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賃金と家族:参議院議員選挙の表の争点と裏の争点
私は‘80年代の音楽が大好きで、当時は「メールもねえ、スマホもねえ、3Dプリンターは何者だ? パソコンはあるけれど、掛けるアプリだ見たこたね。」という時代、必然にしておニャン子クラブの『じゃあね💌』なんかも針を板に乗せてその振動から電気信号を拾って聴く漆黒のレコードディスクで聴いていました。
光学ディスク(compactdisc digital audio, CD)は丁度その『じゃあね💌』の頃からちょぼちょぼと普及し始めてその数年後にはレコードディスクを一気!に淘汰、その光学ディスクは今も一応の需給を保ってはいるものの少なくとも音楽に関してはインターネットを介してのAVファイルを用いるものになっています。
冒頭の写真の『じゃあね💌』もまた、今年の春にiTunes Storeで255円で買ったもの。B面のおまけが付かないとはいえ一枚のレコードを255円で買えちゃう時代。しかもそのためのインフラの投資にしても、iPadはレコードプレーヤーより安い。
何と良い時代なのでしょう!……、?…、?…:異論反論objectionがありそうです。
因みに『じゃあね💌』も好きですがもっと好きなのはこんなの:
どうもあまり良い時代ではないというのが今2022年の夏景色なようです。夏景色というか、春景色も冬景色もそうでしたね。
石川さゆりの『津軽海峡冬景色』が出たのは1977年(昭和52年)、私が2歳の年です。
当時は経済的には今と似ており、賃金が低い中物価が高くなるスタグフレーションの只中。
アメリカはフォード政権がカーター政権に代わり、日本は福田政権が大平政権に代わり、少なくとも表面的には世界がリベラル(自由)に向かおうとしていました。
私の歴史観ではその時代は‘80年代の爆発的経済成長の前の不思議な静けさと安定の時代で、社会や風俗が成熟し始めていた時代だったと見ます。
もし歴史が繰り返すなら今の悪い時代もあと数年経てば東京爆発娘的経済成長になるでしょうが、そうはならないだろうと見られる一つの要素が人口の減少、延いては家族の問題です。
私の記憶が確かなら、日本の人口は2008年頃から減少に転じています。
私は人口が減っても一人当たりの国民/国内総生産が増せば経済は成長と見做せるので、人口の減少が国を貧しくするとは限らないと思います。
この参議院議員選挙では、与野党がいずれも賃金の増える経済ということを公約にしています。
それらのいずれにも嘘はないと見做すなら(多分嘘をつくつもりはいずれもないでしょう。)、与党の自由民主党と公明党、野党の立憲民主党、国民民主党、日本共産党や社会民主党などのいずれもが同じ事柄を公約とすることはかつてあまりなく、それは今までの日本にはあまりなかった全国民の合意(consensus)が生まれる兆しなのかと見えなくもありません。
日本は古来より全国民の合意というもののあまりない国です。常に内乱の因子を抱え、その生来的分断を藤原摂関体制とか徳川幕府とかが巧いこと平定して薄氷の安定を保つことに腐心されていた国柄。
社会の構造や民衆の気風などに西欧と類似する点が多々見られるとはいえ、それが西欧との違いで、殊に近現代の日本の政権が安定せず短期政権の多い理由です。
比較的長期政権の中曽根政権、小泉政権や新安倍政権はそのような全国民の合意のなさによる政権の不安定を改めて安定政権を作ろうとする試みでした。
しかし、それらは既に過去のものとなり、いずれも後世の批判を受けて相対化されており(それはこの国が自由であるということでもありますが、)、日本は再び合意のない不安定な既定の状態に戻るのか或いは合意が形成されて安定してゆくのかの分水嶺にあります。それが今の岸田政権でも実現が可能だとする方々は与党を支持し、それでは不可能或いは可能でも宜しからぬ合意と安定にしかならないだろうとする方々が野党を支持していると大雑把に分けて見れます。
その合意と安定を実現すべくして用意されているアイテムの一つは憲法の改正です。
憲法の改正を支持する方々はそれがこの国の合意と安定を生むと考えています。
憲法の改正を支持しない方々は憲法などという悠長な事柄に手を付けるのではなく国民の賃金水準を上げて生活を豊かにすべし、憲法の改正も必ずしも否定はしないがその後の話だろうとします。
大雑把にいうと、憲法と賃金(所得)、その優先順位の違いが与野党の違いだといえそうです。
では、与党を支持する方々はなぜ、Why Japanese people?、賃金は憲法より後のことだ、賃金も重要とはいえ憲法がもっと重要だと思い或いは初めから思ってはいなくてもそのような政策の立て方を納得するのでしょうか?
