情報を定量化して考えるということ
はじめに
お世話になっております。ポーカーチェイスのレートがさすがに底を打ったと思いきやさらに底に沈んだ紅林です。今回は、かつて所属していたコミュニティで勉強会のネタとして提供したものを通して、表題の件について触れたいと思います。次項で記すエピソードについて自分ならどうするか考えながら読んでみてください。
議題のエピソード
ありそうな反応一覧
・記憶に残らないぐらい参加してないほどのロック相手ならKKでAIにスナップコールできない
・エフェクティブスタック70BBいかないぐらいなのにKKをプリフロップで降りられない
・降りなきゃいけなそうだけど、KKはさすがにコールしてしまいそう
・KKをプリフロップでフォールド?そんなレンジ表あるなら見てみたいけどね
・こんなのわざわざ問題にしてるぐらいなんだからフォールドでしょ
・AAvsKKなんてぶつかるに決まってるでしょ。話すことなんてないよ
・よくわかんないけど強そうだからフォールド
………気持ちは分かりますが、以上のような反応にとどまっている限り、自分の判断が良かったのか振り返ることは困難でしょう。そこで表題の「情報を定量化すること」が重要になってきます。次項で具体的な手順を見ていきます。
必要勝率を算出する
まず、必要勝率を計算していきましょう。
6人のリンプに対して、BU(Hero)が10BBのレイズそれに対して、BBが65BBのAIを返し、リンパ―が全員フォールド。コールに必要なのは55BBとなります。
よって 55/0.5+6+10+65+55=0.4029…となり、BUがコールに必要な勝率はおよそ40%と計算できます。
相手のハンドレンジを仮定する
では、KKが40%のエクイティを下回るのは、BBのハンドレンジがどうなっている場合でしょうか。
AAのみ(22.62%)
AA、KKのみ(22.62%)
AA、KK、AKsのみ(32.24%)
以上の3つになります。BBのプレイヤーのAIレンジが以上の3つのどれかになればKKはフォールドしても良いことになります。うーん、これだけではよく分かりませんね。
そもそもこんなシチュエーションのプリフロップソリューションなんて転がってないしハンドレンジなんて見積もれないよ…結局勘じゃない?
ちょっと、待ってください。まだやれることがあるはずです。問題文をよく読んでみましょう。
情報を定量化する
まず、BBのおじさんは、7時間前に100BBでバイインしています。そのおじさんは現在、65BBになっており、約35BBを失っています。
そして、テーブルは1時間当たり30ハンド程度消化しており、7時間が経過している。つまり、30×7=210ハンド程度このおじさんはプレイをしています。にもかかわらず、BU(Hero)は、このおじさんがプレイしている様子について全く記憶にありませんでした。
いったいどれくらい参加していないのでしょうか。9人で回っているので、1周あたり9ハンド、そして1回も参加しなければ、BBとSB分(1.5BB)失います。
210ハンド消化しているのですべて降りていると仮定すると失うBBは、
210/9*1.5=35
なんと冒頭の35BBマイナス分と合致しました。どうやら印象通り1回も参加していない可能性が高そうです。相当参加していなそうだということは分かりました。じゃあ、ようやく腰を上げたBBのおじさんは何で参加したのでしょうか。210ハンド程度でようやく参加するハンドは、いったいなんだ?
あとほんの一息のところまで来ました。
ところで、ポケットペアが配られる確率はご存じでしょうか。1.81%つまり、17回に1回配られるということになります。それをAAに限定したらどうなるでしょうか。
17×13=221
221回に1回配られることになります。確率にすると0.4%程度です。
これで条件は揃いました。あくまで仮定ですが、あなたは感覚の世界から脱し、明確に数学的な理由をもって判断を下すことができます。
結論
BBのオールインレンジは、AAのみの可能性が高い。よって、22.62%のエクイティしかないKKはフォールドで問題ないだろう。
おわりに
「いやいや問題文みたいにそんな都合の良い情報が与えられているシチュエーションなんてないって」と皆さんに総突っ込みされるかもしれません。
たしかにそれはそうだと思います。しかし、実際にハンドレビューをするにあたって、オッズ計算であったり、レンジの仮定をすっ飛ばしてアクションだけを切り取って良いか悪いかに終始している人が意外に多いです。
「いやいやここは相手にブラフがないからフォールドだよ。」とか「このアクションは強すぎるからこの程度のハンドじゃコールできない」とかその一言で片づけてしまう人がそれなりにいたりします。
自明のことですが、上級者の勘と初心者の勘の精度はあまりにも差があります。我々は後者です。勘や経験のみに基づくことなく、常に客観的な数字に基づきフィードバックを繰り返し精度を高めていく作業をしつづけなければなりません。
時にその作業は地道で苦しいものにもなりえます。ですが楽をして何かがうまくなるなんてことはまずありません。それは、運の要素が大きく絡むポーカーでも例外ではないです。やはりプレイをし続けるだけはうまくなりません。客観的に検証し、考えるというプロセスを大事にすることが、あなたの成長に繋がっていくであろうことは疑う余地はないです。
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