傷跡の話

子どもに「おかあちゃん、これなあに?」と言われて思い出した傷跡の話。
ちょっとだけいい話かもしれないけれど、当事者である私にとって9割くらいはどうでもいい話、というか昔語り。
残り1割は親御さんにとって、ちょびっと参考になるかも。注意喚起に。

私は子どもの頃、お転婆で生傷が絶えなかった。
まあ、今でもバイクに乗ったりするたびに怪我が増えているんだけど。

小学生のある日、散歩で坂道を犬と一緒に駆け下りている途中、足がもつれて転んだ。
位置エネルギーとそれよりはるかに大きい運動エネルギーによって、当然のようにズザザーと滑り、あちこちに擦り傷を作った。

数は多くて大きさも大きいけど、普段作っている擦り傷と大差なかった。
まあ、ちょっと痛くて、血も出た(はず)だから、その場で家へ引き返して、母に消毒して貰った。

この時の消毒薬は希釈しなければいけない消毒液だったんだけど、原液のままつけてしまったんだな。

扱いとしては薬品やけどになるんだと思う。
熱が出て、学校を休んだような気がする。
元々小学生時代の記憶なんてあやふやだから、よく覚えていない。

最近は希釈タイプの消毒液を見ないから大丈夫だとは思うけれど、特に親御さん達は消毒液の使い方には気を付けて。
消毒液に限らず、説明書はよく読もう。

役に立つ1割のお話終了。
ここから先はちょっと良い話なのかなと思うけれど、当事者の私はよくわからない。
ついでに結構どうでもよい。

最終的にこの時の怪我は傷跡が残った。
30歳を過ぎて、色が薄くなってわかりにくくなったものもあるけれど、ケロイドになって残っているものもある。
派手なのは左ひじから左手首にかけて何カ所か。
子どもに指さされたのも肘だったと思う。

ところが私は傷跡を全く気にしなかったんだな。
元々下り坂で走ってた私が悪いんだし。
更に他にも山ほど怪我をしているから、なーんにも。

そりゃあ、傷跡があるよりはない方が良いけど、あっても何も困らないんだもん。
それより日焼けで色黒なところとか、ニキビの方が大問題だった。
傷跡が出る半袖、タンクトップ、キャミソールも普通に着ていた。

そんな感じで結婚式もした。
結婚式も何も気にせずベアトップのウェディングドレスも着た。
着た…けれど肘まであるグローブをしていたかもしれない。

お色直しは打掛だったけど、単純に和装の方が好きだったからだ。

何にせよ、傷跡のことなんて全く気にせず人生を謳歌してきた。
というか色々ありすぎて傷跡なんて気にしている暇がなかった。

そして30歳を過ぎた頃だったか、はたと気が付いた。
そしてひょっとしたら、私が全く気にしなかったことで、母は救われていた部分があったのかもしれない。

一応女の子だし。
消毒液を希釈しなかったのは母の不注意だし。

自分に置き換えてみたとき、何より自分のせいで子供にしなくて良い怪我をさせた、ということを悔やむと思う。

私は母ではないので、母が気に病んでいたのかどうか知らないが。

もし気に病んでいたとしても、私は気にしていないので母も気にしないでほしい。
もし気に病んでいなかったとしても、私も気にしていないので別に良いと思う。

私が気にしているのに母が気にしていなかったら怒るだろうけど、そもそも気にしていないから別に気にならない。

これも一種の親孝行なのかなぁ、と思って書いてみた。
書いてみたけれど、私にとって傷の話はどうでもいいことなので、そもそもこの話を公開する必要があるのかなぁ、とは自問自答している。

もしどんな傷跡か気になる人が居たら、会った時に言ってくださいな。
普段全くツッコまれなくて寂しいから、喜んで見せると思います。