見出し画像

小田急のダイヤ改正、合理的だが釈然としないのはなぜ?

 3月14日、円周率の日に小田急電鉄などの関東の幾つかの鉄道業者が運転行程の改正、いわゆるダイヤ改正をしました。

 車輪の外周の長さは車輪の直径×3.14です。

 2年前2018年のダイヤ改正は、小田急は代々木上原~登戸の複々線の完成及び運用の開始や京王は座席指定の通勤特急の設定が生まれるなどの大きな話題があったために結構な大盛り上がりになりましたが今年2020年はその2年前の補正という感じでそう大きな話題のない地味なダイヤ改正になっています。
 この2年で認識された問題を調整しようということでしょう。

 そこで、小田急の多摩線の急行についてはかなり問題が生じていると認識されたようです。

 この十五年程に亘り、小田急多摩線には地下鉄千代田線に乗入れる多摩急行という列車が設定されていましたがそれが二年前の改正で廃止となり、代りに新宿行の急行が新しく設定されました。
 しかし私が実地で乗ってみても明らかなように、新百合ヶ丘駅に着く多摩方面唐木田行の急行は乗車率が極めて低く、収率の良くない列車でした。
 それは当該列車の行先の標示を「急行 多摩センター方面 唐木田」とすれば宣伝効果で乗車率が増すと思うのですが、何のためにLED表示器を使っているのか分からないような「急行 唐木田」という表示ではどこに連れてゆかれるのか分からないJRのミステリートレインのよう。
 阪急電鉄には需要に応えるだけではなく需要を創出するという思想があり、需要のない所に需要を作り出すことが今時はどうかはともかく企業の理念としてありますが、どうも小田急は需要を創出するという発想は全くないよう。小田急は元々は鉄道をしたいのではなく水力発電をしたい企業だったいわゆるでもしか企業なのでそんなやる気はないのでしょう。

 乗車率が低い、だから廃止する。――一見は合理的そうですが、企業の生命線である数値を基にして見ると乗車率の低さは廃止の理由にはなりません。
 列車を1km走らせることに掛かる電気料金は乗客が1人おれば回収することができます。
 小田急多摩線の新百合ヶ丘~多摩センター・唐木田の距離は約10kmですが、片道で線内の乗客が10人おれば少なくとも電気料金との比では利益が出ます。大抵は6両の列車に少なくとも50人は乗っています。

 しかしそれでも小田急多摩線は赤字路線です。電気料金の他に何かが掛かるからです。
 その費用を削減せよとは云いません。赤字路線はどの鉄道業者にもあり、本線が高収益ならば支線は赤字でも必要なものです。

 小田急は今度のダイヤ改正で多摩線の急行を事実上は廃止するなどして多摩線の運行数を減らしています。
 その理由として公表されているのは乗務員の不足です。
 電気料金の他の何かとは人件費だということになります。

 人件費の削減を必ずしも悪いとはいいませんが、人が育たないことを露呈しているということでもあります。でもしか体質の小田急は尚更、鉄道業が特に男子にとって魅力のない、生涯を懸けるに値しない業務だと思われているということです――但し女子は車掌を主として増えています。しかしそれでも運転士は女子にはさせられないという女性の差別がある訳です。女子の車掌が増えているからといって平等になっているとはいえません。――。

 そうなるのは赤字部門も黒字の主力部門と合せて企業にとって必要なものであるという社会責任の認識がないからでしょう。とにかく手取り早く儲かって威張れる業務をしかしたくないという:儲かることより威張れることが第一

 とはいえ、そんな小田急多摩線は一時は阪急のような需要の創出をしていました。先述の多摩急行が設定されていた時代で、その間に沿線の人口と活気が着実に増していました。凡そ2003年~2018年。
 私も多摩中央や終点の唐木田が好きで良く来ます。
 それが相当に実現されている今は、当分は乗客が減ることはないということで運行数を減らすことにより乗車率を高めて損益を少しでも上向かせようということなのでしょうが、それで一気に黒字になる訳ではないのでほぼほぼ無駄な改善です。ここでするべきなのはむしろ多摩線の損益を上向かせることではなく主力の小田原線の収益を更に増すことです。

 人間には一度苦難が習慣として身に着くとそれを解放されて理に適うようになることを恐れ或いは嫌う習性があります。人間とその世の中を理に適うようにするにはまずその習性が改まるようにすることが必要です。
 小田原線の代々木上原~登戸の複々線が完成して小田急電車の乗車率が低減され、即ち満員電車の苦難が著しく緩和されると、逆にそれ以前から小田急電車に乗っていた客は昔のいわゆる通勤地獄を懐かしみ当時に戻りたくなるのです。日本軍の横井さんと同じことです。

 故に、小田原線の乗車率は200%が160%になったなら、それを180%に増すほどのことを考えるべきです。
 快適便利になることは必要ですが、それに馴染まずに昔を懐かしむ人に快適便利になったのだから良いではないかと云ってみても分からないのです。満員ではない電車への乗り方を知らない人が多いところで満員電車をなくすべきだと云ってもどうにもなりません。

画像1

 小田原線の乗車率を更に上げるには、まずは運行系統を基本としては本厚木で分断し、急行のほとんどを本厚木~新宿とし、小田原~新宿を直通するのはほぼ快速急行(と特別車)のみとすることが最も有利です。その際に快速急行は愛甲石田、鶴巻温泉、東海大学前と渋沢の停車を廃止して本厚木~小田原の停車駅を伊勢原、秦野、新松田と開成とする。
 また、各駅停車という名称ではいかにも遅そうな感じがするので普通に改め、本厚木~小田原の普通を増発する。
 本厚木~新宿では既成の需要に応えることの強化。
 小田原~新宿では新しい需要の創出。
 例えば伊豆へ行く際にJRの特急サフィール踊り子に乗るために小田原までは小田急の一般車、主に快速急行で行ける余地を増す。小田急ロマンスカーとJR踊り子のダブルヘッダーでは費用が嵩みますし、豪華列車を乗継ぐというのは品位という面から見てもあまり良くないからです。

 更には、唐木田~小田原・片瀬江ノ島の急行を設定するなどして東京方面とは逆の流れを作るなど。

 また、今度のダイヤ改正で経堂に停まる急行が増えたというのも意味が分かりません。経堂などのような東京10km圏内の衰退している町に急行を停めて何になるでしょうか?その距離が複々線で早くなっているなら普通のみで充分な筈です。

 多摩線の急行が事実上の廃止というのの「事実上」とは、土休日の昼間には新百合ヶ丘での種別の変更――唐木田~新百合ヶ丘 各駅停車;新百合ヶ丘~新宿 急行――による新宿行の急行が数本あるということです。
 土休日ということからして主婦の買物を主とする遊興の需要に応えようということでしょうが、鉄道を含め、主婦を重視する商売のし方はもはや時代遅れです。種別の変更は客には分かりにくく、そのための訴求力にも欠けます。

画像2

 「剥いても剥いてもらっきょ」のように、小田急は今度のダイヤ改正でもまた商売の根本的下手さ、やる気のなさと社会責任の認識の欠如、それら三拍子が揃って「だささ」を露呈している感があります。

#小田急電鉄 #小田急 #鉄道

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?