それは与党の支持層、殊に自民党の支持層は賃金が低くても少なくとも取り敢えずの生活の安定を保てる構造を持っているからです。
自分の賃金が高いので自分の生活は大丈夫、他人の生活はどうでもいいというのではありません(それに近い自民党の支持層も一部にはおり、後述しますが、多くはそうではありません。)。
自民党はThe Liberal Democratic Partyで、リベラルの党です。
リベラルなので夫妻の共働きは普通に当然だとしています。
それが意外と、立憲民主党などのよりリベラルとされる党の支持層はそうでもありません。自民党は保守で立憲民主党などはリベラル、そのリベラル達は夫妻共働きを当然とはせずに夫が一家をよほどに養えない場合のどちらかというと例外的なものとしています。
これは2018年7月13日の日本経済新聞の記事。
共働き世帯の率の上位はずらりと、自民党の強い地方が並びます。
日本で一番ススンでいる東京都は都民の半数に満たず33位、立憲民主党の蓮舫さんが強い地盤看板フェアレディZを持つ地方です。
旧経世会の遺産を今も根強く立憲民主党が受け継ぐ新潟県や山梨県は例外的に上位ですが他に立憲民主党の強い宮城県、京都府、埼玉県、神奈川県、千葉県や北海道は悉く下位。特に有史以来に飛び抜けて進んでいるとされる北海道が44位とはかなり意外ではないでしょうか。
さて、偶々このscreenshotに映らなかった45〜47位は?
:お察し下さい。
一概にリベラルといえども色々あり、そもそも今の時代はリベラル(自由)たることが殆ど当たり前の社会風土です。
なので共働きの多さに関し自民党がリベラルなら他の面に関しても何でもリベラルな訳ではないですしそれは他の党派においても同じです。立憲民主党は人権に関してはリベラルでも基本的生活のあり方に関してはかなり旧態といえるかと思われます。
しかし国民の生活に関するかなり根幹をなす重要な事柄に関し自民党は他に「引けを取らず」ではなく「長じて」リベラルなのです。
これは共働きが良くて専業主婦が良くないという論ではありません。
私は若い頃から近年までは共働きが当たり前で専業主婦はあまり考えられないと思っていました。それは実はいわば自民党的価値観だったのです、意外にも。
しかし、今は専業主婦も全然良いのではないかと変わってきているので、いわば価値観が下野しているのでしょうか😅?、まあ実情に依るものですが。
現に専業主婦は一概にリベラルな土地柄とされる大都市圏に多い。
それ、政治学に明るいとその理由をすぱっと明快に分かり、多分国際政治学者の三浦瑠麗先生も知る事柄です。
一摘みに言うと、夫妻共働きは農林水産業(第一次産業)を背景とし、また、その最も積極的あり方は女子の徴兵による純国民皆兵です。
自民党は女子の徴兵まではいいませんが基本的にはその社会構造を政策の根本としています。それが世界に見ても一つの大きな「リベラル」なのです。
平成の日本は商工業(第二次・第三次産業)が漸次に衰退していることにより相対的に農林水産業の比重が増しています。食糧自給率が低いのにそんなことはないと思うかもしれませんが(産業経済の全体の牌が縮小してゆく中、)相対的にはそうなのです。すると国民の発想も何となく農林水産業寄りになって来ます。
イトーヨーカドーなどが農家の署名や似顔絵入の野菜を売っているなど、農業の存在感の訴求がかつてなく強まっています。そんなことをして何の意味があるのかと思ってしまいますが、商工業の栄えていた前世紀にはそのような売り方は考えられないものでした。
現に栄えているとまではいえなくても、商工業が殆どを占める大都市圏は基本的には一律の労働時間に拘束されるため共働きができにくい社会構造です。故に夫が商工業に従事して働き、妻は家を守るという専業主婦制が確立することになります。
尤も今の時代は時間帯や勤務日を限定する非常勤労働が商工業にも著しく増えており、都市域にもまた共働きが増えていますが率を見ると尚も少数なのです。
その非常勤労働の増加は都市域にも農林水産業的、社会学的に言うと農耕社会的行動原理や価値観の普及につながります。
何にせよ共働きが当たり前のものとして普及するには非常勤労働の普及が必須であることは分かるでしょう。
問題はその非常勤労働が共働きの世帯にだけではなく夫のみの所得による専業主婦の世帯や独身世帯にも普及していることです。
