レクリエーショナルポーカープレイヤーがツールを用いた学習へ取り組む際に忘れてはいけないこと

はじめに

 初めまして、紅林と申します。現在は、ポーカーチェイスというアプリで主にプレイしているレクリエーショナルポーカープレイヤーです。
 以前から、Solver系の解析ツールやPokersnowie等のAIがポーカーの学習に用いられていたところですが、前者は利用環境を整えるために費用がかかり、後者は、強いAIであるもののGTOに基づいているものではないため完全に信用するには値しないというデメリットがありました。しかし、近年、GTOwizardという両者の欠点を解決するツールが登場し、瞬く間に広がりをみせました。そして、導入コストの低下からポーカーを趣味でプレイしている層にも対しても今後広がっていくだろうと思っています。
 そこで、レクリエーショナルプレイヤーの方で、最近ツールに手を出した、あるいは、手を出そうとしている人を対象に、表題の件について、私が過去にツールを用いた学習を行った際に犯した過ちをもとに伝えたいことがあったため今回筆を執りました。本記事は、戦略的な記事ではなく、中級者以上の方には当たり前のように思える内容であると思われるため、心当たりのある方はブラウザバック推奨です。


表題に対する私の回答

「あなたは誰とポーカーをしているか」忘れていませんか。

 これが、私が最も伝えたいことです。極めて単純ですね。「そんなの分かってるわ、くだんな」という声が今にも聞こえてきそうです。以下、なぜ上記の問題提起に至ったか、私のポーカーのキャリアを振り返りつつ説明します。興味ない方が多いと思いますが、反面教師として聞いてください。

ポーカーの学習に際し、陥った誤謬

 私のキャリアのスタートは、PokerstarsのプレイマネーのSNGで、当初は、ポケットペアやAがあれば全て参加というような典型的なフィッシュでした。相手のプレイも滅茶苦茶で、チャットでお互いのフィッシュプレイを罵りあったりしていましたが、下手なりに自分の頭で考えてポーカーをしていた時期だったと思います。
 やがて、プレイの勉強をしたくなり、ブログや翻訳本、Twitterの発信等から知識を得るようになりました。古典的な翻訳本はタイトアグレッシブにプレイしろというようなことが書かれており、実際、自分がプレイしていたプレイマネーのプレイヤーは、プリフロップでは、ハイパールースでいて、ポストフロップはFit or Foldに偏っている傾向が強かったので環境によく刺さっていました。今思えば、この成功体験から、教材に書かれている内容を忠実になぞろうとしている癖がついていたかもしれません。
 また、当時はPokerSnowieがある程度界隈で知られ始めた時期であり、自分の周りにポーカーに詳しい(うまい)人は居なかったことから、師としてPokerSnowieを仰ぐに至るまでそこまで時間はかかりませんでした。
 私生活では、このあたりで社会人になり、ポーカーに割ける費用も捻出できるようになったので、最も近場の韓国のライブキャッシュで勝つことを直近の目標に掲げました。
 そのために、オンラインでプレイしたハンドをPokerSnowieの解析にかけたり、トレーニング機能を用いた学習に打ち込みました。解析結果が解とずれていたり、トレーニングのレビューが良くないときは、精神的に参りましたが、それでもPokerSnowieのラインに近い動きが取れるよう反復していたことを覚えています。そして迎えた最初の海外遠征結果はどうだったのでしょうか。

パラダイスシティ(仁川)のライブキャッシュ

 2回遠征に行って、1ー3を10日間ほどプレイ。稼働時間は70時間ぐらいだったと思いますが、結果から言うと1200BBぐらい負けました。タコ負けですね。迫りくるリンプ、鳴りやまないコールの発声、PokerSnowieにはない状況なので練習どおりでは対処しようもなく、仕方なくよくわからないまま、リニアなレンジで固くプレイしていました。結果どうしようもなくずるずると負けが嵩んでいきました。

なかでも以下の出来事は鮮明に覚えています。

BUでAQsで約3BBにオープンレイズ、BBの中国系のプレイヤーAがコール。フロップがKQ3レインボー。相手のチェックに対して、こちらは、Qヒットトップキッカーバックドアフラッシュドローもありスケアカードがほとんどないので、チェックバックしました。相手のプレイヤーはベットが多いので、ブラフキャッチに回った方が利益がでるかなと思っていました。
 ターンは7、バックドアフラッシュドローの目は消えましたが、ラグに近いカードです。すると相手がポットサイズに近いベットをしてきました。上述した理由で私はコールを選択しました。
 リバーは8でほとんどラグといってもよいカードでした。すると相手は、すかさずポットサイズのベットをしてきました。当初のプラン通り最初はコールするつもりでいましたが、少し考えていると、急に相手のプレイヤーが喋りだし始めました。””I think u have AQ, so u won't call. ””
 私は心底動揺しました。私は彼を「相手がチェックしたらベットしたい衝動を抑えきれないフィッシュ」だと思っていました。そしてそのフィッシュだと思っていた相手にハンドを一点読みで当てられたのです。自分の方が相手より下なんじゃないかと疑心暗鬼になりました。(今思えばマナー違反だし、この状況で一点読みなんてやってるプレイヤーがうまい訳ないんですが。)そして、私はAQをフォールドしました。相手は得意げな顔をしていました。とても屈辱的な気分でした。
 その何日か後に私が同様のゲームに参加していたところ、上記のBBのプレイヤーAがふらっと現れ、私の姿を見ると、その卓に座っていた知り合いと思われる中国系のプレイヤーBに対して、中国語で何かアドバイスをしていました。私は、中国語はわかりませんでしたが、「イーピン」と言っているのが聞こえました。これだけでも私は、何を言っているかある程度推測できましたが、その中国系プレイヤーBとHUになり、AハイボードでこちらがCBを撃って相手がコンマ数秒でハンドを捨てたことで確信に変わりました。おそらく、上述のプレイヤーAは私がタイトにプレイをしているのを見てAがレンジにほとんど(必ず)含まれていると推測したのでしょう。それで「あいつを相手にしたときAが出たら降りろ」的なことを言っていたのだと思います。それに気づいた後は、スーコネとかも積極的に混ぜて、Aハイボードでは100%CB撃ちました。その後、中国系のプレイヤーAも同卓し、そのプレイヤーが参加しているポットで76sをショーしました。相手は、ハトが豆鉄砲を食らったような表情をしていましたね。そこで溜飲が下がりました。まあ総合収支はタコ負けなんですが。

