 私は脳ではない 21世紀のための精神の哲学. 講談社. 2019. p.305
3)VARIETAS. ”機会平等・能力主義は理不尽な制度である”. note. 2022.07.06 https://note.com/varietas_iverse/n/n41c59d2176b5
4)再掲3)
5)塩野谷祐一. ”ロールズの社会契約論の構造”. 一橋大学研究年報 人文学研究21. 1981. p.128-218
6)前掲5)
7)神島裕子. 正義とは何か-現代政治哲学の6つの視点. 中央公論新社. 2018. p.106
8)前掲5)
9)濵野倫太郎. ”ロールズ『正義論』における契約論的アプローチへのこだわり”. 堤林研究会政治学研究年報65号.2021.p.367-380.
10)前掲5)

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