因みに非常勤労働は俗に非正規労働と呼ばれていますが、非正規とでは何やら不正就労や裏社会といっているようで、それを問題視することが逆に偏見、差別や待遇の悪化を助長して問題を深めることになるので非正規労働という語は現状の如何を問わず直ちになくすべきです。
共働きの都会の人は類友の法則により多くは自分と同じような共働きの人としか出会わないのでそれが都会の当たり前と思ってしまうようですが実は都会ほど共働きは少数なのです。そして都会の人がこれが都会だと思っているものが田舎にはもっとごろごろと転がっていることはかつての東急電車が津々浦々の田舎にごろごろと走っていることのように見受けられます。
因みに阪急電車は今までに一度も、多分部品の一つたりとも他社に譲渡されたことがありません。完全なる自給自足。救国の預言者赤尾敏先生も当初は自給自足を理想としておられました。
賃金が仮に手取で十万円しかなくても、それが夫と妻でなら二十万円になり、更に子供一人で三十万円、二人で四十万円。子供が二人いて就職したら阪急電鉄の終身平社員より多い世帯所得になります。
月給十万円が極端な例な場合もあるし現に正にそうだという場合もあるでしょう。
しかし極端な例にせよ現にそうにせよ、そうしておればそれで生活が安定しちゃうんです、写ルンです。
それが今は多数を占める勢いなので、賃金が上がることも大事だけどその前に憲法を変えることが大事だという自民党が指示され続ける訳です。
自民党を指示しているのは俗にCIAだとかCSISだとかいわれていますが彼等は別に何も指示してはおらず、彼等はどう考えているに違いないと勝手に忖度をしている日本人の方々です。
そこには近年によく見られる「ガーディアンが(例えば安倍政権を)そう批判した。」とかいうのも含まれます。
ガーディアンだかカーディガンだか知りませんが(私はカーディガンが大好きですがイギリスの代表的新聞といえばThe Daily Telegraphだと思います。THE TIMESだとか阿呆なことはいいません。)、日本を批判する記事の殆どはそこの日本人の記者が書いているものです。
忖度の対象が違うだけでやっていることは同じ。
処が、そのような一家心中…、いや失礼しました(事実無根ですね。)、一家総出での低賃金の獲得と日本人らしい生活の安定を維持している自民党の支持層とは異なる型の自民党の支持層もおり、それが安倍政権の中核的支持層です。
数をいうと少数ですが偶々安倍さんにも響く、刺さるものがあった故に、そして岸田総理もそれを重視せざるを得ない故に昨今の我が国の謎の懸案となっています。
先述の夫・妻・子供で月収三十万円ないしは四十万円という生活の型には当て嵌まらない層が30〜40代、いわゆる中年世代です。俗に就職氷河期世代とも呼ばれます。
理由は至って単純で、子供が就職してはいないからです。
子供が就職するのは概ね50代以上で、その子供は20代なので、30〜40代は最大でも妻の共働き、多くは夫のみの所得による専業主婦家庭か独身かです。
自民党の主要の支持層の生活の型には様々な意味で当て嵌まらない層が30〜40代にひしめいており、その内の夫のみの相対的に高い所得で一家の生活を悠々にせよぎりぎりにせよ保っている方々が安倍政権の中核的支持層です。
本来は彼等を政策の対象とはしない自民党が彼等を重点的に取り込みアベノミクスと『日本を、取り戻す。』による安倍政権を形成したのは一つは世代による国の分断を防ぐためです。
かようにかなり異なる方々が同じ日本国民として共存するためには安倍政権のようなかなり訳の分からない口八丁手八丁の政権を要したのです。
また、自民党は中小企業の味方だという旧年来の定評を保つために、多くが中小企業に働く彼等を取り込まざるを得なかったということもあるでしょう。しかし麻生太郎財務大臣は竟に本音を吐露してか中小企業が無能なので経済が上向かないと演説していました。
「同じ日本国民」とは何かということについてはここでは置いておきます。
置いといて…。
実はこの問題には日本の家父長制秩序という、それに賛同する側も反対する側もそれそのものを何も知らない、誤解に基づいて良いとか悪いとか云っている故にほぼほぼ無意味な空中戦にしかなっていない、憲法とも関係する不毛な問題が前提条件として横たわりますが、今日は取り敢えず以上を以て閉講します。
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