誤謬の終着点 

 帰国後、負けた原因はなにか考えましたが、たどり着いた答えは、”ソフトの通りプレイの再現ができていない”でした。そして「Solver系はお金がかかるし、実際にソフトの再現のためにトレーニングにかける時間も社会人じゃ十分捻出できない。結局、金と時間があるやつじゃないとポーカーはうまくなれないんだな。」とかとんでもない結論に至り、ちょうどコロナ渦で海外に行けない状態になったことも相まって、モチベーションは皆無に。その後3年はほとんどポーカーに触れることはありませんでした。

誤謬からの脱却

 ポーカーを離れて3年。特に能動的に情報を集めなくても、日本でポーカーブームが来ているというような情報がよく耳に入ってくるようになりました。実際に私が遊んでいたころは日本製のポーカーアプリなんてほとんどなかったですが、エムホールデムだったり、ポーカーチェイスだったりライト層向けのアプリが手軽に遊べるようになっていました。そこで興味本位で昨年末ごろにポーカーチェイスをプレイし始めました。
 まず、プレイし始めて驚きましたね。周りのプレイヤーのアクションの自由さに。日本語の攻略情報を載せたサイトやツールの登場で簡単に腕を磨くことができる環境ができているにも関わらず、それとはまったく乖離した動きをしていました。そこで、気づきましたね。「いくら攻略法がでようが、良いツールが登場しようが、全く触らないし、触る気がない層は確実に存在し続ける」と。きっと上に登場した中国系プレイヤーAは、今日も元気にリンプし、相手がチェックしたら反射的にベットし続けていることでしょう。
そして相手に対して謎の先入観を持ってその法則に従ってプレイをしているでしょう。
 しかし、どんなプレイヤーでも何かしら考えているのです。(合っているか間違っているかは置いておいて)大事なのは、ツールに従って忠実にプレイすることではなく、相手に合わせて最も利益的だと思われるプレイをすることです。相手が2を出すなら自分は3を、相手が4を出すなら自分は5を出す努力を現場ですべきです。目指すのは、常に相手の思考の1歩上です。上過ぎても効果は保証されません。
 私は、上記のプレイヤーAの件で実践していたはずですが、ツールへの盲目的な信頼感と、実践でのあまりの負け額の前にそれを見失っていました。

表題の再提起

「あなたは誰とポーカーをしているか」忘れていませんか。

 あなたは、本当の意味で相手を見てポーカーをしているでしょうか。ツールの答えやこういう場面ではこうしろというようなアドバイスに拘って、自分本位でプレイをしていませんか。ポーカーは相手に合わせるゲームです。相手に合わせてもらうゲームではありません。ゆめゆめ忘れないようにしていきたいですね。

ツールへの向き合い方

 PokerSnowieをはじめとしたツールのネガキャンみたいになってますが、そんなことはなくて、正しく付き合えば、自分の成長に確実に寄与します。ツールを用いた学習に際して以下の2つの取り組みが重要だと考えています。

①ツールが出した最適解を自分で現場に合わせて修正して考える力を養う
②ツールが出した最適解から、共通する定性的なコンセプトを見つける

①ツールが導きだした最適解は、プリフロップのレンジの仮定に基づき計算されています。ですが、実践ではその仮定がズレることは往々にしてあります。そのズレを適切に見積、最適解を自分でもう一度考え直す力が非常に肝要です。私もまだ取り組み始めた段階なので、あまり具体的な話はできません。

②集合分析の結果から、戦略の共通項を見つけだし、定性化して、戦略に組み込もうという取り組みですね。これに関しても、発信している著名な方がたくさんいるので、私から提供できる新しい情報はありません。ただ、何も考えずに戦略を使うのではなく、必ずコンセプトや理由を理解したうえで使うようにしてください。応用を利かせることができず、相手によっては、有効なものではなくなってしまう可能性があります。

おわりに

 正直、ポーカーをやっている知り合いがいないので、他の方がポーカーの学習に関してどう取り組んでいるかわからないですが、とりあえず、自分が陥った状況を言語化できたので一通り書いてみました。そういう意味では、ポーカーの話をする相手を見つけることも重要だと思います。自分がどうずれているか、あるいは、周りがどうずれているか理解することで自分の立ち位置を再確認することができます。なんらかの参考になれば幸いです。
また、アプリ等で同卓する機会がありましたらその時はよろしくお願いいたします。


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